フェデックスカップとプレーオフの成否を「R・マキロイ目線」で考える【舩越園子コラム】

フェデックスカップとプレーオフの成否を「R・マキロイ目線」で考える【舩越園子コラム】

“嬉しい矛盾”に、マキロイはどう反応した?(撮影:GettyImages)

暦は9月に変わったばかりだが、米ツアーはすでに2019年シーズンの全日程を終了し、来週からは2019−2020年シーズンが始まろうとしている。


昨季の米ツアーは新ルールが施行され、新日程が導入され、フェデックスカップにも新システムが採用されるなど、「チェンジ」に溢れていた。シーズンエンドのプレーオフ・シリーズは従来の4試合から3試合に減り、最終戦のツアー選手権はランク1位が10アンダー、2位が8アンダーという具合にスコアに差を設けてスタートする競技方法が初めて採用された。年間王者に贈られるボーナスは、これまでの10ミリオンから15ミリオン(約16億円)に跳ね上がり、その行方が注目された。

新しいことずくめだった昨季のフェデックスカップとプレーオフ・シリーズ。それは果たして成功だったと言えるのかどうか。

最終戦のツアー選手権をランク5位で迎えたマキロイは、大会開幕前、ユニークな指摘をしていた。

「マスターズで勝ったら、いくらもらえるかなんて誰も意識していない。(米ツアーが)フェデックスカップをレガシーにしたいなら、『お金』より『勝つこと』をプレステージにしなければならない」

そう言っていたマキロイ自身がツアー選手権を制し、年間王者に輝いたことは、「運命の皮肉」、いやいや「運命の愉快」と呼びたくなる展開だった。

「お金」より「勝つこと」がプレステージだと強調していたこともあり、マキロイは史上最高額の15ミリオンのボーナスを獲得した喜びをストレートに表現できないという「うれしいジレンマ」に陥った。米メディアから「何が一番誇らしい?」と問われると、「ビッグボーナス」と答えるわけにはいかず、こんな返答をした。

「世界ナンバー1のブルックス・ケプカと最終組で回り、66を出して勝てたことが何より誇らしい」

そして、プレーオフ・シリーズとツアー選手権に関しては「正当な評価だ」と頷いた。

「モノゴトにはチェンジが必要だし、最初はいろいろあるものだ。レギュラーシーズンを終えた時点でのランク1位(ケプカ)と2位(マキロイ)が、プレーオフを終えた今、やっぱり1位(マキロイ)と2位(ケプカ)にいるのだから、シーズンの努力と成果が正当に評価されたと言えるのでは?」

きわめて「お手本的」な返答だったが、だんだんマキロイらしい本音が漏れ始めた。「15ミリオンは全然気にならなかった?」と何度も問われると「そりゃあ、やっぱり気になったし、ビッグマネーを意識して心が揺れるのは簡単だよ」と苦笑した。

そして、その足でスイスへ渡り、欧州ツアーのオメガ・ヨーロピアン・マスターズに出場したマキロイは、米国では口にしなかったさらなる本音を欧州メディアに披露した。

「メジャー大会の開催時期が今年のように過密だと、人々は4月から7月までしかゴルフに関心を持たなくなる。テニスのシーズンが1月から9月まで続いているように、ゴルフのメジャー大会も間隔をあけたほうがいい」

確かに、それは一理ある。だが、かつてはダラダラと11月まで続いていたシーズンを徐々に短縮化し、思い切り短期集中型の過密日程に変えたのが昨季だったわけで、これを再び長期継続型に戻すことは当面は考えにくい。それにメジャー4大会の時期や開催場所は、すでに5年以上先まで決め込まれており、それらを動かすのは至難の業だ。となると、昨季同様の「毎月がメジャー大会」という日程が少なくとも5年ほど先まで続いていく。

フェデックスカップは2007年の創設以来、ずっと改良が続いているが、それは理想の追求であり、それこそが歴史の歩みと考えるべきであり、最終形というものは「無い」のだと思う。

一番肝心なのは、メジャーであれ、何であれ、選手たちが「素晴らしい戦いぶり」を披露できるかどうかだ。米ツアーで年間3勝を挙げ、2度目の年間王者に輝き、総額23ミリオンを獲得した昨季が、マキロイにとって最高のシーズンになったことは疑いようもない。メジャー優勝は無くてもベストパフォーマンスを披露したマキロイの戦いぶりを否定するファンは誰一人いない。ケプカ然りである。

そんなふうに実力ある選手が存分に力を発揮できる土俵がきちんと用意されていたという意味で、昨季のフェデックスカップとプレーオフ・シリーズは、とりあえず成功だったと言えるのではないだろうか。

文 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

関連記事(外部サイト)