エンターテインメントビジネスも立派な仕事なのに”不要“なものなどない【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

エンターテインメントビジネスも立派な仕事なのに”不要“なものなどない【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

エンターテインメントの華やかさが人々の癒しや勇気になることも多い(撮影:岩本芳弘)

「今、ゴルフなどしていていいのか、という気持ちがあります」。昨年、何人かのプロゴルファーから聞いた言葉だ。Covid-19(新型コロナウイルス)感染拡大によりステイホームが叫ばれ、試合の見通しが立たなかった時期のことだ。


記憶に新しい2016年の熊本地震や、11年の東日本大震災後にも、そんな風に迷いを抱いたプロゴルファーは多かった。そして26年前にも…。1月17日は、阪神淡路大震災メモリアルデー。兵庫県淡路島沖で起きたマグニチュード7.3の大地震が関西地方にもたらした被害は大きかった。午前5時46分52秒と冬の早朝だったことで、眠ったまま建物の下敷きになる被害や、暖房器具から発生した火災での被害も大きかった。

自然災害や、今回のウイルス感染拡大のように、人間の力でどうすることもできない災害が起きると、衣食住の確保が最優先される。いつであれ、落ち着いたら、それぞれが生活していくための仕事に戻るのは自然なことだ。しかし、前述のようにプロスポーツ選手が“仕事”を再開することに、後ろめたさを覚えてしまう場合は少なくない。

「犠牲者がたくさん出ているのに」「家もない人がいるのに」「いつ落ち着くのかもわからないのに」と、状況を考えてしまうからだ。「ゴルフなんかやっている場合なのだろうか」と。エンターテインメントビジネスでも、同様のことが起きやすい。自分の仕事をして、自分の生活を守れない者に、他人を守ることなどできない。被災地ボランティアが大切だからと言って、誰もがそれだけをしていたのでは国も自治体もなりたたなくなってしまう。

スポーツや演劇、音楽などには、さらに大切な役割がある。生きていくだけで必死になっている人々の心を和ませ、元気づけるというものだ。素晴らしいパフォーマンスを見たり触れたりすることで束の間でも、目先の苦労から離れられたり、思い出に浸ったり、前に進む力を得ることができる。パフォーマンスした側にも、そのエネルギーは跳ね返って来る。

まだまだ終わりが見えないコロナ禍だからこそ、癒しやエネルギーの源として、プロのパフォーマンスを求める人々は多い。再び緊急事態宣言が出た日本の状況に、3月から始まるはずの女子ツアー各大会は対応に追われている。昨年とは違い、感染対策をより強固にして観客を入れる方向だった試合が多かったはずが、すでに第2戦、第3戦の無観客開催が決まっている。

どんなに対策を施しても“絶対“はないなかで何を優先するのがいいのか、正解はひとつではない。プロスポーツが負うべき役割を考えれば、ただただリスクを回避すればいいというものではないことだけは確かだろう。

『不要不急の外出を控えてください』と簡単に口にする政治家と、それを垂れ流すワイドショーをはじめとするメディアに振り回されるのはいい加減やめにしよう。偏った情報に振り回されて右往左往し、大騒ぎしている人間がSNSにはあふれている。特に、働かなくて済む立場の人間の無責任な言葉は、見る度に反吐が出そうになる。

どんな仕事であれ、働いている者すべてが、何らかの形で社会を支えている。どんなに下らないことに見えても『不急』のことはあるかもしれないが『不要』かどうかは、他人が推し量れるものではない。エンターテインメントビジネスは決して『不要』のものではない。それを支えるすべての仕事が、人々に必要とされているはずだ。そう考えれば、答えはおのずと見えてくる。(文・小川淳子)

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