「末恐ろしい逸材」 トッププロも舌を巻いた古江彩佳の“すごみ”はどこにある?【辻にぃ見聞】

「末恐ろしい逸材」 トッププロも舌を巻いた古江彩佳の“すごみ”はどこにある?【辻にぃ見聞】

末恐ろしい19歳・古江彩佳の強さのヒミツを辻村氏が分析(撮影:佐々木啓)

国内女子ツアー史上7人目となるアマチュア優勝者が誕生した、先週の「富士通レディース」。その座を射止めたのが、その時はまだ最終プロテストを控えていた古江彩佳だった。3日間で喫したボギーはわずかに1つ。まさに圧巻のプレーを見せた19歳の強さのヒミツはどこにあるのか? 上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が解説する。


■優勝は不思議なことではない すべてがハイレベルな19歳

今年の春に兵庫県の滝川第二高を卒業し、プロテスト合格を目指し地元のゴルフ場で研修生を務めながら腕を磨いてきた古江。今年は富士通前までにレギュラーツアー10試合に出場し、「リゾートトラスト レディス」で3位タイに入るなど、たびたび上位をにぎわせてきた。そのプレーを会場で見てきた辻村氏は、開口一番「末恐ろしい逸材ですね」と率直な感想を述べた。

初日に古江と一緒に回った上田はラウンド後、辻村氏に「あの子、うまい。ショットもパットも、すごい」とうなったという。辻村氏も、そんな古江のことを「ほんとに穴がない選手。すべてにおいてレベルが高い」と評す。そして、「アマチュア優勝は本当にすごいことですが、では勝ったことが不思議か? と聞かれると、そうは思いませんね。それだけの力を持っているのは、これまで見てきて感じていた部分ですから」とスッと事態をのみ込んだ。

首位の三ヶ島かなと1打差の2位でスタートした最終日のプレーを振り返ると、さらにその印象は強まるばかり。「グリーンはキレイで、最終日は前日降った雨の影響もあってボールが止まりやすいという好条件ではあった。でも、ピンを振っているホールも多く、そのなかでしっかりと攻めながら、最後の54ホール目までボギーがなかったというのは見事でしたね」。そんな“オールマイティー”な古江のプレーのなかで、辻村氏が特に目を奪われたのが、その類まれなるショット力だった。

■理にかなった古江のスイングを徹底解説

他のプロや、同じアマチュアの選手なども口々に「本当に曲がらない」と評する古江のショット。3日間でパー3を除く42ホール中34回フェアウェイをヒットし、パーオンも54ホール中43を記録するなど、データを見てもそれはうかがえる。だが、その数字以上に辻村氏の興味をひいたのが、やはり技術面だ。

「クラブをシャープに振って、まったく力みが見られないスイングです。ダウンスイングが外から入ってくることもなく、常にクラブがインサイドから出てくる。頭も上下左右の動きが少なく、キレイな回転運動のもとボールを打てていますね。だからこそフィニッシュもピシッと決まってきます」。辻村氏は、このように一連の動作を賞賛した。そして、このスイングが、「打ち出し角度も高く、飛んで止まるドローボール」を生み出していると続ける。

さらに古江のスイングのいい点を細かくひも解いてもらうと、こんなポイントが挙がった。それが、『美しいスイングプレーン』と、『フェースに長くボールが乗っている』こと。

「後方から見ると、スイングプレーンが正確で、再現性が高いですね。ここが外から入ってきてしまうと、インパクトの時に手で合わせたり、こねたりする原因にもなります。それに加えて、フェースにボールが乗っている時間が長いため、打点がよく、コントロールのいいショットが打てます。ドローヒッターだけど右にふかす球が少なく、しっかりとボールが内側に戻ってくるのは、こういう所に理由を見出せますね」

■小柄ながら飛距離が出る理由は?

また辻村氏が驚いたのが、飛距離。身長153cmと小柄な古江だが、3日間平均で240.833ヤードのドライビングディスタンスをマークした。これも、回転運動が生み出すキレイなスイングプレーンが大きく作用していると辻村氏は説明する。“飛んで曲がらないティショット”と、“ビタビタとピンに絡めるショット”を駆使し優勝を手繰り寄せた若きショットメーカーという評価が、今後さらに確立されていきそうだ。

また、古江が幼少期からゴルフとともに水泳をやってきたという話を聞いた辻村氏は、納得という様子で深くうなずいた。「水泳で鍛えられた背筋が、飛距離面で体が小さいというハンデを補っているのでしょう。飛距離を考えるうえで、背筋は重要な要素。それが、あのスイング時の体の回転スピードを生み出している要因ともいえそうですね」。

「全英AIG女子オープン」を制した渋野日向子も、ソフトボールとの二足のわらじを履いていたのは有名な話。辻村氏は「今後は、他のスポーツをゴルフに生かすという流れが、さらに強まってくるかもしれませんね。ゴルフだけでは鍛えられない筋肉を、別の競技が養ってくれることも考えられる。もうゴルフだけをやっていた時代とは違うんでしょう。これからのジュニア世代も、別のスポーツに取り組みながらゴルフと向き合っていくのも面白いと思いますね」という考えを示した。

この優勝によって古江は、テストを受けずしてプロ転向する権利を得た。「礼儀もいいですし、スポーツを通じて人間性が高いという印象も受ける。プロになっても、ファンに愛される選手になるのではないでしょうか」。“末恐ろしい”若者は、目標と話す「賞金女王」に向け、ここからどのような成長曲線を描いていくのだろうか?

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。著書には『ゴルフ トッププロが信頼する! カリスマコーチが教える本当に強くなる基本』(河出書房新社)がある。

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