「歩み続けよう」と勇気が沸いた彼の勝ち方【舩越園子コラム】

「歩み続けよう」と勇気が沸いた彼の勝ち方【舩越園子コラム】

家族とともに優勝を喜ぶアンドリュー・ランドリー(撮影:GettyImages)

今年から名称が一新された「ザ・アメリカンエキスプレス」は、長年、米カリフォルニア州のゴルフのメッカ、パーム・スプリングスで開催されてきた伝統ある大会だ。


かつてはアーノルド・パーマーやジャック・ニクラス、ジョニー・ミラー、そしてフィル・ミケルソン(いずれも米国)といったスター選手たちが何度も勝利を飾り、米国のゴルフファンを沸かせてきた。

しかし、プロアマ形式で毎日異なるコースを3日間回った後に予選カットが行なわれる同大会のスタイルは、近年の若い世代のトッププレーヤーたちからは敬遠される傾向にある。大会アンバサダーにミケルソンを起用するなど工夫を凝らしてはいるのだが、出場選手の顔ぶれは淋しくなりがちだ。

今年も世界ランキング上位25位以内の選手はたった4人しか出場しておらず、大きな注目を集めていたミケルソンは予選落ち。世界ランキング上位のトニー・フィナウやリッキー・ファウラー(ともに米国)も周囲の期待に応えきれずじまいとなった。

だが、通算2勝目を飾った32歳の米国人、アンドリュー・ランドリーの戦いぶりは人々を惹きつけたのではないだろうか。

最終日、単独首位を快走していたランドリーは、後半、3連続バーディの直後に3連続ボギーを喫し、猛追をかけてきたエイブラハム・アンサー(メキシコ)に並ばれた。

「またプレーオフになるかもしれない」

上がり3ホールを迎えたランドリーは、そんなことを思ったそうだ。

そう、ランドリーは2018年のこの大会でつかみかけていた初優勝のチャンスを逃した。初日からショットもパットも好調で最高のプレーを披露していたのだが、最終日に猛追してきたジョン・ラーム(スペイン)とのサドンデス・プレーオフにもつれ込み、4ホール目で敗北。

2m半のバーディパットを外したランドリーは敗者となりながらも明るい笑顔でラームに歩み寄り、握手を求めた。それは、世界184位(当時)だったランドリーが世界3位(当時)のラームと互角に渡り合えたこと、そうやって勝利を競い合えたことへの満足感の表れだった。

しかし、ランドリーの胸の中の大半を占めていたものが悔しさであったことは言うまでもない。その2カ月後、「バレロ・テキサス・オープン」を制し、故郷の地で30歳にして初優勝を遂げたランドリーは「ハードワークが報われた。自分でもよく踏ん張ったと思う」と語って泣いた。その涙が、ラームに勝利をさらわれたあの惜敗の悔しさを如実に物語っていた。

そんな2年前の苦い経験がまたしても再現されるかもしれない――ランドリーはそう思いながら今日の最終日の終盤を戦っていた。2年前はラーム、今年はアンサーの猛追で並ばれた。さぞかし苦しかったことだろう。

そればかりではない、今季のランドリーは8試合に出場して7度の予選落ちを喫し、低迷していた。今大会で復調への扉をせっかく自力で開きかけたのだから、なんとか勝利をつかみ取ってほしい。パーム・スプリングスのギャラリーも、そう願いながら彼のプレーを見守っていたのだと思う。

17番。2m半のバーディパットをねじ込んだ瞬間、人々の歓喜の声が響き渡り、能面のようだったランドリーの表情が一変した。単独首位に再浮上。72ホール目もバーディで締めくくり、2打差で堂々勝利。2年前とは正反対のハッピーエンドになった。

あのときと今回。何が違ったのか。

「ただ一つ、自分を信じることができたかどうか。それだけです」

苦境を跳ね除け、自分を信じ、2勝目をつかみ取ったランドリー。「大きな自信が得られた」と語ったが、それは貯金のようにそのままストックできるものではないらしい。

「これまでやってきたのと同じことを、これからも日々、やり続けていく。そうやってハードワークを積み上げることで、大きな自信をキープすることができる」

なるほど。頑張り続け、前進し続ければ、自信はネバー・エンディング。だから歩み続けよう――ランドリーの勝利を眺めていたら、そんな勇気が沸いてきた。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>