ノーマンへの対抗意識も糧に 通算21勝目を挙げたマキロイの胸中【舩越園子コラム】

ノーマンへの対抗意識も糧に 通算21勝目を挙げたマキロイの胸中【舩越園子コラム】

ツアー21勝目を挙げたローリー・マキロイ PGAへの想いを口にした(撮影:GettyImages)

ローリー・マキロイが「RBCカナディアン・オープン」連覇を遂げ、PGAツアー通算21勝目を達成した直後に口にした言葉は、PGAツアーを愛する人々にとって、小気味良い響きだったに違いない。


「とてもうれしい。トニー・フィナウ、ジャスティン・トーマスとともに、僕ら全員が素晴らしいプレーをした今日のことを僕は決して忘れない。PGAツアー通算21勝は“ある人”より1つ多い。そのことが、ほんの少しだけ、余計に僕を奮起させた」

“ある人”とは、言うまでもなく、リブ・ゴルフを率いるグレッグ・ノーマンのことだ。このRBCカナディアン・オープンと同じ週に、ロンドンで初戦を開催した『リブ・ゴルフ』のCEO、ノーマンに対する対抗意識が自身を奮起させたことをマキロイは明かした。だが、敵意にも似た対抗意識が彼のモチベーションのすべてだったわけではなく、「ほんの少しだけ余計に」と表したところに、マキロイらしいウィットに富んだ知性がにじみ出ていた。

RBCカナディアン・オープンは、コロナ禍で2020年も2021年も開催されなかったため、カナダのゴルフファンにとっては、3年ぶりに迎えたPGAツアーの大会となった。本来なら、RBC契約プロであるダスティン・ジョンソンやグレアム・マクドウェルが大会アンバサダーとして盛り上げる役割を担っていたのだが、どちらも開幕目前の5月末に、リブ・ゴルフ初戦への出場を発表。即座にRBCが2人との契約を解消するドタバタ劇があった。

選手には自身が戦う場を選ぶ権利があることは事実。しかし、選手の権利云々を主張する以前に、一人の人間として、受けた恩義を裏切るようなことだけは避けられなかったのだろうかと首を傾げたくなる。

リブ・ゴルフ第2戦からの参戦を発表したブライソン・デシャンボー然りである。7月下旬に開催される「ロケット・モーゲージ・クラシック」の入場チケットは、デシャンボーの姿が大きく印刷された状態で、すでに大勢のファンの手元に渡っている。そのため、大会側はチケット購入者全員に「デシャンボーは出場しないが、チケットは有効です」と大慌てで連絡を入れる作業に追われたという。

そんな虚しい騒動があり、大西洋の向こう側からはリブ・ゴルフ初戦の喧噪が伝わってきていた中で、2019年大会覇者のマキロイは、ディフェンディング・チャンピオンとして今大会に臨み、見事連覇を遂げた。18番グリーン脇でマキロイに歩み寄り、固い握手を交わしたPGAツアーのジェイ・モナハン会長の笑顔は「おめでとう」と言いながらも、それ以上に「ありがとう、ローリー」と言っていた。

そう、マキロイの勝利は、リブ・ゴルフにはないPGAツアーのすばらしさを実証する形になった。マキロイ、トーマス、フィナウ。世界ランキング上位選手ばかりが1打を競い合う熱戦を披露し、その様子を大観衆が何重もの人垣を作りながら観戦し、興奮しながら拍手喝采を送り続けた。とりわけ今大会は、カナダの人々が3年越しで間近に眺めることにようやくなった待望の大会だった。

長い歳月と歴史。厚い選手層。そして大観衆。時間にも空間にも地上にも、フェアウエイでもグリーン上でも、そこに自ずと「層」が成されていることは、PGAツアーだけが有する財産であり、誇りでもある。そんなPGAツアーに背を向け、リブ・ゴルフへ行ってしまった仲間たちを言葉で非難する代わりに、マキロイは「62」で回りきる最高のゴルフでPGAツアー選手のすばらしさを主張し、勝利で自身をも納得させていた。

72ホール目に13メートルを決めて2位に食い込んだフィナウ、そして2連続ボギーで3位に後退したが最後まで奮闘したトーマスも、胸に秘める想いはマキロイと同じ。だからこそ彼らは、勝利を逃した悔しさはさておき、勝者を心から讃えていた。

そうやって、選手の心、大会やツアーに携わる人々の心が感じられることこそが、PGAツアーの魅力であることを、あらためて感じさせられたサンデー・アフタヌーンだった。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

【関連ニュース】