“シブコ現象”を最大限に生かすには【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

“シブコ現象”を最大限に生かすには【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

大勢のファンが渋野の1打に注目(撮影:上山敬太)

「ゴルフとテニスの記事は、探しにいかないと見つからないから」。ごく最近、知人に言われた言葉だ。

渋野日向子についていろいろ尋ねられ、その後、大坂なおみについて話した後のこと。ゴルフとテニスが好きで、自分でもプレーする彼女は、もっといろいろ知りたいと思っているのに、ネット上に出てくる記事が足りない、と言っていた。


渋野と大坂。いずれもメジャー(グランドスラム)で優勝し、一大ブームを巻き起こしている2人のおかげで、どちらのニュースもこれまでよりは大きく取り扱われていると感じていた矢先のことだったのでハッとした。そう。興味のある人が探しにいかないと出てこない。それが現状なのだ。

話をゴルフだけに限って詳しく分析してみよう。渋野の出現で、これまで以上に興味を持ってツアーのテレビ中継を見たり、渋野についての記事を読もうとしている前出の知人のような人はかなり増えている。これまでゴルフにあまり興味がなくても、ワイドショーレベル以上に、触れている人は少なくない。その人たちをツアー側もプロ自身もメディアも取り込めていないのだ。

先週も書いたように、ツアーは相変わらず発表が下手で、メディアを上手に使えない。ファンにSNSで広めてもらうという観点も今ひとつだ。ツアーのオフィシャルサイトでは、渋野の記事はさすがに増えているが、相変わらず、最終日の試合速報は、テレビ中継がディレイだとそれに合わせて止まってしまうマヌケさ加減。一体いつの時代の感覚なのだろうか。ゴルフに興味を持ったばかりの人は、さぞ驚くだろう。

ツアーは全国各地で行われているため、よほど気合の入ったファンでない限り、足を運ぶとすれば近くで開催される試合だろう。「ツアーはないからステップアップでもいいや」と、とにかくゴルフ場に行こうという人もいるのに、こちらはギャラリーが入れない大会もある体たらく。会場までの交通機関や駐車場の手配、トイレや売店などの準備と、ギャラリーを入れればそれなりに経費がかかる。それでも、下部ツアーとはいえプロの試合である以上、見てもらってナンボ。それを最優先に考えるべきではないのか。「試合を見てみたいけどどうしたらいいのかわからない」という声が多いのは、アナウンスが足りないから。せっかくのファン予備軍をシャットアウトしてしまっている。

テレビ中継は相変わらず渋野への偏りがひどい。そうしていれば視聴率が上がるという安易な考えなのかもしれないが、これまでの固定ファンが離れてしまう可能性も秘めている。「試合の結果がチョロっとしか出なくてつまらない」という声がたくさん出てきているのが聞こえないのだろうか。

テレビ以外の媒体はどうか。夕刊紙や雑誌ならまだしも、朝刊もとにかく渋野ばかりを追いかける。スター選手を扱いたい気持ちはわかるが、それが横一線では、すぐに飽きられる。自らの首を絞めることになっているのがわからないのだろうか。

プロたちはどうだろう。渋野自身は、急に注目の的となった自分に戸惑いつつも、よくやっていると思う。インスタグラムのフォロワーも着実に増えている。問題は周囲の“大人“たち。ここには、渋野のごく身近な人間だけでなく、ツアー関係者も含まれる。これまでとは全く違う事態の中で、渋野を守り、かつ自由にさせておくことができるのか。決して勘違いさせたり、引きこもったりしないようにするという大きなミッションを背負っている。

渋野以外のプロはどうか。いいプレーをすること、ファンを大切にすることが、プロアスリートの至上命題だ。いいプレーをすることについては、誰もが全力を注いでいる。しかし、ファンに対してはどうだろう。ゴルフをよく知るファンや、心から応援してくれるファンに対してだけでなく、それ以外の“ファン初心者”に対してきちんと対応できているか。新しいファンを開拓するためのアピールはできているか。メディアへの対応、自分からの発信なども、今ではプロの仕事の一つといえる。この当たりを改めて考えてみるのも一つの手だ。

情報が欲しいと思っているファンに「自分で探しにいかないと(情報が)ない」と、言われているようでは、まだまだアピールが足りない。そのことを誰もが、改めてもう一度、考えてみる必要がある。“シブコ現象”が起きている今のチャンスを生かせないようでは、先が思いやられる。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

関連記事(外部サイト)