団体戦メンバーから外され… 謙虚な気持ちに立ち返り、金谷拓実が松山英樹以来のアマV

団体戦メンバーから外され… 謙虚な気持ちに立ち返り、金谷拓実が松山英樹以来のアマV

金谷拓実が優勝 8年前の松山英樹もここに立っていました(撮影:村上航)

<三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日◇17日◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262ヤード・パー70

「信じられないです。長かった〜! 自分のことで精一杯でしたが、楽しかったです。このままずっとプレーしていてもいいくらい。プロのトーナメントで優勝したアマチュアはたくさん活躍されているし、自分もそこに名前を連ねられてすごくうれしいです」


2011年に今大会を制した東北福祉大の先輩・松山英樹以来のアマチュア優勝を8年ぶりに成し遂げた金谷拓実。1972年のツアー制施行後、倉本昌弘、石川遼、松山英樹に次ぐ史上4人目の偉業を達成した。この優勝によって2年シードを獲得。シード保持期間中にプロ転向をすれば。資格を行使することができる。

昨日は自身、ツアーにおける18ホールの最少スコア「63」をマークし、ツアーにおいて初めて首位に立ったが、最終日の今日は、大会前の賞金ランキング4位で今季「トップ杯東海クラシック」で優勝しているショーン・ノリス(南アフリカ)と、「全米プロ」チャンピオンのY・E・ヤン(韓国)を従えて最終組でのプレーとなった。途中、ノリスとは抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げ、見応えのあるシーソーゲームになる場面も。16番ホールでは金谷が約10メートルのパットを決めてガッツポーズを繰り出すと、ノリスも負けじとほぼ同じ距離とラインのパットを決め、2人は笑顔でグータッチ。互いの健闘をたたえ合う場面も見られた。17番ホールを終え11アンダーで並び18番へ。金谷がティショットで3Wを握り2オンを決め、イーグルチャンスにつける一方、ノリスはグリーン奥にこぼし2オンならず。砲台グリーン下から打ったノリスのパターでのアプローチはナイスタッチだったものの、チップインとはならず、金谷がスライスラインの7メートルのイーグルパットを沈め、優勝を決めた。

「アマチュアの優勝争いとプロの優勝争いでは、やはりレベルが違いますね。ノリス選手が15番でティショットを曲げてもリカバリーでバーディを奪ったり、16番も先に10メートルくらいを入れても、そのあとで入れかえされたりして、すげぇなぁと思っていました」

プロと遜色のないプレーぶりで、途中まではむしろプロたちをリードしていた金谷だったが、彼のゴルフは決して本調子ではなかった。つい先日は、学生の団体戦「信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦」でメンバーを外されるなど、世界アマチュアランク1位の金谷にはショックな出来事もあったのだ。今大会に乗り込んできた時も、「調子があまりよくない」と自信なさげにコメントしていたが、2日目以降は連日60台。トーナメントレコードタイ記録まで樹立した。

「アジアアマ、日本オープンといいプレーができない流れで大学の個人戦、団体戦があったが、全然ダメでした。しかし、団体戦で3オーバーを打っても、どこかに使ってもらえるんだろうという自分の中でおごりがあった。でも監督が自分を外したことで、そういうことにも気づけたし、メンバーで出ることは当たり前ではないこともわかった。すごくいい経験だったと思います」

その後、もう一度謙虚な気持ちでゴルフに向き合い、コツコツと自分のベストを尽くした結果、本来のポテンシャルを発揮できるようになった金谷は、憧れの先輩が成し遂げた「三井住友VISA太平洋マスターズ」をアマチュアで優勝するという大きなご褒美をもらうことができた。アジアアマの連覇ができず、日本オープンではローアマも獲れなかった。また団体戦でメンバーから外され、人には打ち明けられない悔しい思いもあっただろう。だが、その悔しさを胸に秘め、ベストを尽くして戦い抜いたことで、新たなステージへとまた進むことができるはずである。

そんな実直で真面目な金谷も、まだ21歳の大学3年生。”ゲン担ぎ”をすることもあるという。

おととい、びっくりドンキーで「ダブルチーズバーグディッシュ」(びっくりドンキーの裏メニュー)を食べたら、翌日7アンダーを出すことができた。そしてゲンを担ぐタイプの彼は、昨晩もまた同店の同メニューを食べたという。また、東北福祉大ゴルフ部・阿部靖彦監督が見に来るときは調子がいいというが、監督は最終日、コースに現れ、金谷に「優勝しろ」と声をかけた。彼にとってはラッキーづくし。スタート前から、「今日はやれる!」という気持ちがみなぎっていたのかもしれない。

来年はゴルフ部の主将を務めるという金谷。松山英樹のように大学生にしてプロ転向を選ぶ道もあるかもしれないが、今後の進路については周囲の人たちと相談するという。そしていずれは松山先輩と同じ舞台で世界一を目指したいとキッパリ。世界のアマチュア競技でともに戦ってきた同世代の、マシュー・ウルフやコリン・モリカワ(ともに米国)、ビクトル・ホブラン(ノルウェー)らはすでにプロ入りして、ツアー優勝を遂げている者もいる。彼らはPGAツアーのシード選手として活躍しているが、金谷にも十分な実力が備わっていることが今日、証明された。世界への扉が見えた金谷。一歩一歩、焦ることなく自分のペースで世界一を目指して欲しい。(文・大泉英子)

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