「批判の嵐」と「いくつかの朗報」【舩越園子コラム】

「批判の嵐」と「いくつかの朗報」【舩越園子コラム】

今年から採用された新ルール 1月の試合から今平周吾もこの位置でドロップ(撮影:GettyImages)

2019年の米ゴルフ界はタイガー・ウッズの大復活というビッグな出来事があった一方で、あちらこちらで「批判の嵐」が吹き荒れた1年でもあった。


その始まりは、1月1日から施行された新ルールにまつわる批判だった。選手がラインを読む際の「キャディのラインアップ」は新ルールでは禁じられているのだが、それが試合の現場で誤解や混乱を招き、欧州ツアーでは中国人選手のリー・ハオトンが2罰打を科された。

米ツアーでもこのルール違反に数名が問われたが、ジャスティン・トーマスらが猛抗議した結果、最終的にはこのルールの解釈や適用の仕方が見直される異例の処置が取られた。

膝の高さからのドロップが「格好悪い」という批判の声がリッキー・ファウラーなどトッププレーヤーたちから上がり、トーマスがUSGA(全米ゴルフ協会)に抗議して、両者の言い争いがSNS上で公開されるなど、春先の米ゴルフ界は混沌としていた。

それに加えて浮上したのが、マット・クーチャーのキャディへの謝礼に関する批判だった。2018年のマヤコバ・ゴルフ・クラシックに出場した際、クーチャーは現地でメキシコ人キャディを付けて臨み、そして優勝したのだが、その現地キャディに「たった5000ドルしか支払っていない」という批判が上がり、大騒動へ発展。

結局、クーチャーは現地キャディに追加で謝礼を支払い、現地キャディの「手取り」は約50万円から500万円に増えた。

第3者によるSNS上での指摘に端を発したこの出来事を「SNSの力」「民意のパワー」と評価する声が聞かれた一方で、なんとなく後味が悪い印象は拭えないと私は感じている。

全米女子オープン開幕前には、かつてのウッズのコーチだったハンク・ヘイニーが韓国人選手に対する差別的、侮辱的な言葉を口にして、国内外から批判の声が噴出した。ヘイニーはレギュラー出演していたラジオ番組から降板させられるなど、事実上、失脚した。

そして男子の全米オープン開幕前には、USGAのコース設定に対する激しい批判の声が選手たちから上がるなど、あのころはショッキングな出来事の連続だった。

選手たちの主張は「USGAは難しいコースではなくアンフェアコース、アンプレアブルなコースを作っている」というもの。ボイコットまで考えていた選手が実際にいたという事実は、米ゴルフ界のみならず世界のゴルフ界を驚かせた。

だが、批判の嵐は、世界ナンバー1のブルックス・ケプカの「エクスキューズは聞きたくない。黙ってプレーするのみ。フェアウエイとグリーンをしっかり捉えていれば、何も問題はないはずだ」という強烈な一言によってトーンダウン。そして、ゲーリー・ウッドランドの見事な勝利によって騒動はほぼ収束した。

だが、権威あるUSGAを現役のトッププレーヤーたちが集団で真正面から批判したこの出来事は、まさに前代未聞であり、これまたショッキングだった。

12月のヒーロー・ワールド・チャレンジでは、パトリック・リードがバンカー内で素振りする際、ウエッジのソールでボール手前の砂を押し払い、「ライの改善」による2罰打を科せられるという、さらにショッキングな出来事が起こった。

リードへの批判の声は、その翌週のプレジデンツカップで一層高まり、挙げ句の果てにリードのキャディがオーストラリアのギャラリーと激しい言い争いをして、警察沙汰へ。

その翌週には、あの差別発言で失脚したヘイニーが、自分の仕事が減った責任を問い、米PGAツアーを訴えるという裁判沙汰へ。

そんなふうに2019年の米ゴルフ界は嫌な出来事、暗い話が続出した1年だったが、悪いことばかりではなかった。マシュー・ウルフ、コリン・モリカワといった将来有望な若手選手の出現は喜ばしいことだった。

そして、ウッズが10月の「ZOZOチャンピオンシップ」を制し、故サム・スニードの最多勝利数記録に並ぶ通算82勝目を達成して世界中を沸かせたことは最大の朗報だった。

米ゴルフ界は、いまなおウッズあっての繁栄である。その話は、また次回に!

文 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>