「まるでオーガスタ」のグリーン、「スーパー・スペシャル」な勝利【舩越園子コラム】

「まるでオーガスタ」のグリーン、「スーパー・スペシャル」な勝利【舩越園子コラム】

粘りに粘っての優勝の裏に、ち密な準備があった(撮影:GettyImages)

米国男子ツアーの今季開幕シリーズ第2戦、サンダーソン・ファームズ選手権最終日は、大混戦を抜け出したカナダ出身の31歳のマッケンジー・ヒューズとオーストリア出身の29歳、セップ・ストラカがサドンデス・プレーオフへ突入。


2ホール目の18番で1.5メートルのバーディパットを捻じ込んだヒューズが勝利し、2016年RSMクラシック以来となる通算2勝目を挙げた。

6年前の初優勝は5人によるプレーオフを制して手に入れたものだった。しかも、プレーオフは日没サスペンデッドとなり、翌日の月曜日に持ち越された。その長丁場を堂々制したのが、当時25歳のルーキーだったヒューズだった。

米国男子ツアー出場わずか9試合目で早々に勝利を挙げたヒューズは、将来有望な新人として大きな注目を集めた。しかし、あの日から今日までの彼の6年間は、陽が当たらない日々の連続だった。

「もう一度、勝ちたい。もっと勝ちたい。その想いを糧にして、ハードワークを続けてきた」

スコアリングの決め手となるチップ&パットを必死に磨いてきたというヒューズ。努力の成果は今大会4日間、とりわけ最終日の優勝争いに如実に表れていた。

レギュレーションの上がり3ホールは、すべて見事なパーセーブ。プレーオフ1ホール目の18番もグリーン左サイドのバンカーからピン1メートルに付け、パーパットを沈める圧巻のサンドセーブで切り抜けた。

そして2ホール目の18番では2打目をピン1.5メートルに付け、バーディパットを沈めてガッツポーズを取った。

勝利を決めた直後、ヒューズは興奮混じりに「今、頭に浮かぶのは、終盤にたくさんパーセーブしたことだけだ」と語り、誰よりも秀でたチップ&パットを重ねて栄冠を掴み取った今の心境は「スーパー・スペシャルだ」と笑顔を輝かせた。

なかなか2勝目が挙げられなかった現実を糧にしてきたと振り返ったヒューズだが、今週の彼には、もう1つ、強いモチベーションがあった。

前週のプレジデンツカップの開催コース、ノース・カロライナ州のクエイルホロウ・クラブは、ヒューズの自宅のすぐそばだった。しかし、世界選抜チーム入りを逃したヒューズは、目と鼻の先で開催されたプレジデンツカップを戦うことができず、「それが本当に情けなく、悔しかった」そうだ。

しかし彼は、その情けなさや悔しさも糧にして今大会に挑んだ。そして、2勝目が挙げられそうで挙げられなかったこの6年間、黙々と磨いてきたチップ&パットを「ここで試そう」と心に決めていた。

「ここ」とは、今大会の舞台、ザ・カントリークラブ・オブ・ジャクソンのこと。ミシシッピ州で唯一の米国男子ツアーの会場となっているこのコースのグリーンは、お世辞抜きで「オーガスタ・ナショナルに負けないほどの固く速く素晴らしい」という呼び声が高い。
だからこそ、「マスターズのグリーン上の戦いの疑似体験をしたい」と言って、この大会にやってくる選手たちもいる。新シーズン開幕早々の大会ゆえ、新人選手の姿も多く見られるが、その誰もがこのコースのグリーンに驚かされ、「米国男子ツアーの怖さをいきなり思い知らされた」と声を震わせる。

出場選手の顔ぶれや世界ランキング、勝利数などから眺めれば、開幕シリーズの今大会は華やかな「ゴルフの祭典」マスターズとは正反対の位置付けにある。

しかし、この6年間、毎週毎週、黙々と次なる勝利を追い求め、「超」が付くほど難しい今大会のグリーン上で次々にアップ&ダウンでパーを拾い続け、最後は決め手のバーディパットをカップに沈めたヒューズの戦いぶりは、まさにマスターズの勝ち方を思わせるものだった。

そんなヒューズが今度はオーガスタ・ナショナルのグリーン上で奮起する姿を見るのが今から楽しみだ。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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