賞金額は最高じゃなくてもいい!? 公式戦ってそもそもどんな大会?【記者の目】

賞金額は最高じゃなくてもいい!? 公式戦ってそもそもどんな大会?【記者の目】

ツアー最高タイとなる3600万円を手にした柏原明日架(撮影:上山敬太)

賞金総額2億円、優勝賞金3600万円。「アース・モンダミンカップ」、「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」と並ぶツアー最高賞金額の大会「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」の前夜祭ではこんな発言が飛び出した。「来年はさらに賞金を増額します」。リップサービスなのか、本当に増額するかはさておき、もしそうなればツアー最高賞金額をさらに更新することになる。


本大会はいわゆる公式戦ではないが、すでに女子プロ選手権を除く3つの競技よりも賞金額は高い。今季増額した「日本女子オープン」で賞金総額1億5000万円(優勝賞金3000万円)、「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」と「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」は賞金総額1億2000万円である。

そもそも公式戦と通常の試合(公認競技)との違いは何なのか。日本女子プロゴルフ協会(以下、LPGA)の規定では公式競技について以下のように記載されている。

1.LPGA公式競技(以下「公式競技」という。)とは、次の競技をいう。
日本女子プロゴルフ選手権大会
LPGAツアーチャンピオンシップ
LPGAウィメンズチャンピオンシップ(サロンパスカップ)
日本女子オープンゴルフ選手権

2.前項第1号ないし第3号に掲げられた競技の実施に関する事項は、トーナメント事業部が別途定めるものとし、前項第4号に掲げられた競技の実施に関する事項は、公益財団法人日本ゴルフ協会が別途定めるところによるものとする。

これだけしかないのだ。LPGAの広報に確認したが、「規定に書かれている以上のことはありません」というコメントだった。これでは公式戦がどのようなものであるか実態がわかりにくい。他の大会に対して、賞金が公式戦を上回らないように働きかけているようだが、以前は公式戦よりも賞金が高い時代もあり、特に規定にはない。優勝者には3年間の出場権(通常は1年)が付与されるが、この項目では明記されていない。

なお、LPGAによれば、公式競技となりたい場合、2008年に公式競技に昇格した「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」の例をとると、大会側が協会に昇格を打診、承認された場合などのケースで公式競技となることができるようだ。

日本以外のツアーを見ると米国ツアーの最高額の大会はメジャーの「全米女子オープン」(550万ドル)。次がメジャーではない最終戦「CMEグループ・ツアー選手権」(500万ドル)。韓国ツアーは昨年まで米女子ツアーで、今年から韓国ツアーとなった「ハナ金融グループ選手権」(15億ウォン)、次点がメジャーの「ハンファクラシック」(14億ウォン)。ただし、韓国開催の米女子ツアー「BMW女子選手権」(200万ドル)を含めて、レートにもよるが、隣国はすでに公式戦よりも平場の試合のほうが高い大会があるという状況だ。

また、日本の男子ツアーに目を向ければ一番高額なのは、今年から始まった米ツアーとの共催の「ZOZO CHAMPIONSHIP」。各ツアーでメジャーが最高額とは限らない状況となってきた。

公認競技の賞金額がメジャーを上回る。そうなると勝ちたいのは公式戦なのか、高額賞金なのか。2008年の「日本女子オープン」など公式戦2勝の李知姫(韓国)は「もちろん、どちらも勝ちたいです」と前置きしたうえで、「公式戦には名誉がすごくありますね。選手としては公式戦を取りたいという気持ちが一番あるように思います。名誉も欲しいし、公式戦はセッティングも難しいし、選手権とオープンはコースが毎年違う。メンタル的にも1番じゃないと勝てないと思います。だから、みんなが獲りたいタイトルなのだと思います」。金額以外の部分、ナンバーワンの称号は選手としてやはり欲しいものだという。

一方、「増額するとなると賞金額は公式戦より高くなっちゃいますね。それを超えるとなると…、じゃあ、この大会が公式戦になったほうがいいかもしれないですね」と提案するのは2010年の「日本女子プロ選手権大会コニカミノルタ杯」優勝者の藤田さいき(当時は藤田幸希表記)だ。

藤田にとって公式戦とは「特別な大会」という位置づけだったという。「歴史と重みがあって通常のトーナメントとは全然違う試合でした。セッティングも難しかった。ラフも長いし、フェアウェイも狭い。グリーンも硬くて速い」。年に4度しかないスペシャルな場所だった。

それが最近は変化が起こっていると続ける。「最近はグリーンも止まるようになっていますし、スコアが出るようなセッティングになってきた。ある意味では特別感が減っていますよね」とあくまで39分の1という試合に近くなってきたという。選手側に変化があることも要因だ「今の選手、特に若手はどの大会に対しても気持ちは一緒なんだと思います。公式戦に合わせて調整するとかもあまり聞かないですよね。なぜなら全試合に全力だからです」。それならば賞金額が最高の大会を公式戦に昇格させる、という選択肢もありなのかもしれない。

もしくは別のかたちで公式戦の価値を創造するかだ。そのうちの1つが来年から導入される予定のメルセデス・ランキングの順位によるシード化だろう。これまで3年間の出場権が付与される同1位以外の選手に恩恵が少なく、深く浸透しているとはいえない実情もあったメルセデス・ランキングだが、公式戦での成績ポイントは2倍(それ以外の4日間競技の成績ポイントは1.5倍)と優遇されている。これがシードに直結するようになることで、「メンタル的にも1番じゃないと勝てない」という戦いの重要性がより出てくる。

まだ来年時点では賞金ランキングと併用となる予定だが、米国男子ツアーではすでに賞金ランキングはもはや1つのスタッツでしかなく、各試合の順位によって与えられるフェデックスカップポイントによってシードだけでなくプレーオフシリーズへの出場が決められている。これを参考にして、例えば日本で行われる唯一の米国女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」や最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」への出場資格をメルセデス・ランキングの順位にすれば、より公式戦に“意味”が出てくるのではないか。

もちろん現時点で知姫が言うように、公式戦には賞金額以外にも『日本一の女子プロを決める』や『日本一の女子ゴルファー決定戦』という大きな格や名誉がある。だからこそ、歴史や伝統だけに甘えずに大会として実益の部分も同時に高めなければいけないと思う。それが賞金である必要は全くない。(文・秋田義和)

<ゴルフ情報ALBA.Net>