大谷翔平の活躍に門田博光は「ワシの頭では理解できん。スーパーマンや」

ホームランに憑かれた男〜孤高の奇才・門田博光伝
第9回

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 9月も後半に入ったある日の午後。外を歩いていると、電話がかかってきた。スマートフォンの表示には「門田博光」。定期的に話を聞くようになって10年以上経つが、いまだに思いがけないタイミングでの連絡には一瞬にして緊張が走る。

 いい知らせか、悪い知らせか、難しい話か......頭をめぐらせながら電話に出ると、少し疲れた感じの声が聞こえてきた。

「45本目、出たな。この間、あんたにあんなこと言うたから、謝っとかなあかんと思うてな。これはその電話や」

 悪い知らせでも、難しい話でもなく、ひとまずホッとしながら、この電話でエンゼルスの大谷翔平が久しぶりのホームランを打ったことを知った。同時に、思いがけない電話の意味も理解した。


現役時代、歴代3位の567本塁打を放った門田博光(写真中央)

 この1週間前に門田と話す機会があった。その時はこちらから電話をかけ、用件が終わったところで大谷の話になった。

 本塁打王争いでブラディミール・ゲレーロJr.に単独トップの座を奪われた翌日だった。シーズン終盤にタイトルを争う心境や、ペースダウンの状況をどう見ているのか。興味があり聞いてみると、「最近の彼は周りを見始めてしまっているんやないか」と、門田らしい目に見えない部分の変化を挙げてきた。

「それまではひたすら自分のペースで、ピッチャーをやって、ホームランも打って、盗塁もして......ファンやマスコミがそんな姿を『グレイト! グレイト!』と絶賛して、すべてが大谷のペースで進んでいた。その頃は、ゲレーロJr.やほかのバッターのことなんか頭に浮かぶこともなかったはずや。

 それが今はゲレーロに抜かれて、(サルバドール・)ペレスも追ってきて、残り20試合を切って、周りも騒がしくなってきた。ずっと自分を見て戦ってきた男が、ふと周りを見るようになってしまっているんやないか。周りに目が向くようになると、そこからペースが崩れてスイングだけに集中できなくなる。ここが一番の敵になってくるんや」

 門田にも同様の経験がある。周りの動きにペースを乱されたシーズンとして、もっとも記憶に残っているのが1988年だ。

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