“時代遅れ”のスイングを改造し、復活優勝したR・マキロイ【舩越園子コラム】

“時代遅れ”のスイングを改造し、復活優勝したR・マキロイ【舩越園子コラム】

ローリー・マキロイと家族 赤ちゃんが泣いちゃってマキロイは泣けず?(撮影:GettyImages)

2019年秋に世界選手権シリーズのHSBCチャンピオンズで優勝して以来、勝利から遠ざかっていた北アイルランド出身のローリー・マキロイがウェルズ・ファーゴ選手権を制し、2年ぶりの復活優勝を果たした。


マキロイはメジャー4勝の元世界一だが、昨今は不調にあえぎ、今大会を迎えたときは世界ランキング15位まで後退していた。調子を崩した原因として、マキロイ本人が「ブライソン・デシャンボーを意識しすぎたせいだ」と明かしたのは今年3月だった。

もう少し正確に言えば、マキロイは「デシャンボーの飛距離を意識しすぎて、自分自身もパワーアップしよう、飛距離アップしようと試みた結果、調子が狂った」ということ。このままでは自分と自分のゴルフを見失ってしまうと気づき、「もう飛距離を追い求めることはしない」と公言。同時に、大勢の米ツアー選手を指導している英国人のピート・コーエンを新コーチに迎えたことも明かした。

マキロイには幼少時代からの長年のコーチであるマイケル・バノンがいる。だが、コロナ禍による移動の制限やバノンが高齢であることを考慮し、米ツアー会場で指導を受けやすいコーエンと新契約を結び、バノンは電話などでメンタル面を含めた相談をする「永遠のコーチ」という位置付けにした。

そして、新コーチのコーエンが指摘したマキロイのスイングの最大の問題点は、驚いたことに「モダン・テクノロジーを駆使して開発された近代クラブに彼のスイングが合っていない」ということ。端的に言えば、マキロイのスイングが“時代遅れ”になっていたことだった。

32歳のトッププレーヤーにして、すでに近代技術の推移から立ち遅れていたというのはショッキングな話だったが、マキロイがいくら頑張ってドライバーを振っても飛距離がなかなか伸びなかったのは、そのせいでもあったようで、コーエンは近代クラブを効率的に振りながら精度と飛距離の双方を得られるよう、マキロイの持ち球だったドローをフェードに変えるスイング改造を指導してきた。

その過渡期だったせいだろう。ザ・プレーヤーズ選手権で予選落ちしたマキロイは、WGC-デル・テクノロジーズ・マッチプレー選手権ではコース沿いの民家のプールに打ち込むなどして早々に敗退。マスターズでも予選落ちした。それゆえ、週末に試合会場に残って決勝ラウンドをプレーすること自体、今大会は久しぶりだった。

しかし、マスターズ予選落ち後にバハマへ家族旅行してリフレッシュしたマキロイは、気分一新、そして、ようやく馴染んできた新スイングで、今大会では優勝争いに絡んだ。

最終日は安定したプレーぶりを見せ、小技やパットも冴えていた。14番、15番は、どちらも見事なバンカーショットを披露し、連続バーディー獲得。2位に2打差で最終ホールの18番を迎え、優勝はほぼ間違いないと思われたが、百戦錬磨のマキロイにとっても、久しぶりの優勝争いのプレッシャーは多大だった。ティショットを左に曲げ、クリークを越えた傾斜面の深いラフの中へ。

マキロイはフェアウェイ方向へ出そうか、逆側へ出そうかと迷っていたが、キャディのハリー・ダイヤモンドの「あるいはドロップ」という助言に従い、1罰打でドロップし、3打目で見事にグリーンを捉え、着実にボギーを拾って2位との1打差を死守。通算19勝目を挙げて、ほっと胸をなで下ろした。

「勝つことは決して容易ではない。2019年の最後の優勝から今日までは長かった。コロナ禍になり、娘が生まれて僕は父親になり、人生が変わった。母の日に優勝して妻のエリカと母国の母を想い、大勢のファンの前で再びプレーすることができ、なにより、この大会でまた勝てたことが素晴らしい」

2010年に米ツアー初優勝をこの地で挙げ、2015年に大会2勝目を挙げ、今回は大会3度目の勝利となった。そして、2020年に長女ポピーちゃんが生まれて以来、父親として挙げた初めての優勝だった。

マキロイが「パパ、勝ったよ」と報告した途端、ママに抱かれたポピーちゃんが激しく泣き出したため、逆にマキロイはあふれ出しそうだったうれし涙をこらえてしまったが、あれはきっと親孝行な娘がパパのぶんまで、うれし泣きしてくれたということなのだろう。

公私ともに充実し、心技体すべてを整えて復活優勝を挙げたマキロイは、2週間後の今季2つ目のメジャー、全米プロで、松山英樹の最大の敵になりそうな予感がする。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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