女子プロの良い参考事例に!勝利を求める行動が「縁」を生む【辻にぃ見聞】

女子プロの良い参考事例に!勝利を求める行動が「縁」を生む【辻にぃ見聞】

30歳を超えて、初の年間複数回勝利となった黄アルム(撮影:米山聡明)

黄アルムの今季2度目の完全優勝で幕を閉じた「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」。予選通過ラインは2アンダー、優勝スコアは17アンダーと例年に比べ、ハイスコアとなった今大会を、女子プロを多く指導するプロコーチの辻村明志氏に振り返ってもらった。


■アルムさんの活躍は、多くの女子プロゴルファーの参考事例になる

2週前の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で9年ぶりの勝利を手にし、喜び冷めやらぬうちに今季2勝目を挙げたアルム。初日「63」というビッグスコアを叩き出し、2日目終了時でトータル14アンダー、2位と6打差。最終日も追ってくる選手たちを尻目に着実にスコアを伸ばし、影を踏ませることなく逃げ切った。

「チョ・ボムスコーチと取り組んだスイング改造で、2週前に優勝を勝ち取りましたが、好調をキープし、自信をつけているのは表情から見てとれます。ピンに絡むショットがバシバシと来る印象でしたね。ただ今大会はグリーンが止まりやすく、ビッグスコアが出る可能性が高かったので、最終日は6打差あっても、追いかけられるケースが想定できた。実際、申ジエさん、松田鈴英さんが迫ってくるなかで、アルムさん自身も伸ばして逃げ切ったのが大きい。それは“人のゴルフを見て、影響を受けることがないくらい調子がいい”という証明。さらに自信につながると思いますよ」

1年半ほど前からイ・ボミのコーチも務めたチョ・ボムス氏のもとを訪れたり、2年ほど前から、インビー・パークらを指導するメンタルトレーニングの専門家に指導を受けたり、と勝利を求め、積極的に行動を起こしていたアルム。周囲のさまざまな人間の意見を聞き入れ“出会いの幅”を広げたことが実を結んでいる。

「どの業界のプロにも言えることだと思いますが、“今後の方向性が見えない時”が一番キツイ。ですが、ひとつの出会いが大きく状況が変えるケースがあります。自分ひとりでは解決できない部分…本当にあと少しというところで、上にいけない選手は山ほどいますが、彼女は“出会いの運”を引き寄せた。信じるものを見つけ、さらに結果がついてきたことで、今後も継続して活躍できると思う。『63』というスコアが証明しています。

30歳を超えて、年間勝利数も獲得賞金もキャリアハイを更新。いままでの自分ではない感覚になれているのではないか。アルムさんの活躍は多くの女子プロゴルファーの参考事例です。私自身はコーチの立場ですが、選手とコーチの関係は“縁”だと思っています。上手くいくときもそうでないときも、“縁”を大切にできる人が、その先の景色を見ることができるのではないでしょうか」

■松田鈴英はシード権当確。早くもルーキーで4人目だが、5人目はあの大型新人か…?

首位に届かなかったものの、最終日に大会を盛り上げたのは、2017年プロテストトップ合格でルーキーイヤーを戦う松田鈴英。「64」を記録し、自己最高の3位フィニッシュで560万を獲得。年間獲得賞金は22,735,800円(22試合出場)となり、初シード当確ランプを灯した。

本格参戦初年度だけに、シーズン序盤は予選落ちの多さに苦しんだが、単独4位の好成績を残した「ニチレイレディス」以降は、7試合連続予選通過と安定した成績。「NEC軽井沢72」終了時のスタッツを見ても、ドライビングディスタンス7位(250.32ヤード)、トータルドライビング16位、パーオン率9位とショット力が際立っている。

「6月のニチレイレディス終了時のこの連載で『5月あたりまではダウンスイングで打ち急いでしまい、上半身が目標方向に突っ込んでいた印象がありましたが、解消されつつあり、インパクトでのボールコンタクトが分厚くなってきた』といいましたが、スタッツを見れば、さらに安定してきたことは明らかです。

いまは、マネジメントの重要性を感じているのではないでしょうか。マネジメントを心がけることにより、はじめは思うようにいかないことも多い。ですが、必ず反省材料が生まれ、明確な課題が見えてきます。プロとしてのコース戦略を学べていること、かねてから取り組んできたフェードが徐々になじんできたこと、が好調の要因だと思いますね。ショットでねじ伏せる形で上位にいける力は証明しましたが、安定して上位に位置するための課題はアプローチとパッティング。アクサレディスからクローグリップに変えているように、本人も課題を抱えているのはわかっているはずです」

4月の「サイバーエージェント レディス」で新垣比菜がツアー初勝利を挙げ、勝みなみと小祝さくらも幾度となく上位に顔を出し、すでにシード権確保は確実な額を稼いでいる。松田がシーズン半ばで約2300万まで到達したことで、ルーキー4名が新たな波を作り出している、新シード獲得の5番手として辻村氏が挙げたのは、原英莉花だ。

「とにかくスイングに穴が少ない。アップテンポで切れのある印象ですが、テークバック、切り返し〜ダウンスイング、インパクト、とリズムが一定で崩れることがありません。シーズン当初はQTランク117位だったことで、ここまで23試合の日程のなか13試合しか出場していないのにも関わらず、獲得賞金約1000万円と、シード選手並みのペース。5番手は間違いなく原さん。後半戦は継続して試合出場もできるので、シード争いがもつれてくる秋口の前の決めてしまいたいところではないでしょうか」

ドライビングディスタンス5位(252.85ヤード)、トータルドライビング13位、パーオン率14位…さらに平均パット(パーオンホール)は7位。ショット、パットともに上手さが光り、平均バーディー数は2位(3.8649)という大器だが、課題はリカバリー率(85位・56.1224)だ。

「いまはバーディも獲れるが、ボギーも多い。攻撃的なスタイルだからこそ、グリーン周りの“ここは拾って当たり前”という状況で手堅く締める技術を身につけて欲しいですね」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹で、ツアー会場での愛称は“おにぃ”。

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