現役格闘家と元新体操日本一のゴルフチャレンジで見えてきた“入口”と“頂点”【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

現役格闘家と元新体操日本一のゴルフチャレンジで見えてきた“入口”と“頂点”【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

ついに開幕を迎える国内女子ツアー 今後、ゴルフの在り方をどう考える?(撮影:GettyImages)

入口と頂点。双方の楽しさが伝われば、スポーツの人気は自然に高まっていく。


「ゴルフにチャレンジしたい」。そんな相談を受ける機会は多い。とにかく楽しく始めて欲しいから、できればいきなりゴルフ場に連れて行きたい。難しいことは抜きで、まずはコースの空気を味わって欲しいからだ。

コース関係者に協力をお願いして機会を設けると、ほぼ100%、感激してくれる。「すごい! ゴルフ場ってこんなにきれいなんだ」「こんな広いところを独占していいの?」。これだけで、ゴルフへのテンションはハネ上がる。

「ちゃんとマナーを身に着けてうまくなるまでコースには出さない」というのが良しとされた時代もあった。だが、それがゴルフに対するハードルを上げ、プレー人口を減らし続けている大きな原因になっている。それなのに、いまだに、日本では練習場で球を打つことから始める場合が圧倒的に多い。

最初からきれいにボールを捉えることができる者はまれ。最初はなかなか当たらなくて苦労する人がほとんどだ。「それが楽しい」とムキになるのはごく一部。大人であれ、子供であれ、忙しい中で趣味としてゴルフを行うのであれば、楽しくなければすぐにくじけてしまう。その前に、まずはコースを見てもらう。アプローチやパッティングも含めて、できる範囲の体験ができれば最高だ。「うまくなってあのきれいなコースでいい球を打つ」という目標ができれば、モチベーションも上がる。

昨日も、そんな2人をゴルフ場へと案内した。あいにくの梅雨空で、嵐のような天候に見舞われたため、屋根付練習場でレッスンを受けることになった。この2人、実はただ者ではない。

総合格闘技の現役選手「V.V Mei」こと山口芽生さんと、元新体操日本一で、現在は六本木でジムを経営する佐藤麻衣子さん。「スポーツと健康を少しでも意識することで、働く女性に元気になって欲しい」と、SNSやYouTubeなどを中心に様々な発信を行っている。「ゆる〜く」というのもポイントだ。肩に力を入れて頑張りすぎずに、という方向性。その一環として、様々なことに挑戦する“ビタチャレ(ビタミンチャレンジ)”で、ゴルフに挑んだ。

運動能力は極めて高いが、ゴルフに関しては経験が少しあるだけの2人。あっという間にナイスショットを連発したのはさすがと言うほかはないが、楽しみ方は無邪気そのものだった。悪天候でも、野生動物が何種類も顔を見せる野趣(やしゅ)あふれる練習場の雰囲気を楽しんだり、ゴルフクラブについて目を丸くしたり。若い女子プロのマネをしてカメラに収まったりと、様々なゴルフの楽しみに触れた。

笑い声が絶えない時間。これこそ、ゴルフが広がるためのキーワードではないか。子供でも大人でも、入り口はこんな風に、自然に笑顔が出てこなければ、長くは続かない。その中の一部が競技を志向し、さらにそのごく一部がプロを目指す。この自然な流れを、今さらながら取り戻さなくてはならない。

そんな入口に対して頂点と言えば、トッププロの世界だ。ゴルフの場合、ゴルフをしないファンの数が少ないのがネックとなっている。サッカーであれ野球であれ、自らがプレーしなくても観戦を楽しみ、チームを応援するファンはたくさんいる。相撲やラグビー、などは言うまでもない。相撲ファンに対して「相撲やるの?」とは聞かないが、ゴルフだとどうしても「ゴルフはする?」と尋ねることになる。悪いわけではないが、結果的にゴルファー以外に対してハードルを上げてしまっている。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ツアーが軒並み中止となり、25日(木)からの女子ツアー「アース・モンダミンカップ」が無観客でシーズン初戦として開催される。心待ちにしていたファンは、ネット中継に釘付けになるだろう。だが、その先は…? 状況を考えれば、まずは無観客、というのは仕方ないのかもしれない。それにしても、その先につながるものが見えてこないと、ファンは増えるどころか減ってしまうだろう。

次の試合はいつ、行われるのか。試合がなければ、プロたちの姿は中継局がなんとか作った週末の番組でしか見られないのか。ネットに姿を見せるのは、一部の選手だけなのか。ゴルファーでない人たちに応援してもらうためには何が必要か。

これまで、当たり前のように毎年、行われていた試合がない状況で、一から『頂点』であるプロの世界の在り方について考え、行動するタイミングは、まさに今だろう。

ゴルフの“入口”に足を踏み入れた人たちに“頂点”をいかに楽しんでもらうか。双方を考えることで広がりができる。

先日“ビタチャレ”ゴルフを経験した2人は、次のチャレンジも考えてくれている。彼らが発信することで、ノンゴルファーも多い、2人のフォロファーの目にも、ゴルフの良さが伝わる。世界を広げる、とはこういうことだ。2人をプロの試合に案内し、ゴルフの“頂点”にも触れてもらう機会があれば、その輪はさらに広がる。

ウイルス感染が拡大したことで、一度は悪者にされかかったゴルフだが、決してそうではない。“入口”と“頂点”の良さを、こんな風に考え、伝え、行動し続けること。多くの人がそうできれば、自然にその良さは広がっていくはずだ。(文・小川淳子)

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