アイアンわずか3本! UTで“置き換える” 表純子のクラブ選びから学ぶべきことは?【女子プロから学ぶセッティングのスパイス】

アイアンわずか3本! UTで“置き換える” 表純子のクラブ選びから学ぶべきことは?【女子プロから学ぶセッティングのスパイス】

こんなクラブセッティングだっていいんです!(撮影:米山聡明)

アマチュアゴルファーは女子プロのスイングを参考にした方が良いと言われている。なぜなら女子プロの平均的なヘッドスピードは、一般的な男子アマの平均値と同じ40m/s程度だからだ。


だが、本当に参考できるのはスイングだけだろうか。女子プロたちも我々アマチュアと同じように「球が上がらない」、「スピンがかかりすぎてしまう」といった多種多様の悩みを抱えていて、それを矯正しているのは、スイングだけでなく14本のクラブたちなのである。

そこで、女子プロたちがクラブセッティングにしている、ちょっとした工夫=スパイスをピックアップ。クラブ選びの参考にしてきたい。今回は表純子のアイアンをユーティリティ(以下UT)に置き換えて使用するという選択について。

練習に打ち込んでいる表のキャディバックをのぞくと、一目で“ある異変”に気づく。それがヘッドカバーの多さだ。1、3、5番に加えて5HL(21°)とウッドだけで4本、さらにUTも4〜7番と4本が携えられている。アイアンは8、9、PWのわずか3本。極端ともいえなくもないセッティングを駆使し、“鉄人”はツアーを戦ってきた。

もともと今シーズン開幕時には、アイアンは7番からの4本だったが、「最近7UTを試したら、打ちやすいうえに、球が上がって止まるのですぐに入れました」と、2カ月ほど前に入れ替えを敢行した。「もともと(テーラーメイドに)頼んでいた7番ウッドの完成を待っていたんですけど、その前に『7番UTがアメリカから届いたけど試してみます?』って言われて。これを打つのは私しかいない、という話が出たみたいです(笑)」。“副産物”ながら自らに合うクラブを入手した。

このUTが大部分を占めるセッティングは、なにも最近始まったわけではない。6番UTを使用することは「もう何十年も続けています」というものだ。「そのままだと飛びすぎてしまうので、シャフトはスチールで重くして(※6、7番UTはスチールシャフト)、アイアン感覚で打てるように普通のUTよりは短くして使っています」。あくまでも“アイアンとして”、これらのUT使用を続けている。


「昔からUTのほうが好き」という表は、「UTが好きな人で、球が止まらない人にはいいかもしれないですね。球を上げやすいし、ラフからでも打ちやすいですし」とこのセッティングのメリットを話す。「他の選手に7番UTを打たせると、『これめっちゃいい!』って言いますけど、さすがにね(入れはしない)…、恥ずかしいんでしょうね(笑)」というクラブ構成をプロコーチ&クラブフィッターの筒康博氏はどう見るか。

まずこのセッティングの特徴を語る前に、UTの長所を改めて知っておきたい。筒氏は、「現代のUTの長所を挙げるなら中空構造によるミスヒットの寛容性と、ヘッド重量が軽いことによるクラブスペックの自由度が挙げられると思います」と説明する。前回、吉田弓美子の回でも触れたが、ショートウッドやロングアイアンなどの長い距離を打つセカンドショットクラブを複合素材や形状の工夫でいかにやさしく打てるようにするか考えられたクラブで、扱いやすさが前提にある。

そうは言っても、表が投入した7番UTについては「飛び系アイアンが全盛の中でのクラブセッティングとしては、ロフト31度のUTは異質といえます。そもそも7番UTまであるモデルが少ないですし、アイアンの性能より優れている点を明確に実感しているゴルファーは非常に少ないはず。7番アイアンくらいはきちんと打ちたいと多くのゴルファーは思っているでしょうし、今回の表選手のように、精度を高めスコアメイクするために積極的に投入するケースは珍しいと思います」と、筒氏も驚きを口にする。

