練習場で見た“佐伯塾”の光景 「私を踏み台に」佐伯三貴の若手選手への思い

練習場で見た“佐伯塾”の光景 「私を踏み台に」佐伯三貴の若手選手への思い

菅沼菜々に自ら手本になって教える佐伯三貴(撮影:ALBA)

<ゴルフ5レディス 事前情報◇5日◇GOLF5カントリーサニーフィールド(茨城県)◇6380ヤード・パー72>

コースではプロアマが行われていた昼過ぎのGOLF5カントリーサニーフィールド。その時間にショット練習場を眺めていると、ツアー通算7勝の佐伯三貴が、若手選手に指導を行う光景を目にした。ポイントを、時には自らが実際にクラブを振りながら伝えている。


黄金世代の山路晶、田中瑞希、その1つ下の世代にあたる菅沼菜々の口からはよく、佐伯とともに練習ラウンドをし、アドバイスを受けているということは耳にしてきた。何も今日だけのことではない。

もともと菅沼は同じコーチ(坂詰和久氏)に師事していることがきっかけで、教えるように。山路は父・哲生氏が東北福祉大硬式野球部総監督を務めており、佐伯が同大出身でもあったことから“面倒を見る”ことになったという。そこに田中がキャディからの紹介もあって加わり、“佐伯塾”が結成された。

実際にどのようなことが行われているのかを佐伯に聞いてみた。例えば、この日の練習場では菅沼に対し、「スイング時にフェースがかぶって上がるクセがあるので、それを指摘しました。みんなそれぞれポイントは違うけれど、あの子(菅沼)の場合はすぐにパッと手が跳ね上がってしまって手上げになっているから、体の捻転を使うこと」を教えた。菅沼に話を聞いてみると、「教えてもらったことをやったら、すぐに治って…『うわっ、治った!』って思いました。あとは練習して体に染み込ませたいです」とその即効性に驚きの声をあげた。

3人の“塾生”が声をそろえて「優しい」と話す佐伯だが、本人からは「怒りますよ」という言葉も。「時々、遠足みたいな練ランをするので(笑)。『そんなんだったら他に行ってもいいよ』って。こういうことで、どんどん大人になっていくんでしょうから」。そう言って、目を細めた。

田中は「私はメモを取らないこととかを怒られます(笑)。実際に教わった通りにやってみて、『これいい!』と思っても、すぐ忘れちゃうみたいなことが多くて…『メモを取りなさい』って言われます」と、その内容について話す。だけど、「私たちのことを思って言ってくれているのが伝わってきます」と、その真意はしっかりと感じている。

若手を教えることについて佐伯は、自身が3人と同じくらいの年代だった時と重ねながら、こう話す。「今はたくさんの世代が活躍してますけど、私達の時代は、周りは先輩ばかり。『見て覚えなさい』みたいな雰囲気もありましたけど、今の子は聞いたりもできないらしくて。そういう世代なんでしょうね」。この“時代の変化”を感じ、教えることをいとわない。

だが、すべてを教えないのも“佐伯流”だ。「どこがいいのか、あるいは悪いのか、ミスの原因が分かっていれば、ある程度修正できるはず。“どんな動き”をしたら、“どういう球が出る”のか。そして、そのためには、“どうするべきか”を教えています。だけど、やり方を教えてしまうと、それしかやらなくなってしまうので、ヒントを与えて考えさせないと」。試合の時、最後に判断をするのは、もちろんこの3人。それもあって、最後は自らで解決できるような道を示すだけだ。

「聞きやすい人がそばにいるのは心強いですね」(山路)、「深いラフの打ち方とか、技術だけでなく経験も伝えてくれるのはありがたいです」(菅沼)、「LINEでもすぐに教えてくださるし、動画も見て指摘してくれる。人見知りの私にとっては、話せる人も増えるのでツアー会場自体が楽しくなりました」(田中)。それぞれが、それぞれに“効果”を感じ、成長の糧にしている。

最後に、佐伯に選手が選手を教えることの難しさを聞いてみた。すると、「それで勝ってくれたらうれしいですし、踏み台にしてください(笑)」という答えが返ってきた。先輩から後輩へ受け継がれたものが、また次の世代へと伝わっていく。女子ツアー会場で、そんな一幕を見た気がした。(文・間宮輝憲)

<ゴルフ情報ALBA.Net>