メジャー優勝「後日談」と「女子大生ゴルファー」と「前向きなエネルギー」【舩越園子コラム】

メジャー優勝「後日談」と「女子大生ゴルファー」と「前向きなエネルギー」【舩越園子コラム】

11年ぶりの勝利を手にしたチェズ・リービー(撮影:GettyImages)

「全米オープン」を制したゲーリー・ウッドランド(米国)の「後日談」が止まらない。いや、正確に言えば、「ウッドランドにまつわる後日談」と表現したほうがいいだろう。


全米オープン翌週の6月22日、米メジャーリーグのアリゾナ・ダイアモンドバックス対サンフランシスコ・ジャイアンツの試合が行なわれたアリゾナ州のチェイス・フィールドでは、試合開始前からビッグスクリーンにウッドランドの姿が何度も大写しになった。

いやいや、これまた正確に言えば、大写しになったのはウッドランドとダウン症の女子大生ゴルファー、エイミー・ブロッカーセットさんのツーショット。なぜなら、この日、エイミーさんが始球式に臨んだからだ。

エイミーさんとウッドランドの出会いは今年2月の「ウェイスト・マネージメント・フェニックス・オープン」の開幕前だった。知的障害者を支援するスペシャル・オリンピックのアリゾナ支部と同大会が数年前から行なっている「ドリーム・デイ」という企画の一環で、障害を持つ人々と出場選手が一緒にプレーを体験するというものだった。

アリゾナ州内のコミュニティ・カレッジに通うエイミーさんは、奨学金で進学し、ゴルフ部に籍を置く初のダウン症のカレッジ・アスリートだ。この企画でフェニックス・オープン会場へ招かれ、ディフェンディング・チャンピオンだったウッドランドと名物ホールの16番(パー3)をプレーした。

エイミーさんのティショットはグリーン際のバンカーへ。彼女は「大丈夫!」と言い切って、きっちり出し、再び「大丈夫!」と言って2mほどを沈め、見事にパーセーブした。ハラハラしながら見守っていたウッドランドは「彼女のポジティブなエネルギーは僕にも伝わってくる」と感激。そのときから2人の交流が始まった。

全米オープンでもエイミーさんから激励メッセージをもらい、勝利したウッドランドは優勝会見の壇上で、スマホ画面の中で笑顔を輝かせるエイミーさんと「おめでとう」「ありがとう」と喜び合った。

そんな2人のストーリーは米国内の方々で繰り返し報じられ、ついには「全米を感動させた」ということでダイアモンドバックスがエイミーさんを始球式に招いた。

もちろん、エイミーさんは引き受け、やるからにはちゃんとやらなければということで「3日間、(投球を)練習した」。

いざ、マウンドに上がったエイミーさんは堂々たる投球を披露。それは再び彼女が全米中を感動させた瞬間だった。その感動が「ゴルフ発」「ウッドランド発」だったことが、うれしく感じられた。

その翌日、「トラベラーズ選手権」をチェズ・リービー(米国)が見事に制した。ルーキーイヤーに挙げた2008年の初優勝以来、故障に苦しんだ日々を経て、実に250試合ぶり、3983日ぶり、ほぼ11年ぶりに勝利を挙げた。

リービーと言えば、昨年のフェニックス・オープンでウッドランドとのプレーオフに敗れた日のことが思い出される。ウッドランドとリービーはカンザス州出身の同郷だが、高校からアリゾナに移り、アリゾナ州立大学ゴルフ部で大活躍したリービーは、フェニックス・オープンでは地元のヒーローとして人々から熱い声援を送られていた。

しかし、勝利したのはウッドランド。惜敗したリービーは悔しさを噛み締めながらもウッドランドの勝利を笑顔で讃え、こう言った。

「ようやく優勝争いができた。ホームタウン・ボーイとして、みんなが熱く応援してくれた。勝てなかったけど、ファンタスティックな1週間だった。この経験を生かして、いつか僕がトロフィーを掲げてみせる」

先週の全米オープンでウッドランドが勝利したとき、リービーは3位タイだった。そして今週、ついにリービーが優勝トロフィーを掲げた。米ツアー入り早々に初優勝を飾りながら、度重なる故障に泣かされ、勝利から遠ざかった苦節11年は長かったはずだ。

「でも、そういう日々があって良かった。人生とは何か、ゴルフとは何かを知ることができたから――」

ひたすら前向きな姿勢と笑顔。その先に待っていた成功と喜び。それらは、ウッドランドとエイミーさんとリービーを結ぶ共通項だ。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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