しかし、すぐにこんなメリットも提示した。「アイアンに比べUTはクラブ重量が軽量化しやすいため、ヘッドスピードアップ効果と、インパクト時の接地ストレスの軽減があります。大きくて安心できる見た目の割に、ラフでも滑るようにソールが抜けて振り切れるのでパワーがなくても安定した飛距離を作りやすいといえます」。これが表の言う、『ラフからの打ちやすさ』につながる部分といえる。

さらに筒氏は「逆説的な話になりますが」と前置き、こんな利点も口にした。

「7番UTを使用することで、ナチュラルに『手打ち』や『過度な入射角』でのインパクト改善につながる可能性もあります。ロフトの多いショートウッドやUTは、不安定な角度でインパクトをしてしまうと必要以上にスピンが増えてしまったり、フェースのバルジやロール(フェース面の丸み)がバラバラな打点を助長してしまうデメリットがある。腕の力だけに頼らず、体の回転で払うようにスイングしながら打点の精度をアップすることを覚えるという点では、7番UTが“先生”になってくれるかもしれません」。このクラブをうまく扱えているという事が、理想的なスイングができている証拠になる、というわけだ。

では、このセッティングは我々アマチュアゴルファーにとって有効策になるのだろうか?

表のように、タフなコンディションのグリーンにボールを止める目的でパワーを補いながらセカンドを打ちたいと考えるのは「理解できます」と筒氏。だが、「ヘッドスピードが同じくらいだからとマネしてもいいか?といわれると、必ずしもそうではない」と注意点も話す。その理由はこうだ。

「多くのアマチュアゴルファーの皆さんは、比較的、腕力に頼った出力でクラブを振っているケースが多く、安定した打点になっていない。浅い入射角でなおかつ安定したインパクトを再現できる表選手だからこそウッドライクなクラブの本数が増えていった背景が伺えます」

当然ながら、技術力に裏打ちされたセッティングというわけだ。ただ、「7番アイアンを抜いて7番UTを入れるなど、このセッティング自体は、なかなか一般ゴルファーの皆さんがすぐにマネしたくなる話ではありませんが『目的にあったクラブをバッグに入れる』、『自分仕様を追求する』という点では、共感して欲しいなと思います」と、自由度が高いクラブ選びを楽しむ心をぜひ学んで欲しいと筒氏は願った。

「特に女性ゴルファーの皆さんは、クラブ選びが分からない方も多いと思いますし、ショップでのクラブフィッティングも敷居が高い現実がまだまだあります。もし周りに女性ゴルファーがいるなら、難しい3番ウッドや5番アイアンを武器にするより、7番ウッドや7番UTをバッグに入れて使いこなすことをアドバイスして欲しいですね」

UTを使いこなすことで、正しいスイングを学ぶことにもつながるというのは、先ほど説明があったところ。何よりも、自分に合ったセッティングを模索する楽しさ、それを再確認するうえでも、表のキャディバッグの中身は大いに参考になる。

解説・筒康博(つつ・やすひろ)/プロコーチ・フィッター・クラフトマンとして8万人以上のアドバイス経験を生かし、現在は最先端ギア研究所『PCMラボ』総合コーチ、インドアゴルフレンジKzヘッドティーチャーを務める。ALBA本誌ギア総研をはじめ様々なメディアでも活躍している。

【表純子・セッティング】
1W:テーラーメイド Mグローレ(9.5度)
(三菱ケミカル ディアマナRF50/SR)
3W:テーラーメイド M6(16.5度)
5W:テーラーメイド M4(18度)
5W(HL):テーラーメイド M4(21度)
4U:テーラーメイド M6レスキュー(22度)※カーボンシャフト
5U:テーラーメイド M6レスキュー(25度)※カーボンシャフト
6U:テーラーメイド M6レスキュー(28度)※スチールシャフト
7U:テーラーメイド M6レスキュー(31度)※スチールシャフト
8〜PW:テーラーメイド M5
W:テーラーメイド ミルドグラインドウェッジ(52度、58度)
PT:テーラーメイド スパイダーX

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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