文化を担う者としての習慣 〜東日本大震災余震に思う〜【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

文化を担う者としての習慣 〜東日本大震災余震に思う〜【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

2011年の東日本大震災時 大会は中止になり、不安そうな表情を見せる選手たち(撮影:ALBA)

また大きな地震があった。13日午後11時8分、福島県沖で起きたマグニチュード7.3の地震は、最大震度6強。東北から関東を中心に、寝入りばなの人々の多くが「また!?」と、10年前の大地震の恐怖を思い出した。


2011年3月11日の東日本大震災の余震だという。現在、女子ツアーでプレーしている選手の中で、何人があの時のことを思い出しただろうか。あの日、ツアーが行われていたのは震源地とは遠く離れた高知の土佐CC。シーズン第2戦の「ヨコハマタイヤPRGRレディス」初日だったが、海が近いため選手や関係者は高台にあるコースのクラブハウスにしばらく缶詰になっていた。
 
大津波と原発事故まで起こした大災害の影響を考え、この試合は競技不成立。その後、3試合が中止になっている。

16年4月の熊本地震は、14日未明の揺れから2日後、16日未明のより大きな揺れが本震とされた。ツアーは被災地熊本で15日から「KTT杯バンテリンレディス」を開催予定で、選手はみな、揺れを体験している。14日の地震で大会は中止になったが、熊本在住の選手も多く、それ以外にも熊本にいたまま16日の本震に遭った者は多かった。この時はこの大会だけが中止になっている。

いずれも、いまだに傷跡が深く残っている大きな災害で、いかにゴルフと向き合うかを考えさせられた選手の話を、たくさん聞いた。

局地的な風水害は、毎年のように起こっており、さらに昨年来のコロナ禍と人知を超えた禍は後を絶たない。そんな中で、衣食住と離れた仕事とどんなふうに向き合っていけばいいのか。10代後半から20代を中心にした若い女子プロゴルファーたちは、そんな問題に直面した。

コロナ禍で「ゴルフを始めてこんなに自宅にいたことはない」。そう口にしたプロは少なくない。ジュニア時代から毎日、毎日ゴルフ漬けだった彼女たちは、自宅でゆっくり過ごす時間などなく、年齢を重ねている。思いがけず手にした“自宅での時間”に、ポジティブに自分を見つめ直した者も多かった。東日本の時も、熊本の時も、震災の後には、避難した者もいれば、ボランティアをする者、チャリティ活動をする者もいた。幸い今回は今のところ、当時ほどの被害は確認されていない。となると、直面しているのはコロナ禍だけだが、大きな地震の恐れもないわけではないことを思い出させられた。

「何かがあった時、どう対処するのか」。その場の避難や、当面の衣食住に備えるだけでなく、災害の時には日頃は見えない本質が問われることになる。「他人がどうする」ではなく「自分はどうするのか」。アスリートであれ、その周辺で物を書き、伝える者であれ、衣食住以外に必要な“文化”を担う者には違いない。その自覚を持つことはとても大切だ。いいことであれ、よくないことであれ、人は慣れ、流されやすい生き物だ。そんな中で、災害によって、常に考え、行動する習慣はつけられている。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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