【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】米女子ツアーのQTに挑んだ8人が得た財産

【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】米女子ツアーのQTに挑んだ8人が得た財産

山口すず夏のようにアマチュアでも海外経験豊富な選手は増えてきている(撮影:ALBA)

8人もの日本人女子ゴルファーが、米女子ツアーのQT(予選会)に挑戦した。ミッションヒルズCC(カリフォルニア州)で、先週行われたQTファーストステージに挑んだのは、山口すず夏、長野美折らアマチュア6人と、村田理沙、中山綾香のプロ2人。4日間、72ホールプレーして、2位タイの山口、33位タイの村田、46位タイの長野の3人が100以内に入って10月のセカンドステージにコマを進めた。


米女子ツアーQTは、今年からシステムが変わり、第2ステージの上位15〜25人(不確定)が昨年までのファイナルにあたるQシリーズと呼ばれる舞台に立つことができる。シード落ち組や下部ツアーのシメトラツアーからの選手に加え、世界ランキング、全米学生ランキングのそれぞれ上位選手なども含めた108人が、ここで激突。8ラウンド144ホールの長丁場を経て、最低45人が2019年のツアー出場権を獲得する。

年齢的には、ファースト、セカンドステージのみ17歳以上、昨年までのファイナルに相当するQシリーズには、2018年12月31日までに18歳になるという条件がある(15歳以上なら、LPGAに申し立てて認められればこの限りではない)。

8人もの日本人選手が挑んだ裏には、この制度変更の影響もあるだろう。日本でも、来年から、今年までは基本が18歳以上だった年齢制限が1歳繰り下がり、高校在学中にプロテスト受験ができるようになるが、同時にLPGA会員にならないとQTを受けられない(移行期間あり)という変更も行われており、解放されていた門戸が、逆に閉じられる傾向にあり、そこを気にする者も少なくない。

男子以上に身体的成長が早い女子の場合は特に、肉体的なピークが10代に来る。ゴルフは、体操や水泳、陸上など、身体能力がそのまま、影響する競技ではないが、それでも、ジュニアたちの「早くツアーで戦いたい」という気持ちは、年々、ヒートアップしている。

このこと自体は、決して悪いことではない。アスリートである以上、より高いステージを求めるのは当然だからだ。

ジュニアの試合に出るためだけに高校に在籍し、ゴルフだけをしているくらいなら、むしろ義務教育を終えると同時にプロテストなりQTなりに挑んでプロになるほうがよほどすっきりする。それにストップをかける権利が果たして大人の側にあるのだろうか。

もちろん、教育的見地から、若いゴルファーたちの将来を考える必要があるのはいうまでもない。プロになるのが早くても遅くても、ゴルフしか知らない“ゴルフ馬鹿”を乱造するのは最低だ。ゴルフがいくら長くできる競技だといっても、現役でいられる時間は一生ではない。現役でなくなれば賞金も、露出に伴うスポンサー収入もなくなることがほとんどだし、全員がテレビ解説やレッスンなど、ゴルフ関連を生業とできるわけでもない。つまり、セカンドキャリアを考えなくてはならないからだ。

いい指導者や、まともな保護者は「現役をやめてからのほうが長い」ということをきちんと教えてくれる。ゴルフの世界以外での常識を。しかし、スコア至上主義の大人たちは、それどころか、ゴルフのスコアのこと、技術のことで頭がいっぱい。同じことを子供たちにもしいる。いい換えれば、ゴルフの素晴らしさをきちんと教えてくれない。

日本から世界最高レベルの米国を目指す選手は、ここのところあまり多くなかった。自国ツアーに毎週、高い賞金がかかった試合があるからだ。しかし今年、米QTに8人も挑んでいたことは、その傾向が変わってきたことを示している。

彼女たちの思惑はさまざまだろう。井の中の蛙でなく、早く世界に出ようとしている者もいれば、日本より米国に魅力を感じる者もいる。日本の閉塞感を感じている場合もあるかもしれない。華やかに見えても、実態は将来に暗雲が立ち込めている日本の女子ツアーの気配を(本人なのか周囲の大人なのかが)感じていることだって考えられる。

早く社会に出て経験を積むのも、学生として見聞を広めてから自立するのも、個人の自由であり、保護者も含めた状況次第なのはいうまでもない。新しい経験を積むのに「遅すぎる」ということもない。しかし、年齢を重ねた大人なら、誰もがわかっていることが1つだけある。それは「若いころの感性、体力でなければ吸収できないものがある」ということ。今回、米QTに挑んだ者たちは、結果がどうあれ、この先、どんなことがあろうとも、ここで得たことを糧にすることができる。QTの舞台でゴルフをした時間だけでなく、それに伴うすべてのことを。それが人生だし、ゴルフとは限りなく長い間、その財産を得る手段になるスポーツなのだから。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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