異なる2つのウッドに明確な意図 武尾咲希の11本でピンを攻めるセッティング【契約フリーから学ぶクラブ選び】

異なる2つのウッドに明確な意図 武尾咲希の11本でピンを攻めるセッティング【契約フリーから学ぶクラブ選び】

再起を図るショットメーカー 武尾咲希のセッティングを解説(撮影:佐々木啓)

年々クラブ契約をフリーにする選手が増えている国内女子ツアー。2018年には賞金女王のアン・ソンジュ(韓国)をはじめ、賞金ランキングトップ5のうち3人が契約フリーという状態に。19年も大山志保、笠りつ子ら実力者たちがフリーとなり、様々なメーカーのクラブが入った14本で戦っている。


多種多様なクラブを選べるのは我々アマチュアも同じこと。つまり彼女たちのセッティングを見ることで、アマチュアが選ぶべきクラブが見えてくるのではないか。ということで契約フリーの選手の14本を徹底調査した。今回は武尾咲希のセッティングを紐解く。

【武尾咲希2019年開幕時のセッティング】
1W:キャロウェイ エピックフラッシュ サブゼロ ドライバー 10.5度
(フジクラ スピーダーエボリューションII 474/SR)
3W:キャロウェイ XR16
5W:MIRAI GOLF TINIT
7W:MIRAI GOLF TINIT
3U:PING G400
4U:PING G400
5U:PING G400
7I〜PW:PING i210
W:EVEN GOLF HR-07 Pleasure Design 52度
W:EVEN GOLF HR-07 Pleasure Design 58度
PT:スコッティ・キャメロン ニューポート2
BALL:タイトリスト PRO V1

2017年にフェアウェイキープ率で7位に入るなど、曲がらないショットが持ち味の武尾は、穴井詩らと同様、長きにわたりゴルフ5とクラブ契約を結んでいたが、17年に同社がツアー撤退したためクラブ契約フリーに転向。以降は様々なクラブを試しながらツアーを戦っている。

そんな武尾の19年開幕時のセッティングを、プロコーチ&クラブフィッターの筒康博氏はこう見ている。

クラブセッティングを見てまず感じたのが、彼女のプレースタイルです。圧倒的にアイアンが少ないにもかかわらず、飛び系アイアンではないPINGの『i210』を入れている。加えて同社の『G400』のハイブリッドが入っているところを見ると、彼女の生命線はピンを狙うセカンドショットにあることが伺えます。

契約フリーらしいと感じるのは、地クラブのMIRAI GOLFの『TINIT』のフェアウェイウッドが入っていること。ソールの奇麗さを考えるとテスト中だったと思います(結局、試合では使用せず、以前のフェアウェイウッドを使用)が、このフェアウェイウッドは、ソールに丸み(バルジ&ロール)があって抜群に抜けが良いのが特徴。それは、飛ばし屋ではない彼女にとって、フェアウェイウッドも「グリーンを狙うクラブ」の位置付けのクラブとして考えている、ということです。

武尾選手のセッティングで面白いところはここにあります。ドライバー、スプーンとそれ以下の番手で明確に用途、使い方が分かれているんです。

ドライバー、スプーンは距離を出すときのクラブとして滑らすように打つ。主な用途はティショットであったり、長いパー5の2打目でできるだけ前に運ぶときに使うもの。逆にクリーク以下は全てピンを攻めていくクラブ。だから、飛距離性能以上にテストしている『TINIT』フェアウェイウッドのような抜けの良さ、またPINGのユーティリティはアイアンのように使えるクラブを選んでいる。3番と5番以下で明確に求めるものが違うから、大きく傾向の変わったモデルが入っているんですね。いわゆる距離の階段、という考えとは違った明確な意図がある。

決して飛ばし屋でない彼女ならではともいえますが、この組み合わせはアマチュアのみなさんにもオプションの一つとしてぜひ考えて欲しいです。例えば「明日行くコースはいつもよりもかなり長い」、「疲労や体調不良などで、どうしても飛距離が落ちてしまっている」といった状況ときにこういったセッティングをするという選択肢も持っておくと、平均スコアはグッと上がると思いますから。

テストしているという状況を見るように、まだフェアウェイウッドががっちりと固まっているとはいえませんが、もしかしたらフェアウェイウッド以外のハイブリッド以下の番手に関しては、開幕の時点ですでに信頼感と自信を持っていたのかもしれません。だからこそ、先週の「スタジオアリス女子オープン」での2位という好成績につながったと思います。

少し話は逸れてしまいますが、契約フリーと言うと「何でも好きに使える」と感じるかも知れません。しかし、逆の要素もあることも知って欲しいです。フリーのプロ達が契約先ではないメーカー担当者にワガママを言っていると思ったら大間違い。契約選手のサポートをしなければいけない担当者の手が空くのをじっと待って、迷惑に感じさせないよう自分の希望を伝える作業は、契約フリーのプロたちにとって辛いコミュニケーション作業。

特に武尾選手の場合は、昨年はシードを喪失し、背水の陣となったファイナルQTでも思った成績を収めることができませんでした。そんな状況では、メーカー担当者にワガママなんて本当に言い辛く、おっとりした性格の武尾選手なら尚更。プロサポートが充実しているキャロウェイ、ピンのクラブが彼女に合っていたのはコミュニケーションの面でも非常にラッキーだったと思います。

セッティングに戻ると、女子プロたちが飛距離アップに成功しているキャロウェイの『エピックフラッシュ サブゼロ」が目を引きます。井上コーチに師事している成田美寿々選手や穴井詩選手も使っている事を考えると、チーム井上内での情報共有もしっかりできているという事でしょう。今年も、女子ツアーはチーム井上から目が離せませんね。

解説・筒康博(つつ・やすひろ)/プロコーチ・フィッター・クラフトマンとして8万人以上のアドバイス経験を生かし、現在は最先端ギア研究所『PCMラボ』総合コーチ、インドアゴルフレンジKzヘッドティーチャーを務める。ALBA本誌ギア総研をはじめ様々なメディアでも活躍している。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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