聖地での全英オープン ローリー・マキロイに最後まで捧げられたファンの祈り【記者の目】

聖地での全英オープン ローリー・マキロイに最後まで捧げられたファンの祈り【記者の目】

最終18番ホール、マキロイ(右手前)を追うように大ギャラリーがフェアウェイに押し寄せ、背中から声援を送った これは前回の2015年には見られなかった光景だ(撮影:GettyImages)

<全英オープン 最終日◇17日◇セント・アンドリュース オールドコース(スコットランド)◇7313ヤード・パー72>

最終日の17番パー4。首位でスタートしたローリー・マキロイ(北アイルランド)はひと組前を回るキャメロン・スミス(オーストラリア)にかわされて、1打差のトータル18アンダーでバーディパットを迎えていた。


奥から4メートル。入念にラインを読んでいると、18番から歓声が聞こえた。『19アンダーだぞ!』ギャラリーからそのような声が聞こえる。すると18番の歓声をかき消すかのように、17番ではそれを上回る大歓声と拍手が沸き起こる。

『ローリー!』

鳥肌が立った。ギャラリーはこんなにも祈りを捧げているのかと。タイガー・ウッズ(米国)が「もう戻ってこられないかも」と話した聖地での全英で、10代の頃から“ポスト・タイガー・ウッズ”と呼ばれ続けたマキロイが優勝すること、そして8年ぶりのメジャー勝利をつかんでクラレット・ジャグを掲げる姿を見ることに期待している。マキロイは地元の英雄なのだ。

だが、そのバーディパットがカップに沈むことはなかった。スミスが18番でバーディフィニッシュを決めたことで、18番のティイングエリアに立ったときには2打差がついていた。それでも誰も諦めていない。

『ローリー!ローリー!』

さらに鼓舞するかのように、エールを送り続ける。そしてマキロイ、同組のビクトル・ホブラン(ノルウェー)が18番のティショットを打ち、グリーンに向かって歩き始めると、ギャラリー整理をしているマーシャルをはねのけて四方八方からギャラリーが押し寄せた。

マキロイを追いかけてフェアウェイを走っていくギャラリー。左右の通路に設置されている柵は、気持ちが前のめりになることに比例して、どんどん傾いていた。それまでの3日間とは異なり、スウィルカン・ブリッジをややうつむきながら渡るマキロイ。それでもギャラリーは追い続け、その小さくなってしまった背中に向かって声援を送り続ける。

結局、入れなければ負ける2打目のアプローチは直接カップインせず、返しのバーディパットも決まらず。ひと組前のキャメロン・ヤング(米国)にもかわされてホールアウトし、3位で終えた。

プレーを見守る張り詰めた空気と、声援を送る騒がしい空気が交互に流れた。その緩急がついた緊張感のある雰囲気から解放されたことによるものなのか。気づかない間に、“記者の目”からも、涙が流れていた。

記者としては、感情移入しすぎたり、誰かに特化して応援するというのは好ましくない行為である。頭では分かってはいても、この目の前で見た光景にあふれた涙が止まらなかった。そしてグリーンを囲むギャラリーをぐるりと見渡して拍手を返すマキロイに対して、思わず筆者も拍手を送った。

「きょうのファンは素晴らしかった。声援も届いていた。本当は期待に応えたかったけれど…」。言葉を絞り出したマキロイだが、「私より素晴らしいゴルフをしていた相手に負けた」と勝者を称えた。

負けても最後までかっこいい。ローリー・マキロイは地元だけでなく、世界から愛される英雄なのだ。(文・笠井あかり)

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