復活した2人のチャンピオンが教えてくれたこと【舩越園子コラム】

復活した2人のチャンピオンが教えてくれたこと【舩越園子コラム】

WGC初優勝をつかんだK・キスナー(右)(撮影:GettyImages)

世界ゴルフ選手権シリーズの「WGC-デル・テクノロジーズ・マッチプレー」は、フィル・ミケルソン(米国)が敗退しても「大好きなオーガスタへ行って練習できる日が増えた」と笑顔を輝かせながら去っていったかと思えば、ローリー・マキロイ(北アイルランド)とのマッチ初対決に勝利したタイガー・ウッズ(米国)が、次戦では初出場だった無名のデンマーク人、ルーカス・ビェルレガードに敗れ、ベスト4進出を逃すなど、さまざまな話題に溢れていた。


決勝マッチを戦ったケビン・キスナーとマット・クーチャー(ともに米国)は、やや地味だが、どちらも底力がある選手だ。どちらが勝っても、ある意味、素晴らしい「カムバック」になる。そう思いながら2人の勝負を見守った。

40歳のクーチャーが勝てば、大会最年長のチャンピオン。その記録もさることながら、昨秋の「マヤコバゴルフクラシック」優勝時に現地キャディへ支払った謝礼が「あまりにも少なかった」とSNS上で明かされた今年序盤の騒動から、早く完全に立ち直ってほしいと願わずにはいられなかった。

結果から言えば、クーチャーは3&2でキスナーに敗れ、最年長優勝は叶わなかった。だが、今大会は2位でもフェデックスカップランクは1位へ浮上し、一時は「チ〜〜ト(ずるい)!」と野次られていたクーチャーに従来の「ク〜〜!」という声援が戻ったことは、彼にとって何よりの「カムバック」だった。

そして、昨年大会でも決勝マッチを戦い、バッバ・ワトソン(米国)に大敗を喫した35歳のキスナーは、今年、その雪辱に挑み、見事、その願いを成就させた。総当たり戦のグループマッチの1回戦でいきなり敗北しながら大会で優勝したのは史上初。前年の決勝マッチで敗北しながら翌年に優勝したのも史上初。どちらも、素晴らしいカムバックだった。

「心身の疲弊という意味で、この大会は勝つことが最も難しい。長い1週間だった」

キスナーは自身の勝因を、こう表現した。

「去年の敗北から僕は学んだんだ。決勝マッチで自分のテンションを上げ過ぎないことが大事だ」

折りしも、同週開催のもう一つの米ツアー大会、「コラレス・プンタ・カナR&C選手権」では、2010年「全米オープン」覇者、39歳のグレアム・マクドウェル(北アイルランド)が3年半ぶりの復活優勝を遂げた。かつてメジャーチャンピオンになった後、さらに2勝を重ね、トッププレーヤーになったマクダウエルだが、ここ2、3年は不調に陥り、左手首の故障も加わって、ランキングは低迷。世界選手権のマッチプレー出場は叶わなかった。

だが、母国である北アイルランドのロイヤル・ポートラッシュで開催される今年の「全英オープン」に出場したい一心で、ランクアップを図るためならどんなチャンスにも挑もうと、この大会の舞台となったドミニカ共和国へ足を運んだ。

そんなマクドウェルを叱咤激励し続けたのは、13年間、相棒を務めているキャディのケン・コンボイ氏。いい仲間がいてくれることは、マクドウェル自身もナイスガイであることの証しだ。

昨年は予選落ちしたこの大会で、今年は見事に勝利し、フェデックスカップランクは119位から42位へ急上昇した。久しぶりの勝利を手に入れたマクドウェルが語った言葉に、はっとさせられた。

「これまでは欲しいものを欲しがり過ぎて手に入らない日々が長く続いていた。でも、ようやく気が付いた。大事なのは、ひたすらゴルフをすること。無心で戦っていれば、欲しいものは自ずと手に入る」

マクドウェルがカムバック優勝を果たして、しみじみ口にした言葉は「欲しがり過ぎないこと」。キスナーがカムバック優勝を果たして口にした言葉は「テンションを上げ過ぎないこと」。

どちらも、苦労して再び勝利に輝いたチャンピオンたちが教えてくれたゴルフと人生の教訓である。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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