レジェンドの弟が打撃の免許を皆伝。普通の捕手が3年でドラフト候補へ

 薄暮のグラウンド。バックネットに向かって牧原巧汰が硬球を打つたびに、「グワーン!」と重厚感のある打球音が響いた。

「牧原が入学した時、同級生のなかであいつがドラフト候補になると思った子はいないと思います」

 木製バットで猛烈な打球を打ち続ける牧原のティーバッティングを眺めながら、日大藤沢の山本秀明監督はそう打ち明けた。


高校通算29本塁打を誇る強肩強打の捕手、日大藤沢・牧原巧汰

 山本監督は球界のレジェンド・山本昌さん(元中日)の実弟であり、自身は捕手として三菱自動車川崎で活躍した。捕手指導に定評があり、これまで数々の好捕手を育成してきた。

 かつて指導した黒羽根利規(日本ハム)、川邉健司(ヤマハ)、島仲貴寛(元三菱自動車岡崎)、下地滉太(JFE東日本)といった好捕手の入学時と比較しても、「牧原は一番下だった」と山本監督は言う。

 体に力はあったものの、打球は上がらず、捕手としても未熟だった。相模原市に住む牧原だが、座間ボーイズに所属した中学時代は東海大相模のような甲子園常連校から声がかかる存在ではなかった。

 そんな選手が3年後、強肩強打の捕手としてドラフト候補に挙がるのだから人生はわからない。

 牧原が伸びた要因を山本監督はこう見ている。

「大人が指摘したことを自分なりに理解する能力、練習する体力とやり切る根気があります。最初はできないこともたくさんありましたけど、それをことごとく克服してきましたから」

 身長176センチ、体重82キロ。厚みのある下半身は、これまで積んできた鍛錬のたまものだろう。澄んだ瞳を真っすぐこちらに向けて、牧原は「高校で本当のバッティングを知りました」と語った。

 高校1年の冬、牧原は山本監督から「キャッチ」という練習法を勧められた。ティー台にボールを置き、約30メートル離れた位置に集球ネットを設置する。打者はボールに当たるインパクトの瞬間にバットを止め、集球ネットにフライで届くような打球を打つ。三菱自動車川崎時代に山本監督が取り組んだドリルだった。

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