“小よく大を制す!”最軽量関取の石浦 「食べることが苦手なんです」

“小よく大を制す!”最軽量関取の石浦 「食べることが苦手なんです」

アクロバット相撲で注目の小兵力士、宮城野部屋・石浦(左)と木瀬部屋・宇良(右)

小よく大を制す! だから相撲は奥が深くて面白い!! 先日の秋場所では、ふたりの十両力士が熱い声援を受けた。

ともに身長173cmと小柄な体ながら、素早い動きと巧みな技で大型力士と渡り合い、“アクロバット相撲”とも称される宇良、石浦だ。前編記事の宇良に続き、後編では石浦を直撃した!

■「世界の相撲の奥深さを感じた」

さて、もうひとりの小兵、石浦は鳥取市の出身。父は鳥取城北高校相撲部の監督(現総監督)で、幼い頃から相撲が身近にある環境で育った。

そして、自らも鳥取城北高校に進学して相撲部に入部したのだが、この相撲部こそ角界に数々の大物を輩出している“スーパー相撲部”。大関・琴光喜(引退)を筆頭に、現在は大関・照ノ富士、関脇・逸ノ城、名古屋場所で優勝争いに加わった幕内・貴ノ岩、元幕内・大喜鵬(現幕下・山口)といった面々が巣立っている。

石浦も高校時代はレギュラーとして活躍し、世界ジュニア選手権軽量級で優勝するなど、70kg台の体で奮闘した。

ところが、名門の日大相撲部では3年時に腸の病気を患って体重が激減するなどして、レギュラー入りできなかった。卒業後は角界入りではなく、オーストラリアへの留学という意外な道を歩んだ。

「高校時代、エストニアでの世界ジュニア選手権に出たときに、自分の中の相撲の概念が崩れたんです。世界の相撲の奥深さを感じて、相撲を世界に普及させる仕事、それに関わる活動をしてみたいと思うようになったんです」

オーストラリアでは総合格闘技の道場に通うなど、相撲ひと筋だったこれまでの人生とは違う経験もした。

しかし、オーストラリアにいても、日本の相撲は気になる。インターネットを通じて本場所の取組などを見ているうちに、相撲への思いが再燃してきた。

「一度相撲をやめて、客観的に見たときに、単純に面白いなと。それに、海外に行くのはこの先いつでもできますけど、相撲は今しかできないじゃないですか。高校の同級生(山口)が頑張っているのを見て、俺も相撲を頑張ろうと思ったんです」

相撲協会の規定により、プロ入りできるのは22歳まで。反対する父親を説得するとともに、80kg台だった体を短期間で10kgほど増やし、宮城野部屋への入門を発表したのは23歳になる直前、13年のクリスマスイブのことだった。

入門後は低い体勢から繰り出す下手投げ、上手出し投げ、さらには足取りなどの奇手も織り交ぜ、序ノ口、序二段と連続して全勝優勝するなど19連勝を記録。4場所目には早くも幕下に昇進するなど、順調な出世を見せた。

その石浦にとって、相撲の稽古以上に勉強になったのは、同じ部屋に所属する横綱・白鵬の存在である。幕下に昇進した石浦は、白鵬の付け人として、本場所はもちろんのこと、地方巡業などでも行動を共にし、白鵬の身の回りの世話をした。

「稽古場での入念な準備運動、本場所での集中力など、間近に接していればいるほど、勉強になることばかりです。また、土俵を離れたときの謙虚な姿勢も、例えば、人との接し方、言葉遣い、振る舞いなども教えていただきました」

9場所続いた幕下生活を卒業し、十両に昇進したのは昨年の春場所のこと。

「食べることが苦手なんです。(夏など)稽古が終わった後はかき氷一杯で十分なくらい。お相撲さんらしくないとよく言われます」

それでも、入門から2年間で約20kg増やし、筋トレにも力を注いだ結果が出た。

そして、「入門したときは、ひと場所だけでもいいから十両に上がりたい」と願っていた男が、この秋場所で十両は10場所目を迎えた。

「関取最軽量なんですが、緊張感が続く場所中は、特に体重が減っちゃうんですよ。15時くらいから行なわれる十両の取組が終わったら、勝っても負けても、まずは相撲のことは忘れて、(結びの一番が終わる)18時になってから、次の日のことを考えることにしています。

憧れの力士はたくさんいますが、“業師”(わざし)といわれた鷲羽山(わしゅうやま)関(10代目・出羽海親方)、日大の先輩でもある智乃花関(現・玉垣親方)、舞の海関(現・解説者)のような、見ている方に喜んでもらえるような相撲を取っていきたいですね」

そう石浦が目標を語れば、宇良も負けじと今場所への意欲をむき出しにした。

「よく“小兵力士”と言われますけど、127kgありますから、自分のなかでは小兵ではないと思っています。今の目標は、体重を140kgまで増やすこと。そうすれば、押しの威力が増すと思うので…。そして、(東十両筆頭の)今場所は新入幕まであと一歩のところまで来ていますから、もちろん、そうなれるよう、なんとか勝ち越したいです」

果たして、今場所はどんな相撲を見せてくれるのか。どんな技が飛び出すのか。両力士から目が離せない。

(※このインタビュー取材後、9月場所は宇良が6勝9敗と負け越し来場所での新入幕は叶わなかったが、石浦は9勝6敗と勝ち越した)













●宇良(うら)






本名・宇良和輝(うら・かずき)。1992年生まれ、大阪府寝屋川市出身。木瀬部屋所属。関西学院大の相撲部時代にレスリング経験を生かした奇手の使い手として大きな注目を集める。2015年3月場所の初土俵以来、先場所まで負け越しも連敗もなし。現在は東十両筆頭(自己最高位)。身長173cm、体重127kg













●石浦(いしうら)






本名・石浦将勝(いしうら・まさかつ)。1990年生まれ、鳥取県鳥取市出身。宮城野部屋所属。日大卒業後、総合格闘技の道場通い、オーストラリアへの留学などを経て角界入りし、23歳で初土俵を踏んだ異色の経歴の持ち主。現在は東十両6枚目(最高位は東十両5枚目)。身長173cm、体重111kg

(取材・文/武田葉月 撮影/村上庄吾)

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