形を変えてでもツアーを行うためには【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

形を変えてでもツアーを行うためには【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

これはやっぱり“密”です(撮影:GettyImages)

ゴルフツアーを再開するには、いったい何をしたらいいのか。改めて考えてみた。


まず、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、ツアーが開催できない理由は大きくわけて3つある。

(1)人がたくさん集まり、濃厚接触が起こりやすいこと
(2)大勢の人が全国を移動すること
(3)周囲に非難される、それによってツアー、スポンサー企業のイメージが悪くなること

1、2と3は、切り離して考えたほうがいい。ウイルスという現実の脅威に対する1、2と、人間の感情やイメージに対するのが3。違う問題だからだ。

まず「やるはずだったものと同じ規模で開催する」という考えを真っ先に消去しよう。「試合をすること」を最優先させ、規模の縮小や、形を変えることを恐れない。これが大切だ。

選手はじめ現地入りする人間の健康管理は大前提。体調不良時の責任ある対応と、検温、そしてマスク着用はいうまでもない。感染者が出る可能性はどこにでもある。それをいち早く発見し、広げない準備を整える。

1と2の現実に対しては、集まる人間を最小限にするのが最善だ。当面は無観客。ハッキリいって日本のゴルフトーナメントの多くは興行として成立していない。ギャラリー収入を当てにすることなく、賞金だけでなく経費まで含めた費用がスポンサーに依存している。プロスポーツとしてほめられたシステムではないが、この状況だと逆に無観客でも実害は少ない。選手以外、スタッフの数も極力少なくする。キャディについては賛否両論あるが、手引きカートによるセルフプレーも含めて考えてみてはどうだろう。

ただし、試合をする以上は、多くの人に伝わらなくては意味がない。テレビ中継も最小限の人数で行う。インタビューなどの部分だけでも、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)懸案のネット配信に手を付けるにはいい機会かもしれない。

トレーナーやコーチ、マネージャーなどもコースには入らない。家族同様に接している場合が多いはずなので、宿舎での接触までにとどめる。クラブハウスはトイレ、洗面所の使用に限り、基本的には練習場とコースだけを使用。選手同士もソーシャルディスタンスを守る。複数の人間が触れるピンフラッグは抜かず、バンカーレーキの使用についても再考(毎回消毒するなど)。

ゴルフツアーでは必然の移動で人との接触を最小限にする方法は何か。チャーター機(チャーター列車)を使うこと。最小限の人数で個々に車で移動すること。途中、できるだけ寄り道は避ける。車以外なら、ゴルフ場までの最後のアプローチはチャーターしたシャトルバス。宿舎も、オフィシャルホテル(貸切)で食事もそこから出ずに行う。コース併設のホテルがあれば、比較的これはたやすいはずだ。ツアー全体の“巡業”のイメージだ。

「窮屈だ」という声は当然出るだろう。だが、究極の選択として考えてほしい。「いつも通りの準備ができないからいつも通りのパフォーマンスができない」ことと「試合そのものができない」のとどちらがいいのか。

人間のイメージや感情についての問題である3についてはどうだろう。ネックとなっているのは、ノンゴルファーのゴルフに対するよくないイメージだ。以前にも書いたが、日本ではいまだに「ゴルフは金持ちのスポーツ」というイメージが払しょくできていない。優越感に浸りたいがためにそのイメージをいつまでも引きずっている人間たちが業界のイニシアティブを取り続け、周囲もそれを容認してしまって来たことのツケだ。そのハンディキャップを跳ね返す必要がある。

スポーツとしてのゴルフが身近なものであり、ゴルフが人々を明るい気持ちにすることができること、などを心から分かってもらうようにするしかない。ゴルフをしない人たち(ノンゴルファー)に、だ。プロスポーツとは切っても切り離せない社会貢献を考えながら試合をすること。そして実行することも大切だ。ツアーの再開は、それなしにはあり得ない。

一定数の批判は覚悟の上。それでも、結果的にはプラスイメージになる。それをきちんと示さなければイメージアップのためにお金を出しているスポンサー企業は、首を縦に振らない。それがうまくいかないなら、スポンサーに全面依存するのではない試合のあり方を模索するいい機会だと捉えよう。

問題はまだある。ここまでの対策で試合を行った場合、ツアーキャディや運営スタッフなど、仕事を失うことになる人たちが少なくないこと。すでに悲鳴を挙げているツアー周辺の人たちに、どんな手を差し伸べられるか。「不安定な仕事なんだから」、「ツアー周辺にぶら下がっているんだから」と、切り捨ててしまうのではなく、しばらくの間は、違う形でツアーを支えてくれる仕事をしてもらうなど、方法を見つけるほうが前向きだ。

「政府の通達通り」、「諸外国(あるいは他団体)にならって」などと逃げてばかりいては将来などない。自分たちで考え、できる方法を探す。非常事態は、ツアーの形を、そしてゴルフのイメージをいい意味で変えるチャンスでもある。早急に、かつ慎重に。だが、前向きに再開について考えてほしい。(文・小川淳子)

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