新世代のお姉さん役が“弟子”の田中瑞希らに教えていること【佐伯三貴の目】

新世代のお姉さん役が“弟子”の田中瑞希らに教えていること【佐伯三貴の目】

昨年までは練習ラウンドもともにして背中を見せてきた(撮影:上山敬太)

最終日最終組の平均年齢が19.7歳となり話題となった今季初戦の「アース・モンダミンカップ」。最後は渡邉彩香と鈴木愛のプレーオフのすえ渡邉が5年ぶりの勝利を手にして閉幕した。劇的なフィナーレを迎えた4カ月遅れの開幕戦は、昨年で一線を退いた佐伯三貴の目にどう映ったのか。


■若手の頑張り、選手の入れ替わりがあってこそおもしろい

実力者同士の決戦となり、大いに盛り上がったアース・モンダミンカップだが、上位2人に肉薄したのが昨年のプロテストに合格した田中瑞希だった。3日目を終えて単独首位。最終日は途中スコアを落としながらも踏ん張った。最後のバーディパットを外しプレーオフ進出を逃したが、笑顔を振りまきラウンドする姿はネット中継でも好印象を与えた。

その田中は佐伯の教え子の一人。昨年の4月ごろから練習ラウンドをともにし、指導してきた。とはいえ、「私は何もやっていません。彼女が努力してこその結果だと思っています。よく頑張っていましたね」と勝利こそ逃したが、激闘のすえの3位タイには拍手を送る。

田中のほかにも上位陣にはこの春高校を卒業したばかりの西郷真央や笹生優花。田中と同学年の原英莉花、大里桃子といった新世代の選手たちが奮闘した。その中で渡邉、鈴木、酒井美紀ら中堅、ベテラン勢も存在感を示す。「田中さんたちと同年代にあれだけ強い選手がいるのはいいことですね。やっぱりツアーは入れ替わりがないとおもしろくない。その中でベテランが勝ったりすると、展開としてはますますおもしろくなります」。

4日間、全組ホールアウトまでインターネット中継で配信された新たなスタイルも相まって、大会は最高に盛り上がったといえる。

■佐伯三貴が見た今回の田中瑞希

「最初の印象はおとなしい子。でもゴルフは力強いし、性格も負けず嫌い。最初に思ったのはアイアンの音が良かったこと。スイングは少し特徴的ですが、キレもあるし飛距離も出る。おもしろい選手だなと感じていました」

田中は昨年11月のプロテスト合格前から単年登録選手としてツアーに参戦していたが、同学年の山路晶、1学年下の菅沼菜々、そして佐伯と練習ラウンドをともにすることが多く、ツアー通算7勝の大先輩から学ぶものが多いと話していた。「私のおかげと言ってくれることもありますが、彼女自身がいいプレーをしていたし堂々としていた」と、今回の躍進は田中自身の頑張りと評価した。

「大会の途中からスイングが微妙にズレていたという感じがしたので、終わってから聞いてみたら、その意識はなかったそうです。プレッシャーなのか、疲れなのかわかりませんが、次はそういうところを注意すればいいのでは」。はじめての優勝争いの中では大健闘といって良さそうだが、やはり勝利をものにするには経験を積んでいくしかないということも指摘する。

後半の16番パー4ではティショットを右に大きく曲げて、斜面からのセカンドがグリーン手前のバンカーにつかまった。ピンまでの距離がかなり残る状況で田中は58度のウェッジを手にしたが、「52度くらいで楽に打てば良かった。そういうことは話しました。近々会うことがあれば、その辺も練習に取り入れて、反省会もできたらなと思っています」と、次回に向けて準備を進めていくつもりだ。

■佐伯塾の教えは目標設定の高さを間違えないこと

今回は、田中のほかにも教え子の菅沼菜々、沖せいら、田辺ひかり全員が予選突破。「全員通ってくれてうれしかったです」と、弟子たちの頑張りには目尻も下がる。田辺は最終日に「68」をマークして17位タイでフィニッシュ。菅沼も最終日こそ落としたが3日目までは上位を走った。そんな彼女たちに対して佐伯が教えるのは、主に精神面。例えば、田中と今季はステップ・アップ・ツアーが主戦場となる山路には「プロテストは散歩しながらやってこい」と昨年のテスト前に話したという。

「目標を高く持たないとダメ。目標が低いものだと努力することも減ってしまう。高い目標ならおのずと工夫したり、努力の量も増えます。どうなりたいかというビジョンを明確にして、その過程のなかでプロテストがあって、QTがあって。そこでもがいているようではダメなんです」。高すぎるくらいの目標設定で意識を高めるところからはじめ、教え子たちは、まずは開幕戦で予選突破という最低ラインをクリアした。

人気先行とならないように、足場を固めて自力をつける。そして不断の努力を続けること。その上でもっとも大事なのは、勝ち癖をつけること。「大きくても小さくてもいいから、とにかく勝つこと。この世界では勝つことが大事。まずはそこを目指してほしいです」と、勝利に対する貪欲さを持ってほしいと語る。

技術的な教えも施すが、トップクラスのツアー選手として戦ってきた佐伯だからこそ分かる選手としての心構えや、ゴルファーとしての心得などを厳しく教えるのが佐伯スタイル。「私はお悩み相談室? 駆け込み寺、そんな感じですね。来たら座禅を組ませます(笑)」。

酸いも甘いも知り尽くした佐伯のような存在は、若手選手にツアー活性化のためのエキスを注入する役目。開幕戦から「おもしろい展開」となった女子ツアー。8月以降も目が離せない展開が続いていくことを願う。

解説・佐伯三貴(さいき・みき)/1984年9月22日生まれ。広島県東広島市出身、大和ハウス工業所属。中学1年のとき、父・行生氏の影響でゴルフを始める。06年に大学3年在学中ながらQTに挑戦、翌年1月にプロ転向した。同年の「フジサンケイレディスクラシック」で初優勝を挙げるなどツアー通算7勝。19年にツアーの第一線から退き、20年からは後輩の育成など新たなかたちでゴルフ界に貢献している。

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