トーナメントを支える人たちを守れ!【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

トーナメントを支える人たちを守れ!【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

プロテスト合格直後にはルーキーキャンプで裏方の仕事を学ぶ選手たち トーナメント従事者の気持ちはいま?(撮影:GettyImages)

ゴルフトーナメントは選手だけではできない。ファンを始め、スポンサー企業、キャディ、コース関係者、ボランティア、運営スタッフなど、さまざまなな人たちがいることで、試合は行われている。


新型コロナウイルス感染拡大によって、次々とトーナメントが中止になり、職場を奪われているのは選手ばかりではない。広い意味でトーナメントに携わる人たちはみな、仕事ができずに困っている。

石川遼、有村智恵、青木瀬令奈らが任意団体『Tournament Players Foundation』を立ち上げ、多くの男女プロから賛同を得て“ゴルフトーナメント業務従事者支援基金”を「Ready For」を通じて、クラウドファンディングで開始した。自分たちを支えてくれる人々の窮状を理解しての動きは、ツアーの将来を考えると極めて大切なものだ。

3月以来、悲鳴はあちこちから聞こえ続けている。「(試合が)いつ始まるかわからないから、他のアルバイトもできない」、「情報がまったくない」、「試合があっても無観客では仕事がない」、「誰も自分たちのことは考えてくれない」。大会主催者から直接、仕事を受けている会社や個人、そこから仕事を発注されている下請け、孫請けの会社やフリーランス…。末端になればなるほど、情報は少なくなり、振り回されることになる。

「元々、保証のない仕事なのだから仕方がない」といってしまえばそれまでのこと。だが、この人たちなしには現在の形でトーナメントは行えないのに、何の保証もない、それが実態だ。

サザンオールスターズが、6月25日に横浜アリーナで無観客ライブを行い、これを有料配信したことが話題になった。収益の一部は医療機関に寄付されることが決まっていたが、同時に、ツアー関係者救済という意味があったこともよく知られている。

ライブだけでなく、イベント関係が一時はほとんどできなくなってしまったことで、バックバンドやコーラス、ダンサーを始め、音響や、照明、装置などのスタッフすべてが仕事を失った。無観客でも横浜アリーナという大きな会場でライブを行うことで、彼らを元気づけ、その窮状を少しでも救うという目的だ。

この人たちがどれだけ必要かが分かっているからこそ、サザンは横浜アリーナでライブをしたのだろう。ゴルフの世界でも同様のことがいえる。石川、有村、青木の動きはそれを少しでも支えようとしてのことだろう。それをサポートするほかのプロたちもいるのは心強い限りだ。

個人レベルでとにかく早く。プロたちがそんな考えで行動するのは素晴らしいことだ。その一方で、ツアー側から同様の動きがいまだに出てこないのが不思議でならない。

主催はスポンサー企業で運営も専門の会社に丸投げ。その下で働く人たちがたくさんいることで、現在のツアーは成り立っている。ツアーがしているのは試合をツアー競技として“公認”することと、選手を派遣すること。つまり、自分たち以外の誰かの手を借りなければ試合ができない、それが実態だ。

ツアーの“財産”である選手を守ることすらおぼつかない状態で、それ以上を望むのは無理かもしれない。だが、ツアーを支える人たちが現状にこらえきれず、転職してしまったら、コロナ禍が落ち着いて試合ができるようになっても、実務をする人が不足するのは目に見えている。

男女を問わず、プロたちは、試合に出られるようになると研修で「自分たちだけで試合ができているわけではない」ということを叩きこまれる。だが、ルーキーたちにそれを教えているツアー側は、そのことを本当にわかっているとは到底思えない。『余裕がない』といって逃げるのは簡単だ。しかし、自分たちを支える人をも守らない限り、コロナ禍が落ち着いても、試合が行えるとは限らない。

コロナ禍で失うものは、目の前の試合だけではない。来年以降の試合や、ツアー周辺の“人材”をしっかりと守ること。今回、動き出した選手たちはそのことを分かっている。組織としても行動すべき時はとっくに来ているはずだ。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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