節目の年の追悼セレモニーに落胆 風化させないためにもう少しやり方を【記者の目】

節目の年の追悼セレモニーに落胆 風化させないためにもう少しやり方を【記者の目】

大会初日に行われた追悼セレモニー もっと多くの選手が参加する方法はなかったのだろうか?(撮影:鈴木祥)

今年で熊本地震から5年が経過した。震災発生時の2016年4月14日午後9時26分頃。著者は「KKT杯バンテリンレディス」開幕前日の取材を終え、熊本市内のホテルに戻ったところで、大きな揺れに遭遇した。


身の危険を感じ、すぐにホテルを飛び出したのだが、コンビニの商品は棚から落ち、ブティックのマネキンは倒れ(人が倒れているかと思った)、道路には人があふれる混乱状態。余震への恐怖もおさまることはなかった。後に本震と言われる4月16日の揺れの前には帰京したのだが、今でも熊本に来るたびにあの時のことは思い出される。

そして今年は、新型コロナウイルス、豪雨による水害とそれ以降にも行った様々な困難を乗り越えての開催だった。だからこそ、今回のスタート前に1番ホールで行われた追悼セレモニーには落胆せざるを得なかった。選手、特に熊本県出身者が参加しているように感じなかったからだ。

日本女子プロゴルフ協会の副会長である松尾恵をはじめ、コース、各スポンサーの重鎮は出席したが、選手はアウトコース1組目の3人のみ。そのほかの選手は、コース全体のアナウンスでその場で起立して黙とうをしただけ。しかも、出席した3人のうち熊本県出身は豊永志帆のみだった。

選手たちが悪いと言っているのではない。ゴルフは選手によってスタート時間が違う競技だし、参加することで活躍できなくなるのであれば元も子もない。活躍して頑張る姿を見せることで熊本を元気にすることも大事。ただ、試合への負担をかけない範囲で、このセレモニーをアピールするため、もう少し何とかならなかったのかということだ。

簡単なところでは1組目のスタートのタイミングでセレモニーをやるのであれば、その組のメンバーを熊本県出身者で固めることはできたと思う。もっと言えば、いわゆる“注目組”の選手たちが、そのセレモニー開始時にはコースにいて、例えば練習前などにごく自然にそれに参加できるようなスタート時間にすれば、とも思った。他にも様々な方法で、試合への影響なく出席する手立てはあったと思う。

なぜ、熊本県出身者に参加してもらいたいかと言えば、開幕前に上田桃子、有村智恵といった選手たちが、節目の年に改めて熊本への思いを語っていたからだ。シンボルの熊本城天守閣の復旧、復興の難しさ、それでも前を向いている県民たち…。それぞれが自分たちの言葉で思いのたけを話していた。それだけの気持ちを持っている選手たちが、参加しやすいようにできたのではないか。

さらに東日本大震災とは異なり、選手たちの一部、特に熊本県出身の選手たちは、当時このコースで実際に被災したのだ。揺れに恐怖を感じ、余震におびえ、大会は中止に。そういう思いがあるならばこそ、全員は無理かもしれないが、せめて熊本県出身の選手がもっとセレモニーに参加できる状況、しやすい状況を作れなかったのか。

笠りつ子は言った。「あの震災で日常が当たり前ではないと気づかされました。それでも忘れてしまいそうになる事もある」。だからこそ、年に一度思い返すことが大事、と。もちろん、まだ元の生活に戻ることができていない人も多数いることも忘れてはならない。

セレモニーには追悼の意を捧げるとともに、熊本地震を風化させない目的もあると思う。だからこそ、来年、そして10年後はもっと意義深いセレモニーになっていて欲しい。(文・秋田義和)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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