渋野日向子がしたためた一筆 “笑門福来”なシーズンで見せた思い切りの良さ【現場記者の“こぼれ話”】

渋野日向子がしたためた一筆 “笑門福来”なシーズンで見せた思い切りの良さ【現場記者の“こぼれ話”】

一気に書き上げた笑門福来(2019年9月撮影)(撮影:岩本芳弘)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけでなく世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。なかなか試合の臨場感を伝えることができない状況が続いています。そんななか、少しでもツアーへの思いを馳せてもらおうと、ツアー取材担当記者が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回は、昨年9月に全英チャンピオンを取材したときのお話。


本当なら今週はディフェンディングチャンピオンとして「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」に戻ってくるはずだった渋野日向子プロ。公式戦で衝撃の初優勝を飾るという偉業から1年が経ちましたが、あっという間だったように思います。

シンデレラストーリーの第一幕がこの大会で開幕したわけですが、その後のストーリーの急展開はここで語る必要もないほどのものですよね。7月には国内2勝目。そして歓喜の全英に乗り込むわけですが、昨年のこの時期には、まさかここまでの結果が待ち受けているとは思ってもいませんでした。難しいといわれる2勝目、そして海外メジャーも制覇。もちろん実力あっての結果ですが、ここまで勢いに乗っての活躍はなかなか見られない展開でした。

そんな渋野プロが昨年のサロンパスカップで明かしたのが、“常に笑顔でいることを心がけている”ということでした。スマイリング・シンデレラという言葉が全英から渋野プロの代名詞となり、シーズン後半戦はこのプレッシャーが渋野プロを苦しめたこともあったようですが、やっぱりスマイルが世間を席巻したのは間違いありません。

一躍国民のヒロインとなった渋野プロを取材するために岡山に飛んだのは9月上旬のことでした。各ゴルフメディアが一斉に取材をする日がプロのご厚意で設けられ、私も伺った次第。全英の取材にも行っていたこともあり、あらためて挨拶をする目的もありました。「かなり疲れているな」と思い、申し訳ない気持ちもありましたが、ひとたび取材が始まるといつもの笑顔を振りまいてくれたのを覚えています。

朝から渋野プロが育ったゴルフ場でシブコテクニックを青木翔コーチとともに伝授してもらい、室内に場所を変えて、今度は隠れた渋野プロの特技を披露してもらいました。いまでは有名な話ですが、小学校からはじめた習字は初等師範の腕前。ある言葉を書いてみてくださいとお願いしたところ、ためらいもなく、一気に書き上げたのが「笑門福来」。渋野プロにぴったりの言葉と思い、お願いをしました。

クラブハウス内のコンペルームでささっと筆をとる渋野プロ。下書きなどもなく、まずは半紙の大きさを見て字を書くスペースを数秒で見極め、一気に書き始めました。そしてわずか数分でできあがったのが写真の一枚。ゴルフと一緒で、ためらいのない書きっぷり。お見事としかいいようがなく、その場にいた者全員が感心したのを覚えています。

常に笑顔でいることは誰もができないこと。渋野プロも笑顔だけでなく、怒りや不安を表情に出すこともあります。ですが、やっぱり渋野プロの笑顔は見ているこちらも幸せになるほどの力を持っています。そして、笑顔でいることが福をもたらす。まさに、昨年の渋野プロの活躍の通りです。

いまだ開幕が見えないなかで、トレーニング中心の調整を重ねていると聞いています。習字のように思い切りのいいゴルフと、ファンも待ち望むあの笑顔を、早くコースで見たいものです。(文・高桑均)

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