青木功の“タメ”は半端ない 最小限の動きで最大限のエネルギーを生む化け物だった【レジェンドのスイング回顧録】

青木功の“タメ”は半端ない 最小限の動きで最大限のエネルギーを生む化け物だった【レジェンドのスイング回顧録】

若かりし日の“世界のアオキ” そのスイングを井上透が解説(撮影:GettyImages)

青木功は遅咲きだった。初めて日本ツアーで賞金王を獲得したのは1976年の34歳のとき。その後、1978〜1981年に4年連続で賞金王に輝き、1980年の全米オープンではジャック・ニクラスと死闘を繰り広げて、惜しくも2位となった。そんな日本が世界に誇るレジェンドゴルファー、青木の1973年のドライバースイングを見ていこう。当時31歳だった青木は、ジャンボ尾崎と並ぶ年間5勝を挙げるも、賞金ランキングではジャンボ尾崎に次いで2位だった。ゴルフスイングの歴史に詳しいプロコーチの井上透氏が解説する。


青木さんのスイングは驚きです。特にすごいのは切り返し。左腕とクラブが作るタメの角度が半端じゃない。そのタメをインパクト直前までリードしている。この形は今でいうとダスティン・ジョンソンですね。インパクトでは左足から左肩のラインまで真っすぐの斜めの軸で打っています。この当時に最小限の動きで最大限のエネルギーを得ていたという点では、とんでもない化け物だったと言えますね。

こんなにクラブを遅らせて、インパクトで間に合わせられるわけですから、ものすごく省エネスイング。体をあまり大きく動かさないで、ヘッドスピードを上げるという点では、ジャンボさんの飛ばし方とは違います。ジャンボさんは最大限の動きをしてでも、最大の飛距離を得るというタイプでした。クラブの動かし方の効率性においては、ジャンボさんより青木さんのほうが高いということです。

グリップがウィークだと言われていましたけど、この写真を見る限りは、そんなにウィークには見えません。トップから切り返したときのフェースアングルは、スクエアからシャット気味です。だからこそタメが強くても間に合ったんでしょうね。

渡辺司さんは「青木さんはフェードを打つって言っても、ドローがちょっと弱くなった球だから」っていじっていました。これだけタメが強いと、クラブが倒れてインサイドから振られやすい。パワーフックというかドロー系のスイングになる。青木さんにとっては、フック量を減らすフェードのイメージが大事だったわけです。フォロースルーを見ると分かりますが、アーノルド・パーマーのように左ヒジを抜いたり、左腰を抜く動作でフェースターンを抑えようとしています。フックが強くなりすぎないようにするアクションをフォロースルーで入れていたのです。

また、アドレスでハンドダウンにしているのは、アウトサイドに上げるためでしょう。オープンに立って、左肩を下げて、ハンドダウンにして、スライス要素を多分に入れ込んでいますけど、切り返し以降はフック動作なんです。すべてはフックを弱めるためにこうなったと思います。

青木さんのタメが強いのは、もともと手首や前腕が強くて柔軟性があるから。だから、これだけエネルギーを蓄積できて、インパクトで爆発できる。小さな動きで大きなエネルギーを生み出すという意味では、日本ゴルフ史上、最強クラスのすごさです。

■解説・井上透
1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。

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