B・デシャンボーは天才科学者ではなく「2倍3倍の努力型!」【舩越園子コラム】

B・デシャンボーは天才科学者ではなく「2倍3倍の努力型!」【舩越園子コラム】

科学者デシャンボー その礎はたゆまぬ努力によって作られた(撮影:GettyImages)

米国男子ツアーのプレーオフシリーズ第1戦、「ノーザン・トラスト」はブライソン・デシャンボー(米国)が2位に4打差を付けて見事な勝利を飾った。24歳にして早くも米ツアー通算3勝目を挙げ、フェデックスカップランキングは一気に1位へ浮上した。


デシャンボーといえば、同一レングスのクラブを使うことで知られ、米メディアは彼のことを、驚嘆と皮肉の双方を込めて「Mad Scientist(狂った科学者)」と呼んできた。そして今年のデシャンボーは、まさにその枕言葉が示すがごとく、何度も「渦中の人」になった。

手にしていたパターが「ルール不適合」と指摘され、言われた通り、パターはルールに適合するものへ持ち替えた。だが、今度はサイドサドル式に似た変形ストロークが、これまた「ルール違反だ」と指摘され、デシャンボーなりに工夫を凝らして、ルールで許されるストロークに変えた。

それが逆に功を奏した格好になって、見事に掴み取ったのが6月の「ザ・メモリアル・トーナメント」での勝利だった。

しかし、その後は試合中にコンパスを取り出して使用し、「ピン位置を正しく知るために、ずっと(ほぼ2年間)使っている」と言ってのけて、米ツアーも全米ゴルフ協会(USGA)もびっくり仰天。後日、ピン位置を知るためのコンパス使用は「ルール違反」と結論づけられた。

ここまではルール絡みの出来事で、どれもデシャンボーはルールに従ったから、それはそれでよいとして、一番よろしくなかったのは、7月に欧州ツアーの大会に出場した際、優勝争いに敗れたデシャンボーが、優勝者が差し出した右手を握り返すことなく、祝福の言葉もかけずに歩き去った行為だった。

SNS上では「米国人として恥ずかしい」「目を覆いたくなるような情けなさ」等々、批判の嵐が巻き起こり、結局、デシャンボーは謝罪声明を出した。

そんなデシャンボーに課されたものは、自分で作ってしまった悪評をどうやって解消していくかだった。

そのための何よりの方策は、やっぱりゴルフの実力を示すこと。実力で悪いイメージを払拭し、実力で批判や陰口を封印してみせる――そんな気概が今週のデシャンボーにはあふれ返っていた。

単独首位に浮上した3日目のラウンド後、すでにデシャンボーは驚くほど強気の姿勢を見せていた。

「フェアウエイを捉え、ピンをアタックできている。そしてパットの冴えこそは僕の最大の強みだ。さらにはパットに悩み狂っている選手たちが僕を押し上げてくれているから、彼らにお礼を言いたいぐらいだ」

どうして、こんなに強気の発言ができるのだろう?石のように強固なこの自信はどこから沸いてくるのだろう?

それが不思議だったのだが、やがてデシャンボー自身がその疑問に答えてくれた。

「僕には生まれながらの才能が備わっているとみんなは思っているかもしれないけど、僕は人より優れた才能を持っていたことなど、ただの一度も無かった。読み書きもゴルフも、12歳、13歳ごろの僕は他の子供の2倍、3倍、努力した。14歳、15歳ごろからは本当に本当に頑張った。それが結果的に僕のゴルフの転機になった」

以後、「全米アマチュアゴルフ選手権」など数々のアマチュアタイトルを総なめにした末にプロ転向し、2016年に米ツアーデビュー。2017年、早々にツアー初優勝を遂げ、今季2勝で通算3勝。その間、いろんな出来事を巻き起こしたり、巻き込まれたり。ゴルフそのものにおいても不調を感じたり、勝利を逃がしたり。本当にいろいろあった。 

「そのすべての経験を糧にして、今でも僕は他の選手の2倍3倍の努力をしている。それが僕の強みだし、そうしなければ僕はここで生きられない。それが僕の基盤です」

優勝会見に足を運んだ米メディアは少なく、淋しい空気が漂っていた。だが、自分の生き方を自分なりの言葉で一生懸命に語ったデシャンボーを見つめていたら、その必死さが伝わってきて、「これからも努力型で頑張れ!」と言ってあげたくなった。

文・舩越園子

<ゴルフ情報ALBA.Net>