手に汗握る激戦を制しツアー初優勝の木下裕太 次なる目標は“打倒・池田勇太”

手に汗握る激戦を制しツアー初優勝の木下裕太 次なる目標は“打倒・池田勇太”

思わずかがみ込み…勝利をかみしめる(撮影:鈴木祥)

<マイナビABCチャンピオンシップ 最終日◇28日◇ABCゴルフ倶楽部・兵庫県(7217ヤード・パー72)>

“弱気な男”が、プロ11年目で大輪の花を咲かせた。トップタイからスタートした木下裕太が、5バーディ・2ボギーの「69」をマーク。トータル15アンダーで並んだ川村昌弘とのプレーオフを1ホール目で制し、ツアー初優勝を挙げた。


プレーオフが行われた18番ホール。先にバーディパットを決めた川村のプレーを見届けると、木下はピン奥4mのイーグルパットを打つためアドレスに入った。手の震えをおさえながら放たれたボールは、読み通り真っ直ぐのラインを進み、そのままカップに吸い込まれた。

「夢のなかにいるようでした。ウイニングパットは、途中からスローモーションになりました。消えていくのが見えて、『これで終わった』と力が抜けました」

こぶしを振り上げると、そのままその場にしゃがみこみ男泣き。立っていられないほどのプレッシャーから開放された瞬間。それほど、背中を追ってくる川村の重圧はすさまじかった。

スタート時の差は2打。だが「川村くんは必ず追ってくる。こんなのは差にならない」と必死のプレーを続けた。バーディを奪っても、川村も同様にスコアを伸ばしてくる。後半の15番パー5では、川村がセカンドショットをピタリとピンにつけイーグル。「これはピンチでした。完璧に打たれた」と焦る気持ちに負けず、木下も2オンに成功しバーディで応戦した。

だが最後に最大のピンチが訪れる。17番で1打差に迫られ迎えた最終18番。ここで木下のティショットは左のラフへと入った。一方の川村はフェアウェイからイーグルチャンスにつけるナイスプレーを見せる。ここで木下はレイアップを選択し3打目勝負とし、これを1.5mにつけた。川村はイーグルパットを外し、バーディ。決めれば優勝のバーディパットだったが、「入ってくれって願ったのがいけなかった。ゆるんで押し出してしまった」とこれをミス。結局パーとしてしまい、プレーオフへと突入した。

この激戦を制し、木下は「勝ち負けではなく、逃げなかったのが成長」と自分をほめた。それは正規の18番でラフから放ったセカンドショットなどに象徴される。レイアップで出したあとの残り133ヤードの3打目は、「安全に8番アイアンを持とうかとも思ったけど、(川村は)イーグルもある。『逃げちゃだめだ』と思い、しっかり振ろうと9番アイアンを握りました」とピンをさすことだけを考えた。「ずっと震えていました。でもそういうときのほうがいいショットが出るんですよね」。弱気な男が見せた強気のゴルフの積み重ねが、初勝利へと結びついた。

「自分は追い込まないとダメなタイプ」と語る木下。これまでは「シード獲得」、「日本シリーズJTカップ出場」と目標を掲げ、自分を奮い立たせてきた。今回の優勝で最終戦出場も確定した今、次の目標として「1勝目は運、2勝目は実力というので、なんとか2勝目を挙げたい。まぐれで終わったと思われたくない」というものを設定した。そして、それに続けもう1つの目標を追加した。

「勇太さんがいない間に、賞金ランクを抜いてみたいですね」

幼少期から1学年上の池田勇太らと同じ千葉県内のジュニアスクールで腕を磨き、身長が低いことから“ちびユータ”とよばれてきた木下。「勇太さんに勝てれば全国大会とかはあったけど、いつも負けてきた」と、常に壁として立ちはだかった存在でもある。

この結果で、今季獲得賞金を約5079万円とし、ランク9位に浮上。現在3位につける池田との差は約1354万円と縮まったこともあり、それも現実味を増してきた。今回はその池田がいない間の優勝とあって「一緒に最終日最終組で優勝争いをしたいですね」という気持ちも強まった。だが最後は「3〜5打のハンデがないと勝てないと思いますけど」と“いつもの”弱気も顔を出した。それは、少し前まで死闘を繰り広げていた男とは全く別人ともいえる、柔らかい表情だった。(文・間宮輝憲)

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