短所を補うよりも長所を伸ばす 自分を見失わない男・時松隆光の流儀【記者の目】

短所を補うよりも長所を伸ばす 自分を見失わない男・時松隆光の流儀【記者の目】

時松隆光はこれからも自らのスタイルを追求し続ける(写真は初日)(撮影:岩本芳弘)

時松隆光の「全英オープン」から続いた海外転戦は、ミズーリ州ベルリーブCCで行われた「全米プロゴルフ選手権」で幕を閉じた。間に世界ゴルフ選手権「WGC-ブリヂストン招待」を挟んでの3試合の順位はそれぞれ、109位タイ、39位タイ、115位タイ。メジャー2試合では予選落ちという結果に終わった。


それでも3試合を終えた時松は「全英に出る前まではもっと自分と世界との差があると思っていましたが、もうちょっと頑張れば予選通過も不可能じゃないと思えた」と話した。思った以上にやれる。そう感じたのである。

一番の手応えは持ち味の「しのぐゴルフ」ができたことにある。「全米プロではできなかったが、上手くやれていたと思う。悪くても1〜2オーバーと大崩れしないのはよかった。粘り強くやれたと思う」。先のブリヂストン招待では、最初の2日間を米ツアー屈指の飛ばし屋バッバ・ワトソン(米国)と2サムで回り、途中122ヤード置いて行かれたホールもあったが、スコアでは上回った。まさに“上がってナンボ”。時松ゴルフの真骨頂である。

時松の強さは、技術的な部分以上にここにあると言えるだろう。ワトソンやヘンリック・ステンソン(スウェーデン)といった世界の長距離砲相手でも、はたまた今年優勝した「関西オープン」のようにアマチュアが相手となっても自分を見失うことはない。やるべきことをやるだけ、といったスタンスが崩れないのである。それが世界のどこへ行ってもできると分かったのは大きな収穫だ。

“もうちょっと頑張る”部分として、特に課題に挙げたのはアプローチだった。普段、時松は転がすランニングアプローチを多用するが、洋芝では粘り強い芝に食われてしまう。もっと種類が必要だった。「勇太さんが“アプローチの引き出しは持っておいた方がいい”と言っていた意味が分かりました。一辺倒じゃダメ。アプローチを寄せきれない、パターを決めきれない。ちょっとしたことが4日間になると10何打変わってしまう」。パーを重ねるためにはバリエーションを増やさなければならない。そう感じたという。

一方で、飛距離についてはそこまでフォーカスしなかった。ブリヂストン招待でドライビングディスタンスが一番下だったにもかかわらず、である。「飛距離も大事ですが、そっちばっかり考えるのでもダメ」。それよりもセカンドショットの精度向上を強調した。「僕は飛距離が出る方ではないので、どうしても距離が残りますが、長い距離でもセカンドでピンをさしていければ通用するのかなと思った」。

かつて、その強さから“鬼”と呼ばれ、2度の日本ツアー賞金王に輝いたキム・キョンテ(韓国)は、アメリカツアーに行ってから、飛距離を追い求めすぎるあまりスイングを壊してしまった。あの精密機械と呼ばれたキョンテですら飛ばしを求めたくなる環境のなかで、時松は自分を見失わなかった。あくまで自分のスタイルをより磨いていく構えである。

「世界との差も分かったし、課題も見えた。海外での試合の経験は絶対無駄にしてはいけない。課題を重点的にやって、また戦えるようになって戻ってきたい」。24歳の九州男児は、愚直に“自分らしさ”をブラッシュアップして、もう一度この舞台に戻ってくることを誓った。(文・秋田義和)

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