紆余曲折のすえの女王戴冠 「絶対にゴルフから離れる」から3連勝まで【最強女王の胸のうち】

紆余曲折のすえの女王戴冠 「絶対にゴルフから離れる」から3連勝まで【最強女王の胸のうち】

日本一に輝くまでには紆余曲折 鈴木愛が赤裸々に語った(撮影:ALBA)

年間表彰式の「LPGAアワード2019」の檀上で鈴木愛は、司会の徳光和夫氏に、渋野日向子のことについて聞かれるとこう答えた。


「来年もライバルになると思うのでがんばりたいと思います」

鈴木の中で、渋野は“ライバル”である。自ら口に発するところ、今年1年は意識せざるを得ない相手だったのは間違いない。

“しぶこ”で始まり、“しぶこ”で終わった2019年の女子ゴルフ界。そんな陰に隠れて――と言っては失礼にあたるかもしれないが、今季賞金女王となった存在が霞んで見えてしまっていた。

 鈴木は2年ぶり、2度目の賞金女王を手にした。しかも今季は年間7勝。これは不動裕理(2004年)、イ・ボミ(2015年)以来の勝利数で、圧倒的な強さを見せた一年でもあった。

だが、女子ゴルフ界でもっとも名誉ある賞金女王のタイトルがあまり目立たないのが、少々気の毒でならなかった。

鈴木に今年一年の感想について聞くとこんな答えが返ってきた。

「勝利数と結果だけ見れば満足はしています。賞金女王になれたことはすごく良かったのですが、今まで過ごしてきた一年の中で一番長かったです。開幕戦から予選落ちしたり、交通事故にもあったり……。本当に山あり谷ありってこういうことを言うんだなって」

そう言って苦笑いを浮かべる鈴木。結果よければすべてよし、ということでもなかったようだ。それだけ賞金女王になるまでに様々なことが身に降りかかってきた一年でもあったからだ。

開幕戦のダイキンオーキッドレディスではいきなり予選落ち。翌週のヨコハマタイヤPRGRレディスカップでは優勝したが、4月にはタクシー乗車中に交通事故に遭い、腰を痛めてしまった。

しかも5月のメジャー、ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップは最終日に背中の痛みで棄権もしている。

それでも宮里藍サントリーレディスオープンで優勝すると、翌週のニチレイレディスでも優勝。難コースの小樽カントリークラブが舞台のニトリレディスでも勝利し、シーズン4勝目。このまま順風満帆に行くかに見えたが、そう簡単にはいかなかった。

決して前半戦の成績は悪くはなかったが、コンディションが万全ではなく、シーズンを最後まで走り切れるのかという心配が常に鈴木の頭の中にあった。

「とにかく不満が残ることが多くて、得意だったパターも一番悩んでいました。そうするとゴルフもすごく嫌になってしまって」

 本人曰く、8月末のニトリレディス以降がもっとも辛かったという。デサントレディース東海クラシックで9位タイに入ったものの、それから4試合を欠場。賞金女王を勝ち取るためにも、是が非でも出場しておきたかった日本女子オープは左手親指と手首を痛めて欠場を余儀なくされた。

「この時期は何もかもうまくいかなくて嫌になることが多かったです。モチベーションも続かず、もう思い切って休もうと。ゴルフという言葉を聞くのも嫌になりましたし、ゴルフの話もしたくない、聞きたくもない。テレビも見たくなかったので、とにかくもう絶対にゴルフから離れると決めました」

約1か月、頭の中を真っ白にして、東京にある自宅ででは普通の生活をして過ごした。これまで夜は友達と食事にいって楽しむことは何度かあったが、プロになってから普通の一人暮らしをしたのは初めての経験だった。これがリフレッシュ効果を発揮した。

「2週間、一人で炊事、洗濯、掃除と普通の生活をするのがこんなにも楽しいと思わなかったんです(笑)。こういう経験も今までしたことがなかったので、本当に新鮮ですごくリフレッシュできました」

毎日、ゴルフ漬けの日々から解放されると、気持ちが楽になった。それに仲のいい友達の言葉も胸に響いた。

「友達と食事しているときに言われたのですが、『愛ちゃんが試合に出ていないと面白くない。テレビも全然見なくなった』って言われて。そう言ってくれる人が自分の周りにいるんだなということを、改めて再認識しました。今までは自分のことなんか誰も応援していないんじゃないかって思ったりしていましたから、友達の言葉は本当にありがたかったです」

ネガティブな感情は消え、前向きな気持ちを取りもどした鈴木は、人が変わったかのように結果を残す。

ハイライトは、11月の樋口久子三菱電機レディス、TOTOジャパンクラシック、伊藤園レディスでの3週連続優勝だろう。自分でもそこは「実力で勝ち取ったもの」と自負している。

「2週連続優勝したサントリーとニチレイの時は勢いもあり、逆に周囲が伸びなくて勝てたという感じでした。ただ、3週連続優勝は自分の実力をすべて出せたという感じがありました。勢いや流れだけでは勝てなかった。自分が思うような球もたくさん打てたので、そこは試合内容と結果に満足しています」

その後の結果はご存じの通り。4連勝こそ逃したが大王製紙エリエールレディスでも2位に入ると、そのまま逃げ切り賞金女王まで上り詰めた。

フロックでもなんでもない。心技体―。全てが揃ったからこその3連勝、そして大逆転賞金女王だった。

文 キム・ミョンウ

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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