黄金世代からまた一人 淺井咲希から感じる“超バネ”を生かした飛ばしの才能【辻にぃ見聞】

黄金世代からまた一人 淺井咲希から感じる“超バネ”を生かした飛ばしの才能【辻にぃ見聞】

圧巻飛距離の淺井 超バネがパワーの源(撮影:米山聡明)

淺井咲希のツアー初優勝で幕を閉じた、先週の「CAT Ladies」。黄金世代から9人目のツアー優勝者で、この世代の勢いを改めて感じさせる大会となった。そんな21歳の“魅力”を上田桃子らのコーチを務める辻村明志氏はこう見る。


■辻村氏が「ビックリした」淺井の飛距離
昨年までの主戦場はステップ・アップ・ツアーで、ファイナルQTで2位となり今季のレギュラー出場権を手にした淺井。「リゾートトラスト レディス」で7位タイに入るなどコンスタントに活躍を続け、リランキングも楽々突破した。CAT Ladies開幕前までに約1533万円(ランク45位)の賞金を獲得し、シード入りを目指していくなかでの、今回の優勝となった。

そんな淺井のプレーを改めて箱根で見た辻村氏は、今季の活躍の理由について、こんな印象を抱いた。「とにかくプレーのテンポがいいですね。次のプレーを常に想定しているイメージです。ゴルフは各地点への移動で歩くため、すごくあいだがあくスポーツ。そのなかで淡々としたラウンドを続けていますね」。これが一定のリズムを生み出し、安定したゴルフの要因となっている。

また辻村氏が「正直ビックリしました」と強い衝撃を受けたのが、ドライバーショットだ。「あれだけ小柄で、あのキャリーを出せる選手を久しぶりに見ましたね。下半身のバネが、ヘッドまで伝わるスピードが速いです。飛んで曲がらない典型ともいえる選手ですね」。

淺井の身長は151cm。プロとして決して恵まれた体格ではないが、その飛距離が魅力の一つとなっている。今大会のドライビングディスタンスは257.5ヤードで全体5位。葭葉ルミ、比嘉真美子といったツアー屈指の飛ばし屋を抑え込んだ。「ドライバーで10ヤード、アイアンでも1番手は伸びました。特にアイアンは飛びすぎないように気をつけています」と、今も飛距離が伸び続けていることを本人も口にする。

特に辻村氏が注目するのが、インパクト時の“カカト”。「インパクトゾーンで地面を全力で蹴っていて、両カカトが浮くのですが、この動きがヘッドスピードを上げるポイントになっています。地面を力強く蹴って、それがヘッドの末端まで伝わることでヘッドスピードは上がります。地面を蹴らないピッチャーはいないのと同じことです」。

■天性の“飛ばし”の才能
淺井に飛距離を伸ばすため、何か特別なトレーニングをしているのかと聞いてみると、「今オフは、トレーニングに時間を割いていましたが、肩、胸あたりに筋肉がつき過ぎてしまい、打ちづらくなりました。それで今はやっていません」と、むしろ筋力を徐々に落としていることを明かした。トレーニングを行っていた高校時代のスイングスピードは46m/秒だったが、それをやめた今も43m/秒の水準は維持している。

「力強くて、下半身のバネがすごい。右からえぐるハイドローで、ボールも“グーン、グーン”と伸びがある。あの体であれだけ飛ばせるのは天性の部分も大きい。バネがあるという表現では足りない。“超バネ”があるといういい方をしてもいいですね」(辻村氏)。飛ばしの才能が、その小さな体には備わっている。

淺井は幼少期にバレエをやっていたのだが、その話を聞いて辻村氏は、“なるほど”とばかりにうなずいた。そして「スイングをするうえで、カカトではなく10本の指に重心がしっかりと乗っているのは大事なこと。バレエのように、指先を使って足の上下運動をする動きはゴルフに役立っているのかもしれませんね。ゴルフだけだったらあの飛距離は出なかったと思います」と続けた。

「全英AIG女子オープン」を制した渋野日向子が、ソフトボールをしていたことは今となっては有名な話になったが、辻村氏は「ゴルフだけでは鍛えることができない部分を、他のスポーツで伸ばすのはとてもいいこと」と話す。淺井自身も、その効果を「関節が軟らかいので、それがスイングに生きている部分はあると思うし、何よりもケガをしないので、バレエ経験は役立っています」と話した。当然ながら「アスリートにとってケガをしないことも重要」(辻村氏)な要素だ。

■大旋風…黄金世代が黄金世代を育てる
「穴井詩選手のように、優勝する前には『勝ちそう』という雰囲気がありますが、淺井選手もそれが出ていましたよね。体は小さいけど、ゴルフのスケールは大きいです。秘めている能力を最大限に引き出せていますね」。とはいえ、まだ完成には至っていない。「ティショットはうまいけれど、まだアイアンなどには雑さがあります。あれだけ飛んで、あれだけ曲がらなければ、もっとセカンドショットでゲームを組み立てられます。アイアンの精度はまだ上げられるはずです」。こういって、さらなる成長を期待した。

また辻村氏は、今季ツアーを席捲する黄金世代の活躍ぶりに「ここまでとは予想していませんでしたね」と驚きの言葉を口にした。小祝さくらのコーチも務めていることもあり、この世代の選手の姿をみることも多いなかで、こんな印象を抱いている。「プライベートでも仲がいい選手が多い。プレー中だけでなく、あれだけ関係性が近いと食事をしていても『置いていかれないように』と思うのでは。“黄金世代が黄金世代を育てている”という印象を受けますね」。

「淺井選手も明るく、元気がいいし、物怖じしないタイプ。最近の若い選手らしさがあふれていますね」。小さい体から繰り出されるパワフルショット。ツアー会場での愛称“たぁたん”が、淡々とプレーする姿など、見どころの多い選手が、黄金世代からまた現れた。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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