全英最後のパットは何を考えていた? 渋野日向子の素直な“ことば”で躍進の1年を振り返る【プレーバック・渋野日向子】

全英最後のパットは何を考えていた? 渋野日向子の素直な“ことば”で躍進の1年を振り返る【プレーバック・渋野日向子】

最終戦、最終日、最終ホール 渋野日向子の一礼がかっこ良かった(撮影:岩本芳弘)

ゴルフ界に新たな風を吹き込んだ渋野日向子。すい星のごとく現れ、国内ツアー4勝、そして海外メジャーの「全英AIG女子オープン」をも制した。賞金ランキングは2位。駆け抜けたこの1年を、渋野のことばでつないでみた。


■「あれは私だったのでしょうか?」
渋野にとって今季初戦となった3月の「ヨコハマタイヤ PRGRレディスカップ」。ここでいきなり優勝を争う一人に名乗りを挙げ、最終的に6位タイフィニッシュとなった。この試合の感想を聞かれた後、記者に言った感想がこれ。

■「私にも意味が分かりません」
今年4月の国内ツアー「KKT杯バンテリンレディス」に出場した渋野は、初日1バーディ・8ボギー・1ダブルボギーの「81」と“大乱調”。9オーバーの最下位スタートとなった。しかし2日目に「66」とその日のベストスコアをマークし、予選を通過。その時に発したセリフがこれだった。ちなみに最終日も「68」をマークし、最終的には20位タイでのフィニッシュとなった。

■「私で大丈夫でしょうか? 私でごめんなさい」
国内ツアー初優勝を挙げた5月の「ワールドレディス サロンパスカップ」。優勝を決めた後のインタビューで、『メジャーでツアー初優勝は8人目ですが?』と聞かれ、「私で大丈夫でしょうか?」と返答。さらに大会最年少優勝と伝えられると、「私でごめんなさい」となぜか恐縮。会場を笑いが包んだ。

■「え? あと2年出られるんですか?」
国内公式戦を制し、3年シードが付与されたことについての感想を聞かれた時に出たのが、この言葉。正確には来年から3年間なので、それ以上試合に出られることを知ると「やばいです…」と“絶句”。「賞金ランクの上位50人になったら、シードに入れるな、ということくらいしか考えてこなかったので…」と、“望外の優勝”だったことが伝わる一幕だった。

■「ゴルフよりもソフトボールのほうが好きです」
これもワールドレディス サロンパスカップ中の会見で発された言葉。小学校時代にゴルフと同時期にはじめ、今も地元の子供たちと一緒にソフトボールをプレーするという渋野。その“ソフトボール愛”を問われ、こう発言した。ちなみに来年の東京五輪での観戦も目論んでおり、チケットが手に入ったら「(ゴルフの)試合は休みます」とも話していた。

■「よく“おじさんキラー”って言われます」
ワールドレディス サロンパスカップ優勝前、国内ツアーでの知名度も徐々にあがり、会場でサインを求める人も多くなったのがこのころだった。その列に並ぶ人が、中年男性が多い気がしたこともあり、『40代くらいの男性が多いですね?』と聞いてみたら…“あっ!”というような表情を浮かべた後、笑顔で言ったのがこのセリフ。なんでも地元の練習場にいる、“おじさん”とすぐに仲良くなるそうで、地元の大会でも中年ファンからの声援がよく飛ぶのだとか。これからはさらに全国区の人気者になりそうですが、その時もおじさん率は高そう?

■「しぶの全英出れるってよ」
国内メジャーでツアー初優勝を挙げてから一気に注目度が上がった渋野。前半戦さいごの試合となった「アース・モンダミンカップ」で4位タイに入り、同大会終了時の賞金ランキング上位5位までに与えられる全英行きの切符を滑り込みで獲得した。インスタグラムでは、「しぶの全英出れるってよ」と、どこか他人事のような感じで全英行きを喜んだ。

■「2勝目がこんなに早く来るとは。めっちゃ早い(笑)」
首位と4打差で残り4ホール。そこから追いついてプレーオフに持ち込み、ひとホール目で相手を撃破。7月第1週の「資生堂 アネッサ レディス」での逆転優勝も印象に残っており試合だ。最終日の15番で20メートル近いバーディパットを決めると、17番で3メートルを沈めてガッツポーズ。そしてオフの間から練習を重ねた少し上げるアプローチでプレーオフ最初のホールをパーセーブ。初優勝から2カ月後の優勝に自身も驚きの声を出した。

■「ホントに、いらんことをしたと思います。ふふふ(笑)」
海外初試合でまさかのメジャー優勝。4日間笑顔を振りまき、攻撃的なゴルフで世界を黙らせた。プレッシャーに押しつぶされることなく、最終ホールのバーディで決着。「やっちゃいましたね、ホントに(笑)。なんで勝っちゃったんですかね、私がね。ホントにいらんことをしたと思います、ふふふ(笑)。いらんことっておかしいですね、すごいことをしたと思います」とシブコ節で喜んだ。

■「米国へ行くつもりはない」
全英優勝で獲得した米ツアー出場権。優勝会見で参戦の有無を聞かれ、出てきたのがこの言葉。「これから先アメリカで戦うということを考えると、やっていけないなと思います。移動もそうですし、英語も話せない。そういうところでストレスになります。日本でもっとレベルアップして活躍したいのはこれからも変わらない。できればこういう思いはしたくないくらい(笑)。笑っていましたけど、この4日間本当につらかった。気疲れがハンパじゃないので。あの位置にずっといるというのは気も遣っていたと思う。何回『帰りたい』と言ったか分からない。シビアなパットとか気が狂いますよね」。笑顔の下に、大きなプレッシャーが隠れていたことを明かした。

