「最後の3分間」、そしてLIVゴルフの好影響【舩越園子コラム】

「最後の3分間」、そしてLIVゴルフの好影響【舩越園子コラム】

ウィレットに気を遣ったマックス・ホーマ(撮影:GettyImages)

米国男子ツアーの新シーズン開幕戦、フォーティネット選手権最終日の終盤は、マスターズ・チャンピオンのダニー・ウィレットと今大会ディフェンディング・チャンピオンのマックス・ホーマの競り合いとなり、激しい雨をモノともせずに1打リードで首位を走っていたウィレットが「今度こそ」米国の土の上で勝利を挙げるかに見えた。


ウィレットは2016年マスターズ覇者。しかし、あのときは優勝を確実視されていたジョーダン・スピースがまさかの大崩れを喫したことで、ウィレットが「棚ぼた優勝」という印象が強く残った。

とはいえ、ウィレットはDPワールドツアーでは、その後も3勝を挙げ、欧州では通算8勝を達成。彼の底力は、そうした数字によって実証されているが、どうしてだか米国では、あのマスターズ以外には勝利を挙げられず、そのせいで彼は「あのマスターズ優勝は、まぐれだった」と言われ続けてきた。

だが、この日のウィレットは、そうした誹りについにピリオドを打ちそうな勢いを見せていた。集中力を保ち、いい表情、いいリズムで好プレーを続けていた。

しかし、72ホール目でチップイン・バーディを鮮やかに決めたホーマに並ばれると、ウィレットは思わず頬をほころばせた。

その破顔一笑は、1.5メートルの短いバーディパットを残していた彼の余裕の笑顔のようにも見えたが、「マックスは入れてくる気はしていたけど、実際に目にして少々ショックだった」と明かしたウィレットのあの一瞬の笑顔は、動揺を隠しきれずに思わず見せた複雑な胸中の表れだった。

心の揺れは、そのままパットに反映され、ウィレットは短いバーティパットを外し、パーパットはカップに蹴られ、3パットのボギーで敗北。

すると、あれよあれよという間に勝者に押し上げられ、大会連覇を達成し、通算5勝目を挙げたホーマが、今度は複雑な表情を見せた。それは、まさかの敗北を喫したウィレットへの気遣いだった。

だが、ウィレットはそんなホーマにすぐさま走り寄り、満面の笑顔で祝福。それは、ウィレットのホーマへの最大限の気遣いだった。

「最後はちょっと恥ずかしく、残念な終わり方で、しばらく僕の心に残りそうだ。でも、ああいうことは誰にも起こり得る。僕はカップに沈めようと精一杯がんばった。今週はほぼ4日間、優勝争いの中にいられて、ナイス・ウィークだった」

そう語ったウィレットのポジティブぶりとグッドルーザーぶりが、後味の悪い空気を素敵な締め括りに一変させてくれた。

勝利したホーマは「最後の3分間は、何が何だかわからず、ワイルドな終わり方だった」と、ようやく笑顔になった。

名門カリフォルニア大学バークレー校を経て、2013年にプロ転向したホーマは2019年ウェルスファーゴ選手権で初優勝。昨年はジェネシス招待とフォーティネット選手権を制し、今年はウェルスファーゴ選手権で大会2勝目を飾り、そして今週、フォーティネット選手権を連覇した。

そして来週は、夢にまで見たプレジデンツカップに米国代表として初出場する。その舞台は、ホーマにとって相性抜群のウェルスファーゴ選手権の舞台、クエイルホロウCC(米ノース・カロライナ州)だ。

「ツイッターで大勢の人々が言っていた。米国男子ツアーの選手たちがLIVゴルフへ移っていなかったら、僕がプレジデンツカップの米国チームに入ることはできなかっただろうってね。だから僕は今、“よし、見てろよ"って感じで燃えている」

LIVゴルフの影響が、こういうところで、こういう形で出ていることは少々予想外だが、ホーマのモチベーションが高められているのだから好影響と言っていい。

今季開幕戦優勝ゆえ、ホーマはフェデックスカップ・ランキング1位で新シーズンをキックオフ。世界ランキングは22位から16位へ浮上。新たなスターが育ちつつある。

そして、栄えあるマスターズ制覇が「まぐれ優勝」と言われ続け、米国男子ツアーでは目立たなかったウィレットのナイスガイぶりを堪能させてもらうことになった驚きの結末。

ホーマが言った「最後の3分間」が過ぎ去った今、ゴルフファンの胸の中には「いい試合だった」「勝者も敗者もナイスガイだった」という印象が木霊しているのではないだろうか。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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