シブコ・フィーバー、“便乗”のやり過ぎ【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

シブコ・フィーバー、“便乗”のやり過ぎ【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

ニューヒロインの渋野日向子を守るのもLPGAの仕事ではないだろうか(撮影:岩本芳弘)

シブコ・フィーバーで始まり、畑岡奈紗の圧勝で幕を閉じた「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」。大ギャラリーに見守られ、例年以上の盛り上がりを見せた。その盛り上がりが果たして多くの人に伝わっているだろうか。もちろん、ゴルフ業界、既存のゴルフファンの人たちは注目しただろう。けれども、それ以上の人たちを巻き込み、興味を持ってもらわないことには、広がりは期待できない。


東京五輪へのカウントダウンが始まり、各競技では選手達のし烈な代表争いが繰り広げられている。日本女子プロ選手権の最終日は、マラソンの代表選考会、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)とも重なった。日本でのラグビーのワールドカップ開幕も迫っている。そんな中で、女子ゴルフの魅力にどれだけの人が興味を持ってくれただろうか。

スポーツに限ったことではないが、長い目で見た目標をきちんと定めて周知徹底し、そこに至るロードマップを描いて地に足をつけて進むことは非常に大切だ。途中で起きた予測不可能な出来事に対しては、それがいいことであれ悪いことであれ柔軟に対応する。それでいて決して振り回されない。流れにはうまく乗りつつ、上っ面だけのおいしい話には慎重に対処。正当な批判にはきちんと耳を傾け、都合のいいことばかりでなく、悪いことについても情報を公開する。

これを、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)に当てはめてみよう。まず、長い目での目標とロードアップのところで大きくつまずいてしまう。会員内でも目標が共有されておらず、ともすれば会員たちは置いてきぼりになりがち。世間への公表もできているとは言いがたい。ロードマップもないから、外部への説明も不十分だ。

今年は、渋野日向子の「全英AIG女子オープン」といういい意味での出来事があった。メディア、ファンの注目が跳ね上がったが、LPGA内部もそれ以上に浮足立っているように見える。地に足がついていないのだ。それをはっきりと証明したのが、日本女子プロ選手権開幕2日前に、渋野に全英優勝の記念品を贈呈したことだ。

1977年の樋口久子以来、42年ぶりのメジャー優勝者を讃えるのは構わない。むしろ讃えるべきだ。しかし、なぜ、このタイミングでなければいけないのか?答えは簡単。LPGA主催大会だからスポンサーへの気兼ねがいらないし、PRになるからだ。自分たちの都合でしかない。

何のためにシーズン終了後にLPGAアワードをやっているのか。そこで特別賞のような形で贈呈するのが自然なはずだ。シーズン途中、しかもメジャーの2日前の贈呈式では、メディアの扱いも大して大きくない。大会2日前、前夜祭の会場とはいえ、ほかの選手より早めに呼びつけて贈呈式を行い、渋野をさらに忙しくさせているという事実もある。スポンサーがするのなら理解できるが、LPGAがシブコ・フィーバーに便乗し、このタイミングで本人を利用してどうするのか。しかもPR効果は最大とはいえない。

ツアーにとっての財産は会員と、それを支えるファンしかいない。会員とファンあってのツアーであり、それをさらにサポートしているのがスポンサーやメディアという図式だ。そこで会員である選手を大切に守り、育てていくことこそがLPGAの重大使命でもある。トッププレーヤーには、プレーするだけではない“仕事”がある。ツアーのPRにつながるそれらの仕事は大切だが、タイミングというものがあるはずだ。

人気者にワッと群がって一瞬盛り上がるが、その後はあっさり忘れたようになるのが日本のメディアの傾向だ。独自の目を持たず、一斉に同じようなことを取り上げたがるという部分もある。LPGA側が、事実としてその傾向を知っておく必要はあるが、それに振り回されるのではなく、しっかり自分たちのポリシーを持って動かなくてはならない。

どんなビジョンにどの道をどうやって進んでいくのか。小林浩美会長を中心にした理事会は、今だからこそ改めてそのことを互いに確認する必要があるだろう。きちんとしたディスカッションをして。(文・小川淳子)

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