渡邉彩香の復活劇で思い出した、イ・ボミの言葉【現場記者の“こぼれ話”】

渡邉彩香の復活劇で思い出した、イ・ボミの言葉【現場記者の“こぼれ話”】

スイングは比較できないと話したイ・ボミ(撮影:佐々木啓)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。国内女子ツアーは「アース・モンダミンカップ」で開幕することができたが、次戦の見通しは立っていない。そんな状況のなか、少しでもツアーに思いを馳せてもらおうとツアー取材担当が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回は1年前のイ・ボミのとある言葉を紹介する。


国内女子ツアー開幕戦となった「アース・モンダミンカップ」で優勝したのは渡邉彩香プロでした。とりわけ目立ったのが、持ち味である豪快なショットが復活したことです。そんなショットについて優勝会見で聞かれたとき、渡邉プロが「スイングを1から見直して、直しました」と話す姿を見たときに、1年前のイ・ボミプロのある言葉を思い出しました。

それは「資生堂 アネッサ レディス」3日目を終えたときのこと。ボミプロはこの大会で2年ぶりにトップ5に入り、後にシード復活を果たすのですが、このときは7位タイ。まだ予断は許さない状況でした。そんなときに記者から「昔のスイングを100%だとしたら、今はどのくらいですか?」という質問を受けました。すると、こう返すのです。

「いいときのスイングと今のスイングは違うので、比べられないです」

スイングを悪くしようとして、変える人はいません。今よりも良くしようとどこかを変える。最初は微調整かもしれない。でも、そこからさらに直そうと微調整を繰り返していくうちに、悪くなることもままある。だからといって、いいときに戻そうとしても…、ゲームのように「はい、リセット」とはなりません。

じゃあ、何も変えなければいいじゃないかというとそうもいかない。より勝ちたい、より上を目指したいという気持ちが芽生えるのは当然ですし、それでなくとも年々体や状態が変化するなかで意識せずともどこかしらは変わるもの。とある飲食店の社長は「変わらないために、変わり続ける」と言います。それだけ現状維持は難しいということです。

2年間ショット不調に苦しみ、悩みぬいたボミプロは大きくスイングを変えました。それはそれは大きな覚悟でしょう。出来上がったスイングは、技術的にも精神的にも“今の自分”に一番合っているものになりました。決して昔のスイングに近づけようとしているものではありません。だから先述のような言葉が出てきたのでしょう。「いいときのスイング」と言ったのはあくまでボミプロの優しさ、リップサービスだと思います。だって、これからより良くしようとしているわけですから。

今回優勝した渡邉プロもリオ五輪代表に入れなかった悔しさから、様々な試行錯誤をして状態を崩していきました。「もう勝てないんじゃないかなという気持ちになったことは、正直ありました」。そんな状況が3年以上続くなかで、スイングを1から見直し、優勝までたどり着いたことはとても素晴らしいことであり、感動的でした。

ですが、ボミプロや渡邉プロのように復活することができなかった選手も多数いることを忘れてはいけません。上を見なければいけない。だけれども、それが間違っていたとしても簡単には後には戻れない。スイングとして良くても、成績が出るとは限らない。正しかったかどうか判断されるのは結果だけ。それが「プロゴルファーのいる世界」だと改めて考えさせられました。(文・秋田義和)

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