大里桃子優勝のカギは“ハングリーさ”と“一定のスイングテンポ” ラフからのショットにもヒミツあり【辻にぃ見聞】

大里桃子優勝のカギは“ハングリーさ”と“一定のスイングテンポ” ラフからのショットにもヒミツあり【辻にぃ見聞】

ラフからのショットの技術にも大里桃子優勝のカギがあった(撮影:上山敬太)

先週行われた「CAT Ladies」では、“黄金世代”の一人、大里桃子がツアー初優勝を挙げた。今年7月に行われたプロテストに合格したばかりの20歳。テストに合格した年に優勝した初めての選手となった大里について、多くの女子プロを指導するプロコーチの辻村明志氏に振り返ってもらった。


■立ち振る舞いから強くなることを予感
「まさか今シーズン中に勝つとは思わなかった」。そう今回の優勝劇を振り返った辻村氏。しかし、大里の普段の立ち振る舞いなどを見て、「強くなっていく」という予感はずっと持っていたという。

「勝みなみ選手、小祝さくら選手と多くの“黄金世代”が合格した去年のプロテストで、大里選手は1打足らずに不合格。みんなが喜ぶなか、悔しい思いをしたことで、この一年はものすごくハングリーにゴルフに打ち込んできたと思う」

それに加え、大里は父の充(みつる)さんとともにツアーを転戦。仕事を辞めてまで、自分のゴルフに全てを注いでくれる父がバッグを担ぎ、ともに戦っている。「失敗が許されない環境。精神的に強くなっていく」。辻村氏は、20歳になったばかりの女子とは思えないその精神力に言及した。

■優勝者に共通する特徴
このほか、辻村の目に留まったのが「14本のクラブを一定のテンポで振ることができる」という大里の特徴。これが強みの一つだと分析した。

「パターがゆったりなのは、意識的なものだと思う。ショットも一貫して同じテンポで打てている。若手選手が試合中に崩れていくのは、スイングの“型”ではなく“テンポ”。優勝している選手で、試合中にリズムが崩れる人はいません」

初優勝がかかった試合でも、愚直に自らのスイングを貫いた大里。ここにも、精神的な強さがあらわれている。

■スピン量が多いヒミツは?
今回の優勝には、一つ不思議な点がある。それが大里のフェアウェイキープの“低さ”だ。42ホール中、ティショットがフェアウェイを捉えた回数は「18」。これは決勝ラウンドに進出した51選手のなかで“最下位”のスタッツで、辻村氏も「優勝する選手のデータではない」と話す。しかし、パーオンは54ホール中43ホールで全体5位を記録。ラフからしっかりとグリーンをヒットし続けたのは、この数字を見ても明らかだ。どうやら、その秘訣は大里が持つ“ある技術”にあるという。

「大里選手のスイングは、トップでフェースの向きがやや正面を向く、オープンフェース気味のスクエア。これは、スピン量が多くて、高い球を生み出し、ラフからのショットにも生きてきます。フェアウェイキープの少なさを補ったラフからの技術は、こういう点にも見受けられることができます」

女子選手の多くは、フェース面がトップで閉じた状態になるシャットフェースが多い。これは、スピン量とボールの高さが抑えられ、あまりキャリーが出ない球となる。大里が用具契約を結ぶブリヂストンのツアー担当者は「大里選手は、スピン量が多く、全体的にハードで男子プロのようなセッティングを好みます」と証言する。グリーンでバックスピンを操り、ピンの近くにボールを置くシーンもよく見られたのだが、それは大里のスイングが生み出す特徴の一つだった。

「大里選手はスイングに大きなクセはなく、ヘッドスピードも43m/sとしっかりある中距離ヒッター。スピン量が多いのは武器になります。今回のコースは、コンパクションが高いグリーンだったこともあり、その球がさらに有効に働いていました」

■「ニトリレディス」をどう攻略するかに注目
最終日の18番の三打目。残り105ヤードの位置から、PWでグリーン左奥に切られていたピン20cmを差し、優勝を決定的としたビッグショットには、辻村氏も目を奪われたという。 。

「あれは立派なショット。本来なら、安全に右から行きたいところだけど、相手もバーディを獲ってくるという計算でピンを差したのは、強い気持ちのあらわれ」

大里自身も優勝後に、このシーンを振り返り「安全に行こうかなとも思ったけど、かっこ悪いと思ってピンを狙いました」と強気のコメントを残していた。もともと、父が「負けず嫌い」と語る性格に、ハングリーさが加わったことが、優勝という結果として結実した。こういう場面の一つひとつに気持ちの強さがうかがえる。

今週の「ニトリレディス」はツアーでも屈指の難関コース。「ワイドだった大箱根に比べて、フェアウェイは3分の1位の広さに感じるかもしれない。そこで大里選手がどういうプレーを見せるかが楽しみです」と辻村氏。小樽で、20歳の新星がその真価を発揮できるか?そこにも注目が集まる。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹で、ツアー会場での愛称は“おにぃ”。

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