「勝者と敗者」は25歳の親友どうし【舩越園子コラム】

「勝者と敗者」は25歳の親友どうし【舩越園子コラム】

互いに称えあうサム・バーンズ(右)とスコッティ・シェフラー(撮影:GettyImages)

「チャールズ・シュワブチャレンジ」は、マスターズ覇者のスコッティ・シェフラーが2位に2打差の単独首位で最終日を迎え、そのまま独走して今季5勝目を挙げることが予想されていた。


しかし、テキサスの気まぐれな風は、午後になると一層激しくなり、コロニアルCCの小さなグリーンを捉える難度はどんどん高まっていった。風と日照りでグリーンは時間を追うごとに硬く速くなり、パッティングの難度も想像以上に高まっていった。

その影響を最も受けたのが、最終組で回っていたシェフラーだった。バーディーが1つも奪えないまま2ボギーを喫する苦戦の末に、トータル9アンダーでホールアウトした。一方で、シェフラーから7打も引き離されて最終日を迎えたサム・バーンズは、風が穏やかなうちにスタートし、スコアを5つ伸ばす快進撃を披露。サンデー・アフタヌーンは一時は首位に4人が並ぶ混戦状態になったが、終わってみれば、バーンズとシェフラーがトータル9アンダーで首位に並び、サドンデス・プレーオフに突入した。

バーンズとシェフラーは、どちらも25歳。今年のマスターズでは、2人は1軒の家をシェアして滞在していたほどの親友だ。シェフラーのメジャー初優勝を、あのときバーンズは心から讃えていた。

そんな2人が、1対1でプレーオフを戦うことになった展開は、傍から見れば、運命のいたずら。しかし、幼いころから何度もジュニアの大会で顔を合わせていた2人にとっては、懐かしい時代の再現のような感覚だったのだろう。

しかし、ノスタルジーに浸る間もないぐらい、勝敗はあっけなく決まった。プレーオフ1ホール目の18番。グリーン奥のカラーの外からパターで打ったバーンズが、12メートルを見事にカップに沈め、驚きのバーディーを獲得。眺めていたシェフラーが「グッドパット」と頷きながら絶賛した姿が印象的だった。その直後、シェフラーは11メートルのバーディーパットを沈めることができず、バーンズの大逆転優勝が決まった。

バーンズにとって、この勝利は今季3勝目。ツアー通算4勝目となり、マスターズを制覇して今季4勝、ツアー通算4勝としているシェフラーに追いつきそうな勢いを見せている。フェデックスカップ・ランキングでも、1位のシェフラーに続いて、バーンズが2位につけ、25歳の親友どうしがいま、PGAツアーの最前線を勢いよく走り始めている。

とはいえ、2人の快走は突然変異のごとく始まったわけでは、決してない。シェフラーはテキサス州で、バーンズはルイジアナ州で、それぞれ「天才少年」と呼ばれながらも、奢ることなく日々コツコツ腕を磨いてきた。

バーンズにとっての一番の思い出は、まだ14歳だった2011年に、このコロニアルCCを訪れ、同じルイジアナ州出身で全米プロ覇者のデビッド・トムズがこの大会で勝利した瞬間を間近に眺めた日のことだ。

「11年前、故郷ルイジアナのヒーローがこのコロニアルで勝った日のことを僕は昨日のことのように覚えている。戦いを終え、家族と抱き合って喜んだデビッドの一挙手一投足は、僕の脳裏に全部焼き付いている」

トムズの勝利を眺めたコロニアルCCで、今度は自分自身が、しかも7打差からの猛追で親友シェフラーを捉えてプレーオフで下したことは、バーンズにとって信じがたく忘れがたき思い出の優勝となった。

「今、最も勢いのあるシェフラーが自分と7打差でリードしていたのだから、正直なところ、僕はきょう、自分が優勝することを想像すらしていなかった」

何が起こるかわからないのがゴルフだ。大会史上最大となる7打差から首位に並んだことも、同い年の親友とプレーオフで激突したことも、12メートルのグリーン外からのバーディートライがカップに吸い込まれたことも、憧れのヒーローと同じ場所で勝利したことも、すべては驚きの出来事だった。しかし、単なる偶然や奇跡ではない。どんなときも上を向き、自分に与えられたチャンスを最大限生かそうと努力してきたからこそ成しえた素晴らしい勝利だった。

バーンズを讃えたシェフラーのグッドルーザーぶりも眺めていて心地よく、観戦していた子供たちは25歳の若い2人の戦いぶりをしっかりと目に焼き付けたことだろう。10年後には、その中からコロニアルを制する勝者が誕生するかもしれない。米ゴルフ界の歴史は、そうやって作られていく。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

【関連ニュース】