涙は… 一切なし!渋野日向子が世界一の笑顔で決めた一撃

涙は… 一切なし!渋野日向子が世界一の笑顔で決めた一撃

スマイルで決めたメジャー優勝!(撮影:村上航)

<全英AIG女子オープン 最終日◇4日◇ウォーバーンGC(イングランド)◇6585ヤード・パー72>

最終ホールのバーディパット。決めれば初出場の海外女子メジャーで優勝というシーンでも、満開の笑顔でアドレスに入った。頭の中にあったのはガッツポーズのことだった。


勝てば樋口久子以来42年ぶりのメジャー優勝という偉業。知ったのは、単独首位に立った3日目だった。「海外の試合だから」、「メジャーだから」などという意識ははなからなし。「予選通過できればいいかな、くらい」と話していた大会前。周囲は、例年であれば来年の出場権が得られるとされる15位タイ以内を目標に掲げていたが、渋野自身はそんなことは頭の隅にもなかった。

そんな無欲の20歳が、4日間を信じられない勢いで駆け抜けた。怖い物知らず、新人類。「ガッツポーズするじゃないですか。泣きそうになるじゃないですか。涙は全く出てこんかったです(笑)。泣きそうになるかなって、こう(手を目に)やったけど、全然でした(笑)」。会見でまたしても大爆笑を誘った。

3日目を終えて単独首位に立ち、運命の最終日を迎えた。スタートの約2時間前に到着し、まず向かったのは選手ラウンジ。「デザート食べたい!」と小走りにスイーツを探しに行った。その後はパッティング練習、アプローチ練習、バンカー練習を入念に行い、ショット練習に向かった。すでに集まっていたファンからの声援に笑顔で応え、サインにも応じた。

スタートの午後2時35分が迫った1番ティ。大きな拍手に迎えられ、後に“渋野ワールド”をつくり出すステージに立った渋野の顔は、やわらかな笑みを浮かべていた。「緊張はあまりなかった」と、ドライバーで放たれたティショットはフェアウェイど真ん中。出だしをパーとした。

2番で惜しいバーディチャンスを逃し、迎えた3番パー4。左奥のピンに対し渋野のセカンドは右手前約15メートル。これをオーバーすると返しも入らず、さらにその返しも入らず、まさかの4パットでダブルボギー。ここまで快進撃を見せてきたスマイルシンデレラが後続に並ばれた。それでも下を向くことなく、歯を食いしばり5番でバーディ。7番のパー5では2オンに成功しバーディで借金返済。後半につなげるはずだった。

ところが続く8番パー3でティショットを奥にこぼすと、寄らず入らずのボギー。前日に怒りの3パットを喫した9番はパーで切り抜けたが、この時点で後続も伸ばし、前半終了時点で2打差の逆転を許した。それでも後半はここまで2度の「30」をマークするなど大得意のバックナイン。「優勝するぞ」と意識するきっかけとなった10番でカラーから5メートルを沈め、息を吹き返した。「10番入れた時点でトップと1打差。行けるわ、まだ狙えるわ、って。後半は3日間とも伸ばせていたので、得意な感じはありましたので、行こうと」。

そこからはお決まりの展開だった。最終日なんて関係なし。優勝争いなんて関係なし。ティが前になった12番パー4ではワンオン狙い。「狙いより右に行って」とペナルティエリアが広がるロケーションのなか、1打でグリーンを捉え、イーグル逃しのバーディ。13番でもバーディを奪い、再び首位に並んだ。

その後、首位に立っていたリゼット・サラス(米国)がさらに伸ばしたが、渋野は15番でもバーディを奪い、再び首位に並ぶと、運命の18番を迎えた。そこで見せたドライバーショットは圧巻の一言。現地のテレビリポーターも、「信じられない」と絶句するほどのショット。さらにそこからバーディチャンスにつけた。

「入る予感というか入れる気ではいました。入る予感とかまでは余裕がなかったですが、ガッツポーズのことは考えていました」。頭の中を駆け巡る欲とプレッシャーのせめぎ合い。「どうするか決める前に打ってしまった」とし、球がカップに吸い込まれた瞬間、左手を大きく突き上げた。

「こんな完ぺきなゴルフがなぜできるのだろう」。現地メディアの声はもっともだ。渋野自身も「う~ん、分からない(笑)」としたが、会場が渋野の世界に吸収されていったのは間違いない。優勝を決めた瞬間、涙はなく、満開の笑みがこぼれた。同組のアシュリー・ブハイン(南アフリカ)も手を上げて喜び、ハイタッチをした。

史上まれに見る笑顔の勝利。つらい時を乗り越え、プレー中、何度もカムバックを果たした渋野。見事なまでのストーリーを締めくくった最後のバーディパットを忘れる人など、いるはずもない。(文・高桑均)

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