いつから開始?女子ツアーのホットワード“インターネット配信” 7年間配信を続ける大会は今何を思う?【記者の目】

いつから開始?女子ツアーのホットワード“インターネット配信” 7年間配信を続ける大会は今何を思う?【記者の目】

注目を集めるネット配信 このコンテンツが持つ重要な意味とは(撮影:佐々木啓)

先週の「Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント」では、リアルタイムで上田桃子の優勝を見届けた…、というファンも多かったはず。それは2013年からこの大会で行われている“インターネット配信”があったことが大きい。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長が導入を目指すと発言したことで、一躍“ホットワード”となったこの言葉。では実際にトーナメントでどのように、またどのような思いで、この配信が行われているのか?


『インターネットによるライブ配信』。Tポイント×ENEOS ゴルフでは、これが大会の特色の一つになっている。今年が7年目の放送で、いわば女子ツアーのインターネット放送の草分け的存在ともいえる。今年も会場を歩いていると、映像配信用の機器が各所に散らばり、その周りをスタッフが忙しそうに動き回っている姿が目に入ってくる。

スマートフォンの普及がまだ進んでおらず、今のようにインターネットがポケットのなかにない時に“挑戦的な試み”としてスタートした、この映像配信。「(大会を主催する)カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は企画会社として『新しいものをスタンダードにする』という考えがあり、それが挑戦のきっかけにもなりました」。そう語るのは、大会運営委員長も務めるCCCマーケティング取締役の高原祥有(よしくに)氏だ。

トーナメントプロデューサーを務める佐草伸吾氏(博報堂DYメディアパートナーズ)は、この放送形態のメリットとして『大会期間の全日放送』、『多くの選手を映すことができる』、『様々なホールを映すことができる』、『ライブで見られないファンに、大きな価値を作ることができる』という面を挙げる。つまり大会スポンサー、選手、コース、ファンと、トーナメントを作り上げる各方面にメリットを提供できるものと考えている。

「ファンや選手、会場、地域のよさを伝えることもでき、ゴルフの普及を促すことにつながると思います」と佐草氏。今年もカメラ24台以上、60〜70人の人員からなる放送クルーを結成し、多くの視聴者にライブで会場の熱気を届けた。

LPGAがどのタイミングでインターネット配信を行うかは現時点で不透明で、小林会長も進ちょく状況について「鋭意作業中」と語るにとどめている。今シーズン中の開始を目指しているようだが、では、ここから急激な進展があったとして、“決定→即導入”ということは可能なのか? 佐草氏に聞いてみると「現時点でどこまで進んでいるのか、正確なことは私にも分からないけど」と前置きしたうえで、こう見解を示した。

「物理的には可能だと思います。ただ、この大会で行っている規模のものをやろうとしたら、まずスポンサーやテレビ局も含め、大会ごとの調整が必要。撮影地点の下見や解説者のキャスティング、予算の問題などクリアすべきことは多い」

また“見せ方”についても言及する。「ゴルフは、視聴者も実際にプレーし、知識欲も出てくるスポーツ。ゴルフ場、技術、ギア、スイング、そういったものを頭でも楽しめるように工夫をしています」。例えばTポイント×ENEOSゴルフの放送では、『スロー&ズーム』と呼ぶ手法にこだわりを持つ。プレーをスローで見ることができ、選手の表情やライの状況などをズームで撮影。それを解説者がその都度説明し、視覚、知識という両面から、ゴルファー心理に訴える放送が心がけられている。

この他にも、スコア速報機能や、弾道が線で表示されるプロトレーサーなどを導入。特にこのプロトレーサーは、後方だけでなく、女子ツアーでは初という横からも可視化できるものを使用し、テレビ中継さながらの放送を実現している。当然ながら、視聴者の心をつかむためのプロデュース、ディレクション、プランニングも重要となり、それは経験に裏打ちされる部分も大きい。

「すべての大会で配信を行おうとすると、同じような放送が続いてしまうことも考えられます。“金太郎あめ”のように均一になるのではなく、大会ごとにオリジナリティあふれるもの、違いがわかるものになるといいですね。それは開催地の特色を少し織り込んだ映像にするなど、ちょっとした工夫で可能になるものだと思います」(佐草氏)

無料でライブ映像が見られるとあって、今大会のネット配信に対するファンからの評判は良好。以前、大会でアンケートを取った際に出た、ファンの2大不満、『生で試合を見ることができない 』、『決まった選手しか映らない 』というものの解消にもつながっている。

この先、LPGAがネット配信を始めた場合、この大会が続けてきた独自の配信は終了となる。小林会長の発言が出た昨年12月には「来年はネット配信ができないんだね」という話も運営のなかで出ていたという。

だが、これについて高原氏は「各大会の放送に連動性を出せるのはLPGAさんだけだし、大賛成です。もともと、ファンが喜ぶものは、他の大会にもどんどん“盗んで欲しい”と言ってきました。それに“新しいものをスタンダードに”という考えで動き始めた配信を協会が始めるとなれば、これが“スタンダード”になったという何よりの証拠。役目を果たすことができたということになります」とポジティブに捉えている。そして、快く協会に“バトンタッチ”するつもりだ。

ちなみにテレビ中継との“共存”については2人とも、「可能」という考えを示している。「必ずしも生で観る人ばかりではないし、ネット放送があることで、ゴルフの観戦ツールが増えるという考え方。そのなかで、お互いが違うことをやっていけばいい」(高原氏)、「ネット放送がテレビの視聴者を奪ったという数字は出ていない。金曜日の放送をネットが担い、土日のテレビ放送につなげるということもでき、『ネットがテレビにとってプラスに働く』という仮説も立てているほどです」(佐草氏)。

この大会のネット配信が最終的に目指しているものは、もちろん“ゴルフの普及”だ。そのアプローチ方法としてネット配信が実施されている。現在LPGAによるネット配信が“いつ始まるのか”ということに、とかく注目が集まりがちだが、それに加えて“どのようなコンテンツになるのか”という部分についても見守りたい、そう思った。(文・間宮輝憲)

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