【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】失格劇を糧にできるか?新垣比菜が迎える正念場

【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】失格劇を糧にできるか?新垣比菜が迎える正念場

失格をどう乗り越えるか 新垣比菜の真価が問われる(撮影:上山敬太)

競技失格。プレーヤーにとって、これほど悔しいことはない。基本的に審判がおらず、プレーヤー自身が審判といわれるゴルフではなおさらだ。ましてや、それが優勝を争っている選手だったら…。「CAT Ladies」2日目を首位と2打差の2位で終え、ツアー2勝目を狙う最終日へ、というときに発覚した新垣比菜の失格劇は、まさにそんな場面だった。


パー5の最終18番をボギーとしたため、スコアは「6」でなければいけないが、マーカーが「5」と間違って記入していたのに気付かないままサインをして提出してしまい、過少申告。失格となった。

「最後のボギーがショックで」と、スコア誤記に気付かず、唇をかんだが、時計の針は巻き戻せない。新垣は最終日の舞台に立つことも許されず、同い年の大里桃子の初優勝を見ているしかなかった。

強豪ひしめく黄金世代の中で、プロ初優勝に一番乗りし、2勝目も最初に、と意気込む中での残念すぎる失格劇。だが、新垣の真価が問われるのはこの後だ。

ゴルフというゲームの性質上、通常とは違う心境のとき、つまり優勝争いを繰り広げているような大事な場面で、よりこういったトラブルは起こりやすい。常に平常心でいられることが理想かもしれないが、ゴルファーも人間。気持ちの浮き沈みと無縁でいられる者などいない。

マーカーの記入ミスがあったとしても、スコア提出は選手の自己責任。新垣自身もそのことはもちろん承知しているだろう。だが、こんなトラブルの後、それをどんな風に受け止めるかによって、その後は全く変わってくる。

わかりやすいのは、レクシー・トンプソン(米国)の例だ。2017年の海外女子メジャー初戦、「ANAインスピレーション」最終日に、優勝争いの渦中にいたレクシーに、12番終了時点で競技委員が話しかけた。前日の17番でのプレーについて、テレビ視聴者からの指摘、4罰打を科すことが決まったという宣告だった。グリーン上でマークし、拾い上げたボールを戻す際、元の位置とズレていた、というもので、誤所からのプレーの2罰打と、スコア誤記の2罰打で計4罰打。それを翌日のプレー中に選手本人に告げるという異例の措置だった。

新垣のケースと違うのは、選手本人がスコアカードを提出する際には罰を受けていたことを知らなかったものとみなされて失格にはならなかったこと。優勝争いの最中に残酷な宣言をされたレクシーは、それでもプレーオフまで粘ったが、残念ながら優勝することはできなかった。

レクシーは、これにくじけることなくその後も2勝を挙げて賞金ランキング3位となり、シーズンを終えている。本当の意味でのリベンジとなるANAインスピレーション優勝を狙い、虎視眈々。トラブルがあってもたくましく成長していることがよくわかる。

余談だが、この後、事件は選手も含めた世界中のゴルフ関係者に大論争を巻き起こした。これを重く受け止めたR&Aと全米ゴルフ協会(USGA)は「視聴者からの指摘は受け付けない」という“新ルール”を18年から適用することを発表している。中継局の映像などを競技委員会が確認する措置が取られるが、まさにレクシー事件が引き金となったルールだ。

筆者が間近で見たのは、ジェットこと尾崎健夫の失格劇。06年の「アンダーアーマーKBCオーガスタ」初日。ホールアウト後に、インタビューの約束をしていたところ、好スコアでプレー。上機嫌のままレストランで話し始めたところへ、大会関係者が歩み寄った。自分のサインをし忘れたことで失格となったのだ。一瞬、流れる気まずい雰囲気。だが、一度、席を離れて戻ってきたジェットは笑顔でいった。「仕方ないなぁ、で、なんの話だっけ?」。こちらに気を使わせることなく、約束通りインタビューを行った。

まだ19歳の新垣に、すでにメジャータイトル保持者だったレクシーや、シニア入りしていたベテラン・ジェットのような対応は難しいかもしれない。だが、どんなに大変なことがあっても、それをどう乗り越えるか、いかに糧にするか。ゴルフに限らず、人生では何度もそれが問われる。

試練を乗り越えて、より強くなったプレーヤーは何人もいる。たとえ時間がかかっても、それができた者は、のちに自分に与えられたものに感謝することが多い。その一方で、何か起こったとき、それを他人のせいにしたり、受け止めることができないままネガティブな気持ちをいつまでも引きずっている者も多い。そのほとんどが、いつのまにか勝負の世界からは消えている。

優勝争いの位置にいながら失格するというこのつらい経験を、今後にどう生かすのか。19歳の新垣の今後に注目したい。

<ゴルフ情報ALBA.Net>