敗北だが大健闘! LIV組離脱も一致団結の世界選抜チーム【舩越園子コラム】

敗北だが大健闘! LIV組離脱も一致団結の世界選抜チーム【舩越園子コラム】

結束して臨んだ世界選抜チームだった(撮影:GettyImages)

今年のプレジデンツカップの米国チームには、これまでなら常にチームのムードメイカーだったフィル・ミケルソンの姿が無く、ダスティン・ジョンソンやブルックス・ケプカもいなかった。


一方の世界選抜チームには、全英オープンを制したばかりのキャメロン・スミス(オーストラリア)の姿が無く、ルイ・ウーストハウゼン(南アフリカ)やエイブラハム・アンサー(メキシコ)、ホアキン・ニーマン(チリ)もいなかった。

米国キャプテンのデービス・ラブIIIも世界選抜キャプテンのトレバー・イメルマン(南アフリカ)も「LIVゴルフへ移籍した彼らがここに居ないことは淋しいとはもちろん思うが、彼らの話はしないし、彼らのことは誰も口にもしない」と毅然(きぜん)と語り、戦いの場に居る自分たちが精一杯のプレーをすることを心に誓っていた。

下馬評では「米国チームの圧勝」が予想されていた。米国チームにはプレジデンツカップ経験者が6名いるが、世界選抜チームはアダム・スコット(オーストラリア)や松山英樹など4名しかおらず、8名が初出場というチーム構成は「圧倒的に不利」と見られていた。

経験値以外でも、両チームの差はいろいろ見て取れた。世界ランキングの平均は、米国チームが12.08に対し、世界選抜チームは47.91。かつて世界選抜チームのキャプテンを務めたニック・プライス(ジンバブエ)は「LIVゴルフが世界選抜チームをさらに不利にした」と嘆いていた。

プライスが「さらに」と言ったワケは、これまでの世界選抜チームの戦績が「1勝11敗1分」という惨憺(さんたん)たるものであったから。「ただでさえ不利なところに、LIVゴルフへの移籍で主力選手が抜け去り、さらに不利になった」という意味だった。

確かに、初日と2日目は米国チームの圧勝で、「ああ、やっぱり」と思われた。しかし、世界選抜の3日目からの盛り返しぶりには目を見張るものがあった。最終日のシングルスも米国6勝、世界選抜5勝、そして1分と手に汗握るマッチだった。

最終結果は「17.5対12.5」で米国チームの勝利に終わったが、それは楽勝でも圧勝でもなく、エキサイティングな場面がいっぱいだった。

とりわけ20歳のルーキー、キム・ジュヒョン(韓国)のエネルギッシュなプレーやさまざまなガッツポーズは「先輩」であるチームメンバーに元気や勇気を送っていたほどで、世界選抜チームを盛り立てるこの若者の健気な様子を見て、米国のファンが温かい拍手や声援を送っていたことが、何より素敵でうれしく感じられた。

キムはスペシャル・テンポラリー・メンバー資格で戦っていた昨季のレギュラーシーズン最終戦「ウインダム選手権」にスポンサー推薦で出場し、いきなり初優勝。初日の1番でいきなり「8」の大叩きを喫しながらも「たった1ホールの出来事だ」と自分に言い聞かせ、その通りに好プレーを続け、最終日は「61」の快進撃で堂々の圧勝を飾った。

本名は「ジュン・キム」だが、きかんしゃトーマスが大好きなことから「トム」と呼ばれている。「僕はゴルフの試合でこんなに大声を出したり叫んだりしたことは、これまで一度もない。でも、グッド・エナジーをチームに送ることが、初出場で若い僕がやるべき役割だと思う。パットする前から、入れたらどうやって喜ぼうか、どんなガッツポーズを取ろうかと考えている」

世界選抜チームは「8名も初出場者がいるから不利だ」という巷の予想を覆し、8名のうちの1人である新人がチームを盛り上げた。必死に食らいついてきた世界選抜チームを迎え撃った米国チームも「負けてなるものか」という思いを一層強めていた様子だった。

米国チーム勝利を決めたウイニングパットを捻じ込んだザンダー・シャウフェレは「厳しい戦いだった」と息を切らせながら言った。

「世界選抜チームは信じられないほど素晴らしい仕事をした」LIVゴルフの存在やその影響のことは、少なくとも今だけは、誰もが忘れ、素晴らしきプレジデンツカップの余韻に浸っているのではないだろうか。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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