下半身の動きから始めるからこその躍動感 渋野日向子は準備段階に“うまさ”あり【辻にぃスイング見聞】

下半身の動きから始めるからこその躍動感 渋野日向子は準備段階に“うまさ”あり【辻にぃスイング見聞】

渋野日向子(撮影:鈴木祥)

賞金ランキングトップ10入りした選手のスイングから強さの要因、そしてアマチュアが参考にすべき部分を探る“Playback LPGATour2019”。第9回は今季、ゴルフ界の話題をさらっていった渋野日向子。攻撃的なゴルフスタイルを生み出す思い切りのいいスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が解説する。


レギュラーツアーのルーキーイヤーで一気に開花した渋野。国内メジャー大会でツアー初優勝を飾ると、2カ月後に2勝目。その1カ月後に「全英AIG女子オープン」で海外メジャー優勝。その後も国内で2勝を挙げてゴルフ界の話題を独占した。

迷いなく振り切る渋野のスイングは、2年前に青木翔コーチと出会ってからより磨きがかかった。体が起き上がるクセがあったものを徹底的に直し、いまとなってはそのクセがうそのように、低重心のスイングになっている。

そんな渋野の下半身安定型スイングの始動は足。「結局、足で上がって足から入ってくるということです。テークバックが足のリズムから入っていきます。そこからクラブが上がってくる。そしてまた切り返し以降が、また足から入ってきてクラブがついてきてダウンスイングに入る」と辻村氏は解説する。

渋野はテックバック時に腹を意識して体でクラブを上げる意識を持つと言うが、これについて辻村氏は、「へそから下を中心に動かす。足と言っても重心、重心が右側に入ってくることによってクラブが上がってきます。テークバックの直前に右の股関節にグッと体重が乗って、そこからすべてがはじまります。腹筋、手元、ヘッドの順に上がって行きます」と説明する。

手元を先に上げてしまうアマチュアは多くいるが、「渋野さんはテークバックでおなかがすでに右を向いているのに、ヘッドはアドレスの位置のまま。腹筋を使いながらクラブを上げるから、ヘッドがいちばん最後に動きます。ということは、クラブがむちのような動きをすることになります。体からいちばん遠い場所にあるヘッドに力が溜まる、これがタメになります」と、躍動感ある渋野のスイングを分析する。

「アドレスでヘッドの後ろに段ボールなどを置くとします。そこからテークバックするためには、腹筋を使わないといけません。手先だけで動かそうとしても、重いものは動きません。渋野さんは、まるでそこに重いものがあるかのようにテークバックしています。右の股関節がしっかりと入って下半身から動いているから、ヘッドに力が溜まるんです」。

そしてそんな渋野のスイングが可能になるのは、「朝の練習にあるのではないか」と辻村氏。「渋野さんは、まず練習場に来ると重いバットで左右のスイングをしっかりと行います。しっかりと足、下半身を使わないと重いバットは振れません。下半身主導のスイングをするための準備が、この練習時からできています」。体の動きを十分に確認することから始める。準備段階から理想のスイングづくりが始まっているという。

そして、下半身主導の動きは球の安定感を生み出す。「スイングが大狂いしない。重心移動の低さ、重心が低い人のスイングというのは、上半身でクラブを振っていません。下半身で常に上げて下ろす。下半身のリズムで打っています」。手でこねたりする動作がないため、大きな曲がりは生まれない。手元で合わせにいくのではなく、下半身を使いながら力を球に伝える。思い切りのいいスイングをすることがいかに大事かが、渋野のスイングから見て取れる。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。著書には『ゴルフ トッププロが信頼する! カリスマコーチが教える本当に強くなる基本』(河出書房新社)がある。

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