「今週の勝利の行方」と「マスターズの勝利の行方」【舩越園子コラム】

「今週の勝利の行方」と「マスターズの勝利の行方」【舩越園子コラム】

大会史上初の連覇を達成したポール・ケーシー(撮影:GettyImages)

先日、日本のあるテレビ局のゴルフ関連番組から、来たる「マスターズ」の優勝予想をしてほしいと依頼され、私は迷わず、ダスティン・ジョンソン(米国)を筆頭に挙げた。


なぜなら、昨今の米ゴルフ界において、自己をしっかりと維持している筆頭がジョンソンだと感じており、そこに階段から転落して泣く泣く棄権した2年前の雪辱への強い想いが加わっているのだろうから、その2つの要素が絡み合っている彼こそが、大舞台で最強になると思えるからだ。

「自己を維持する」とは、言い換えれば、「他に左右されない」ということだ。「他」は自分を取り巻く環境だったり、天候だったり、あるいはコースの難易度やコンディション、他の選手たちのプレーぶりだったり。

ゴルファーは往々にしていろんなものに揺さぶられてしまいがち。ゴルフはメンタルなゲームゆえ、心の揺れがスコアの揺れへと連動していくことは、ゴルファーなら誰もが経験しているはず。だからこそ、「他」に揺さぶられることなく、どこまで自己を維持できるかが戦いの成否を占う指標になる。

新しいゴルフルールが施行された今年、米ゴルフ界は揺れ続けている。キャディのラインアップでペナルティを科せられた出来事に対し、大声で異議を唱えた選手もいれば、膝の高さからドロップする新ルールが「バカげている」と声を大にして叫んだ選手もいた。

異議を唱えることが悪いわけではなく、意見の主張がゴルフ界に好結果をもたらすことはもちろんある。だが、その渦中に身を置いている間、その選手の心はどうしてもそこへ向いてしまう。

そんな中、批判や不平不満を口にせず、黙々とプレーしているのは誰なのかと考えたとき、その答えが「DJ」だった。

ともすれば、大揺れしてしまいそうな出来事はジョンソンの周辺でも起こってはいる。前週の「ザ・プレーヤーズ選手権」の最終日の夜、宿から引き揚げる支度をしていた際、ジョンソンのキャディである弟オースティンが階段から転落し、手を骨折。今週の「バルスパー選手権」には包帯姿で現れたが、そんな一連の出来事にもジョンソンは動じることなく好プレーを披露し、最終日を2位で迎えた。

とはいえ、残念ながら最終日は「彼の日」とはならず、6位タイに甘んじた。だが、それでもクールな表情で戦い続けたジョンソンを「ジェントルマンだった」と評したのは、最終日を単独首位で迎え、勝利を挙げたポール・ケーシー(イングランド)だった。

ケーシーも他に惑わされることなく自己を維持しているからこそ、強さを発揮したのだと思う。今年1月から新ルールが施行され、キャディのラインアップ問題が取り沙汰されて他選手たちが異論反論を繰り広げていた際、声を荒げることなく、いち早く自分なりの予防策を取ったのがケーシーだった。

「僕と僕のキャディの間では、試合中、『とにかく僕の後ろに立つのは禁止』という僕らのルールを作った」

2月の「WGC-メキシコ選手権」の際、ケーシーのキャディは勘違いして同週開催だった「プエルトリコ・オープン」のピンシートをケーシーに渡し、そのまま数ホールをプレーするという重大なミスをおかした。だが、それに気づいたときもケーシーは「(正しい)ピンシート無しでプレーしていたなんて、めちゃおかしい」と笑い飛ばし、キャディを責めることはしなかった。

そんなケーシーは今季2度のトップ5に続き、今大会を制して米ツアー通算3勝目、そして大会連覇を達成。ジョンソンは今大会こそ最終日にやや崩れたが、今季はメキシコ選手権1勝を含め、5度目のトップ10入り。クールなDJであり続けていたジョンソンは、今週の結果にかかわらず、私の中では相変わらず今年のマスターズの優勝予想筆頭だ。

動じず、怒らず、自己を維持しつつ、黙々とプレーしている選手こそが強い。それは私の持論にすぎないが、結構、当たっていると自負している。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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