コリン・モリカワの全米プロ初制覇が示したもの【舩越園子コラム】

コリン・モリカワの全米プロ初制覇が示したもの【舩越園子コラム】

コリン・モリカワが全米プロ制覇 平均飛距離300ヤード以下でも勝てる!(撮影:GettyImages)

コロナ禍の真っただ中、無観客で開催された今季最初のメジャー大会、全米プロゴルフ選手権。最終日は首位に5人、6人がひしめく大混戦が続いたが、その中から一気に抜け出し、2位に2打差をつけて快勝したのは23歳の新鋭、米国人のコリン・モリカワだった。


2019年にプロ転向したモリカワは、米ツアー出場権獲得を目指していた昨季途上、プロわずか8試合目のバラクーダ選手権で初優勝を挙げ、そして今年、米ツアー再開5戦目のワークデイ・チャリティ・オープンで強豪のジャスティン・トーマスをサドンデス・プレーオフで見事に撃破し、プロ24試合目で通算2勝目を挙げたばかりだった。

そしてこの全米プロでは、プロ28試合目、自身わずか2度目のメジャー大会挑戦にして、早くもメジャー制覇を成し遂げた。

そんなモリカワの快進撃を可能ならしめたものは何だったのか。

今大会開幕前、肉体を増強したブライソン・デシャンボーの度肝を抜くパワーと飛距離がとかく注目を集めていた。米メディアはゴルフのパワーゲーム化を謡い始め、実際、リーダーボードの上段には、ブルックス・ケプカやキャメロン・チャンプなどパワーヒッターたちがひしめき合った。

最終日を首位で迎えたのは屈指のロングヒッター、ダスティン・ジョンソン。そして、デシャンボー、チャンプ、ポール・ケーシー、マシュー・ウルフ、ジェイソン・デイ、トニー・フィナウらが大混戦を展開した。

モリカワは、その中で誰よりもショートヒッターだった。米ツアーの統計によれば、今季のモリカワの平均飛距離は296.3ヤードで110位。一方で、GIR(パーオン率)は70%超で27位と高い。

「僕は飛距離が出ないぶん、得意のアイアンとパットで自分のゴルフを構築する」

日ごろからそう言っていたモリカワは、その通り、今大会で誰よりも多くフェアウエイを捉え、誰よりも効率的にパットを沈め、誰よりも多くバーディを奪い、最終日は誰よりも見事な6アンダー、64をマーク。一貫して「自分のゴルフ」をやり通し、全米プロを制覇した。

言い換えれば、モリカワは誰よりも見事なマネジメントを披露した。正確なショット&パットのコンビネーションは圧巻だった。予選2日間はともに69、3日目は65、最終日は64。日に日に調子を上げ、スコアを伸ばしていった4日間だった。

スコアカードに目をやれば、勝利のカギとなったのは16番。短いパー4のグリーンをドライバーで捉え、しかもピン下2メートルのベストポジションにつけてイーグル奪取。通算13アンダーとして一気に混戦から抜け出し、優勝にリーチをかけた。

だが、16番で1オン狙いを敢行できたのは、14番のチップインバーディがあったからだった。2打目をミスしてグリーンを捉え損ねたことは大きな失敗だったが、そこからのチップインは、持ち前の小技のうまさはさておき、優勝争いの大詰めで得た大きな幸運だった。

そんな天からの恵みを彼は無にしなかった。

「16番ティでキャディと『行く?』、『行こう!』と話し、(1オンを)狙った」

16番は294Y。モリカワの平均飛距離とほぼ同じだ。その意味でも成功確率は低くはなく、1オン狙いは無謀なギャンブルではなく、確信に基づいた攻めだった。

優勝後、米メディアから「今日のベストショット」を尋ねられたモリカワ自身は「16番のティショット」と答えた。

そう、彼のベストショットは16番の第1打。だが、彼の勝利への転機は14番と16番の双方であり、もしも、そのどちらかが起こっていなかったら、彼は勝ってはいなかっただろう。

チャンスを生かし、チャンスをモノにしたモリカワ。4週前、ワークデイ・チャリティ・オープンでトーマスを打倒した際の彼の勝利の言葉が再び蘇る。

「僕はチャンスに勝った」

プロ入り2年目の新鋭でも、弱冠23歳の若さでも、他選手たちにリードされても、たとえ優勝争いの大詰めでミスをしても、諦めず、気持ちを切り替え、巡ったチャンスを必ず生かす。それは、マネジメントの勝利であると同時に、メンタリティの勝利でもあり、そこには最高のプロフェッショナリズムが見て取れる。

飛距離は出ずとも、見事に勝てる。モリカワの全米プロ初制覇、メジャー初制覇にゴルフの真髄を見た。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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