私たちも考えよう、ゴルフ界の共存共栄の道【舩越園子コラム】

私たちも考えよう、ゴルフ界の共存共栄の道【舩越園子コラム】

米女子ツアー共催大会の一つであるスコットランド女子オープン(撮影:GettyImages)

2020年の年明け早々、世界のゴルフ界から明るい知らせが届いた。LET(欧州女子ツアー)と米LPGA(米女子ツアー)が、ともに手を取りながら、活動を活発化させていくというニュースだ。


LETは今年3月にサウジアラビアで新しい大会を開催することを発表した。サウジアラビアで女子プロゴルフの大会が開かれるのは同国史上初となるのだが、初開催でありながらも、出場選手108人、4日間72ホール、賞金総額1ミリオン(約1億1000万円)の本格的大会を同国の名コース、ロイヤル・グリーンズG&CCで開催する。

サウジアラビアでは長年、レストランやショップなどの入り口が男性用と女性用で分けられていたり、女性の車の運転が制限されたりしていたそうだが、そうした差別が解消され始めた途端、ゴルフの大会、しかも女子プロゴルフの大会がいきなり開催されるというのは、世界のゴルフ界にとってうれしいビッグニュースと言っていい。

それを可能ならしめたのは、LETがサウジ・ゴルフ連盟に積極的に働きかけた熱意と努力。だが、規模も経済力も決して大きくはないLETが、なぜそんなにもスピーディーでアクティブな動きを見せることができたのかと言えば、LETが米LPGAと手を取り合っているからであり、さらに双方が心強いビッグな味方を得たからに違いない。

昨年、LETと米LPGAは互いに協力し合うジョイント契約を結び、動き始めた。それは、人気低迷でスポンサー獲得が難航し、苦しい運営が続く双方の生き残り作戦だった。

近年、日本は女子プロゴルフ人気が高まり、昨年からは渋野日向子の活躍で一層盛り上がっている。だが、男子ゴルフより女子ゴルフのほうが格段に元気がいいという現象は「近年の日本特有」と言っても過言ではない。

かつての女王、アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)やロレーナ・オチョア(メキシコ)らの引退後、欧米の女子プロゴルフ人気はみるみる低下し、近年はギャラリーもまばらで試合会場は閑散としている。欧州の事態はより深刻で、かつては年間28試合前後だったLETは、2017年には15試合まで減少。しかし、米LPGAと協力関係を結んだ昨年は20試合へ増加。そのうちの3試合は米LPAGとの共催大会だ。

さらに言えば、LETの2019年の賞金総額は年間15ミリオン・ダラー(約16億4000万円)。そのうちの10ミリオン(約11億円)は米LPGAとの共催大会。「ジョイント」とはいえ、両者の経済力には大きな開きがある。

そんな中、欧州男子ツアーと欧州ゴルフの総本山であるR&Aが手を差し延べようと動き始めたことが、この年明けに発表された。

欧州男子ツアーのキース・ペリー会長は「女子選手たちはファンを惹きつけるという点で男子プロとは異なる魅力を抱いている。女子プロの存在価値を高め、ゴルフというスポーツをみんなで高めていきたい」と積極姿勢を見せている。

すでに欧州男子の大会に女子選手を招く新たな形態をスウェーデンで準備しており、「他の場所でも同様の大会をもっと増やしたい」と目を輝かせている。R&Aも「米LPGAとLETのジョイント・ベンチャーをフル・サポートしていきたい」と語っている。

今年、サウジアラビアにLETの新規大会が創設されたことは、単にサウジアラビアのゴルフの話にとどまらず、欧州女子ゴルフと米女子ゴルフの協力体制の賜物であり、その協力体制を支援して男女ともに高めていこうと動き出した欧州男子ツアーとR&Aの温かい眼差し、大きな力の賜物でもある。

世界のゴルフ界においては、すでに国や大陸、男子と女子の隔たりが取り払われ、みんなが手を取り合って共存共栄の道を歩み始めているということを、日本のゴルフ界にかかわらず、全員が真剣に受け止めるべきではないだろうか。

新年に朗報を耳にして、そんなことを考えた。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>