■「もう少し目立たないようにプレーをしている予定でした」
全英の4日間で一気に知名度を上げた渋野。日本では2勝を挙げてファンも増えてきていたが、世界的には無名。そんな20歳のゴルフと笑顔は世界に衝撃を与えた。そんな快進撃のなかでも渋野は自然体だったが、少々の戸惑いと驚きを感じていた。そこで出てきたのがこの発言。「うれしいっちゃうれしいです。(騒がれるのは)嫌いじゃないです。なんならウェーイって感じ。普通にうれしいです」としたが、まさかの海外メジャー優勝に興奮を隠せなかった。

■「涙はまったく出てこんかったです(笑)」
「プレーオフはしたくないと思っていました。バーディを獲るかボギーを叩くか。3パット打つか、シャンク打つか(笑)。ピンは狙っていました。18番のパッティングを打つ前も『これを決めれば優勝する』ということは分かっていた。どういうガッツポーズをしようかなと考えていました。最後も壁ドンで入ったので、『やりきった〜』って。ふふふ(笑)。入っちゃったという感じで。ガッツポーズするじゃないですか。泣きそうになるじゃないですか。涙はまったく出てこんかったです(笑)。泣きそうになるかなって、こう手を目にやったけど、全然でした(笑)」。全英最後のホールの渋野の心の中をお届けしました。

■「優勝してからしんどいこともありました」
全英優勝後の凱旋試合となった「北海道meijiカップ」に強行出場した渋野。一夜にして国民的ヒロインとなった20歳に注がれる視線は日ごとに増え続け、あまりの多忙、過密スケジュールのため、体調を崩し、声はガラガラ。それでも「ギャラリーのみなさんが、体調を気づかってくれたり、『おめでとう』と言ってくれて、出場してよかったなと思いました」。空前の“シブコ・フィーバー”に沸いた大会もスマイルで締めくくったが本音は、「今は何もしたくないです」だった。

■「手が震えて…、情けね〜な、と」
帰国2戦目の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」はまさに全英と同じ状況。最終ホールでバーディを決めれば優勝。外して2パットでプレーオフという状況の中、まさかの3パット。「打った瞬間、手が動かなくて入らんと思った。あんだけオーバーさせるってしたことない。めっちゃ手震えているし、情けねーな、と。自滅してしまった。ギャラリーの皆さんはよく頑張ったと言ってくれるけど、心残りはめっちゃある。今は、悔しさのほうが上で食欲ない」。渋野の今年いちばん印象に残るパットとなった。

■「キャディバッグがくそうなる(笑)」
ラウンド中のモグモグタイムが注目され、渋野が何かを口にすれば、カメラマンのシャッター音が鳴り響いた。「ニトリレディス」でもモグモグタイムのことが話しにあがると、「待ち時間がそんなにないので、スルメソウメンを全部一気には食べられない。だけど、あけっぱにして入れていたらキャディバックが“くそうなる”と思ってやめました(笑)。あとで食べます」とかわいらしい岡山弁で報道陣を笑わせた。

■「こんなにヘラヘラしてやっているんだな(笑)」
8月の帰国後、久しぶりに実家にもどり、ゆっくりしていたときのことを聞かれた渋野。ちょうど放送されていた全英の3日目と最終日のプレーバックを見て発したのがこの言葉。「テレビ越しだったので客観的に見られたのですが、こんなヘラヘラやってるんだなって(笑)」。その笑顔が世界を魅了したんですよ…。

■「表情にすぐ出るんです…、すみません!(笑)」
8打差逆転を果たした9月の「デサントレディース東海クラシック」初日にもシブコ節が飛び出した。「感情が出ていた」と報道陣から振られ発したのがこの気持ち。笑顔が取り上げられるが、それ以外にも喜怒哀楽が激しいタイプと自己分析。怒りや悲しみもよく見せるのが渋野流だ。

■「私の口から賞金女王とは言えない」
賞金レースも佳境に入り、大きな期待を集めた渋野だったが、大事な1戦「伊藤園レディス」で予選落ち。そこで出てきた敗北宣言がコチラ。「ショックです…。ちょっと泣きそう…。すみません…」と涙を見せた。予選落ちは3月以来。「情けないの一言。まだまだだなって思い知らされました。もう私の口から賞金女王(を目指す)とは言えない」

■「これほど誰かのために勝ちたいと思ったことはなかった」
予選落ちの翌週に優勝するのもまた渋野らしい。一度は諦めかけた賞金女王の芽が再び出てきた「大王製紙エリエールレディス」優勝後、素直な感謝の気持ちを表現した。「今週は“自分のため”ではなく“応援をしてくれる人たちのため”に頑張ろうと思った。これほど“誰かのために勝ちたい”と思ったことはなかったかもしれません」。いよいよ残すは最終戦のみ。「来週は自分のためにも、応援してくれる人のためにも頑張って、いい締めくくりにしたいですね」と、宮崎に乗り込んだ。

■「賞金ランク2位は『1年間よく頑張ったね』って神様が与えてくれた」
最終戦での逆転女王を目指した渋野だったが、惜しくも届かなかった。それでも最終日の最終ホールでバーディ奪取。2位タイに入り、賞金ランキングも2位。大忙しで駆け抜けたルーキーイヤーを振り返り、しみじみ語った。突如として現れたシンデレラガール。夢のようなストーリーを演じ続け、激闘を終えて見せたホッとした表情が印象的だった。

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