「センターでいい」はもう死語!? 女子ツアーで大逆転勝利が増えた理由【辻にぃ見聞】

「センターでいい」はもう死語!? 女子ツアーで大逆転勝利が増えた理由【辻にぃ見聞】

攻撃的なスタイルが2勝目につながった!(撮影:上山敬太)

「アース・モンダミンカップ」、「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」と並ぶ賞金総額2億円、優勝賞金3600万円というツアー最高賞金額の大会「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」は柏原明日架の6打差逆転で幕を閉じた。


6打差というと大きな数字に聞こえるが、今シーズンでは3番目である(「デサントレディース」で渋野日向子が8打差、「フジサンケイレディス」で申ジエが7打差をそれぞれ逆転)。なぜ、今年はこれほどまでの逆転劇が生まれているのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

■怖々していたのはもはや昔 攻撃的になった柏原明日架だから勢いに乗れた
3日目を終えて、柏原は4位タイとはいえ首位とは6打差。ましてや首位に立つのはツアー16勝の名手テレサ・ルー(台湾)。周りからみれば厳しい状況となっていたが、本人は「1ホールでも早く追いつく」と攻めに攻めた。言葉通り、15番のバーディで首位に並ぶと、17番で単独首位に浮上。そのまま逃げ切って今季2勝目を挙げた。

この快進撃に、柏原と同組の小祝さくらのキャディを務めており、間近でプレーを見ていた辻村氏も「初優勝したこともありますが、今までの柏原さんっぽくないプレーでした」と話す。

「昔の柏原さんだったらもっと怖々とやっていたと思います。ですが、今回は楽しそうにプレーしていました。その積極果敢な姿勢は、攻め方にも表れていましたね」

辻村氏が「あれで勢いづいた」というのが9番。ティショットを右のラフに入れると、ラフから上手く出せず約140ヤードほど残った。だが、ここからの3打目をピンの狭い方を攻めてピンに絡めてパーセーブ。「ボギーでいいやと思ったらパーは獲れない状況でした。リスクを負いましたが攻めきりました。だからこそ勢いづいたと思います」。アグレッシブな姿勢が勝機を呼び込んだ。

最後のバーディもお見事だった。「17番は4日間通じて一番難易度が高いホール。“安全に攻めよう”と思ったら絶対にバーディを獲れないピンの位置。右に外したらボギー以上濃厚というホールで右のピンですから。そこをピンの右から調子のいい時に出る軽いドローで狙ってきた。一歩間違えれば大けがですから、さすがとしか言いようがありません」。毎年苦労したというホールで成長を見せつけた。「パターもラインを薄めに読んで、しっかりと打てていました。良く入っていました」と目を細める。

■攻めなければ生き残れない バーディ1つでは流れがこない
攻撃的に変化したのは柏原だけではない。ツアー全体がアグレッシブになっている。だからこそ逆転劇が増えたと辻村氏はいう。

「今は最終日もピンをデッドに攻めていく選手が増えた。なぜそうなったかと言えば、申ジエさんは元より、渋野さんのように若い選手がとても攻撃的だからです。安全パイなプレーをしていればたちまち優勝を逃す、順位が下がってしまうという状況になっています。みんながそうなったことで、最終日もスコアが伸びるから、バーディ1つくらいでは流れがこなくなってしまった。2連続、3連続というのが必要という時代になりました」

攻めていくだけではもちろんダメ。攻めていき、バーディを獲れなければ意味がない。そこにも理由がある。「今の若い子は“攻める準備”ができています。今まで“いいショットを打ちたい”と考える選手が多かったのが、練習の段階から“あのピン位置に対してデッドに攻めるにはどうしたらいいか”と考える選手が増えている。だから本番でも攻めきれる」。試合に臨む段階で思考がすでに変わってきているのだ。

もう1つ、選手に攻めさせるファクターとして辻村氏はギャラリーを挙げる。「今年は昨年までよりもギャラリーが多い。そのなかで誰かがバーディを獲れば大きな歓声が上がります。それをあちこちで聞けば選手は“バーディ合戦が始まっている”と思いますし、歓声の場所によっては誰が獲ったかまで分かりますから」。乗り遅れてはいけない。そうさせる雰囲気は昨年以上だ。

「キャディとの“グリーンセンターでいいよ”という会話が、すでに昔のものになりつつありますね。もちろん、攻めるところ守るところのメリハリは大事なのですが、そう考える選手が減ったということです。最終日まで伸ばしきらなければ勝てない。これはツアーのレベルが上がっている証拠ですよ」。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。著書には『ゴルフ トッププロが信頼する! カリスマコーチが教える本当に強くなる基本』(河出書房新社)がある。

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